著者
永冨 聡 石田 祐 小藪 明生 稲葉 陽二
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.11-20, 2011 (Released:2011-12-20)
参考文献数
34
被引用文献数
2

これまでに個人の社会経済的属性と社会活動参加の関係,もしくは地域集団そのものの研究がなされてきたが,他者との対面でのつながりと社会活動参加の関係については必ずしも十分に明らかにされてこなかった.そこで本稿では,個人の生活空間における他者との対面でのつきあいが,地縁的な活動への参加に与える影響について定量的な分析から検討を行うこととした.全国を対象としたアンケート調査データを用い,ロジット・モデルによる推定を行った.その結果,次の2点が示唆された.一つは,地縁的な活動への参加には近所づきあいだけでなく,親戚・親類づきあい,スポーツ・趣味・娯楽活動を通じたつきあいの活発さが影響を与えている可能性があること,もう一つは,地縁的な活動への参加の影響要因と同様の対面づきあい要素が,ボランティア・NPO活動への参加の促進に対しても正の有意性を持つ可能性があることが示唆された.これらを踏まえると,今後は地縁的な活動,ボランティア・NPO活動への参加を一体的に高める取り組みの方向性を模索し,その制度化や具体化を進めていくことが一つの方向として望まれよう.
著者
永冨 聡 藤澤 由和
出版者
静岡県立大学
雑誌
経営と情報 : 静岡県立大学・経営情報学部/学報 (ISSN:09188215)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.1-13, 2009-03

2008年7月に閣議決定された国土交通省の国土形成計画において「新たな公」を基軸とする地域づくりが掲げられ、我が国では個々の地域における多くの住民参加と、豊かなソーシャル・キャピタルの形成が一層求められる方向性が、ひとつの地域政策の方策として考えられる。本論では、我が国におけるソーシャル・キャピタルの変化を踏まえ、近畿圏の地域的特性について、定量的かつ定性的な把握を試みることにより、当該エリアにおける住民参加のポテンシャルと、それを踏まえた政策的方向性を検証した。その結果、近畿圏では、定量的な把握から、テーマ型活動を介した橋渡し型(bridging)及び職場を介した結合型(bonding)の人間関係の強さに特徴があることが明らかとなった。さらに、定性的な把握を加味した検討から、近畿圏全体としてソーシャル・イノベーションを可能とする人材育成を重視した仕組みづくりの必要性が導かれた。