- 著者
-
永井 拓生
- 出版者
- 一般社団法人 日本木材学会
- 雑誌
- 木材学会誌 (ISSN:00214795)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.2, pp.66-78, 2023-04-25 (Released:2023-04-29)
- 参考文献数
- 28
ヨシ群落の適切な管理保全を達成するために,ヨシ(Phragmites australis)の活用法の確立は重要な課題である。本研究では,将来的なヨシ活用の実現を目標とし,ヨシ稈の形状と力学的特性について基礎的な調査を行った。ヨシ稈の比重・曲げ強度・曲げヤング係数には互いに強い正の相関が確認された。これらの特性値はいずれも根際と穂先あたりでは相対的に小さく,中腹の胸高さあたりで最大となる。また,この付近では節同士の間隔が他部位よりも相対的に大きく,節の数が少ない。つまり,材質の強化による補強が行われている。一方,根際付近では稈断面寸法が他部位より大きいことに加え,節同士の間隔が詰まっており,形状操作による補強が行われている。このように,ヨシ稈においては草丈に亘る質量の増加を防ぎつつ各部の補強がなされており,構造力学的に非常に効率的な材料配置となっていることが確認できた。