著者
岡田 温司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

まずイタリアのルネサンスからマニエリスムの時代にイタリア語で著された女性論において、女性の顔や身体を表象するコードがいかにして練り上げられていくかを追跡した。具体的にはアーニョロ・フィレンツオーラの『女性の美しさについての対話』(1548年)とフェデリコ・ルイジーニの『美しき女性の書』(1554年)である。また、そこにいかなるジェンダーの力学が作用しているかを分析するとともに、当時の女性肖像画や神話画との関連を問うた。次にルネサンス以降数多く描かれるようになった画家たちの自画像をとりあげた。鏡を見ながら自分の顔を表象するという行為がはらんでいた種々な問題点を、精神分析の考え方をも参考にしながら、具体的な作品を分析することによって浮かびあがらせようと試みた。
著者
岡田 温司 篠原 資明 鈴木 雅之 小倉 孝誠 並木 誠士 喜多村 明里 水野 千依 柳澤 田実 松原 知生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

肖像には二重のベクトルがある。ひとつはモデルへと引き戻されるもの(モデルに似ていると思わせるベクトル)、もうひとつはモデルから観者へと表出してくるもの(モデルの性格や内面性が表われていると思わせるベクトル)である。この反対方向の運動は、「肖像」を意味するイタリア語「リトラット」とフランス語「ポルトレ」に象徴的に表われている。前者は、「後方へと引き戻す」という意味のラテン語「レ-トラホー」に、後者は「前方へと引き出す」という意味の同じくラテン語「プロ-トラホー」に由来するのである。かくのごとく「肖像」は、模倣と表出、後退と前進、現前と不在、顕在と潜在、保管と開示、隠匿と暴露、ピュシス(自然)とアレーテイア(真理)、これら両極の引き合いや循環性のうちに成立するものなのである。
著者
岡田温司著
出版者
中央公論新社
巻号頁・発行日
2014