著者
村上 信 濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.43-50, 2007

2005(平成17)年6月に改正され, 2006(平成18)年4月より施行された介護保険法では「地域」を重視し,「地域包括ケア」の考え方が基本的な方向性として示されている。こうした「地域包括ケア」システムを実効あるものにするためには,その一端を担うケアマネジャーのケアマネジメント力の能力の向上が大いに寄与するものと考えられる。そこで本稿においては,筆者がスーパーバイザーを担当した支援困難事例に対する事例検討会で取り上げられた事例の分析を通して,主任ケアマネジャーが直面している高齢者ケアマネジメントの現状について考察を行い,今後の具体的な課題に関して検討を行なうことを目的としたものである。その結果,「潜在化しているニーズ」をもつ利用者を中心に,利用者とケアマネジャーが共通のニーズを合意できないままに,「利用者との相互作用」に困難を来しているところにあると考えられた。今後はこうした要因の解決に対して有効となる支援プログラムの構築が求められるとともに,スーパービジョン体制をより展開していくためのスーパーバイザーの育成についても検討していく必要があることが考えられる。
著者
橋本 陽介 石田 祐 三好 俊文 藤澤 由和
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Suppl., pp.161-164, 2018-12-20 (Released:2018-12-21)
参考文献数
9

本研究では,新たな入試制度と,新たなカリキュラムに基づく基盤教育を開始した大学で,すべての学生が履修し,ICT ツールを援用したアクティブラーニング形式の講義において,AO 入試で入学した学生と他の入試で入学した学生で,学びへの取り組みに違いが存在するかを検討した.その結果,一般選抜(前期)で入学した学生よりも,特別選抜(AO 入試)で入学した学生の方が,学びへの取り組みが意欲的であることが認められた.こうした点から,AO 入試において意図した学生の確保が一定程度なされていると考えられた.その一方で今後は,AO 入試で入学した学生の理論的な学びの程度や卒後まで視野に入れた評価が必要であると考えられた.
著者
小藪 明生 濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.60-63, 2007

近年,われわれの生活の質や幸福感に影響を与える要因として社会的な要因に着目した観点の必要性が提唱されているなかで,地域の社会的要因であるソーシャル・キャピタルに関してその関心が高まっている。そこで本論においては,一般的信頼をソーシャル・キャピタルの代理変数として捉え,先行研究において用いられている一般的信頼に関する位置づけに関して網羅的な検討を行なうことを目的とした。その結果,一般的信頼を用いることの利点として,多様な手法によりある種のソーシャル・キャピタルの把握が可能になるとともに,地域間比較や経年的変化をも加味した研究デザインに基づく検証をも可能になることが考えられた。
著者
濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.33-37, 2007

健康分野の研究を概観した場合には,従来,着目されてきた個人レベルの特性に加えて,近年,地域レベルの社会的要因がわれわれの健康に及ぼす影響に対してその認識,再認識がなされつつある。そうしたなかで,地域レベルの社会的要因の一つとしてSocial Capital (ソーシャル・キャピタル)に対してその関心が高まっており,地域レベルと個人レベルの要因を加味した分析手法の必要性が指摘されてきた。そこで,本研究においては,主として教育学,人口統計学,社会学などの分野において検討がなされてきた統計手法であるマルチレベル分析に関して,ソーシャル・キャピタル研究における意義とその適用に関して明らかにした。
著者
小藪 明生 濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.48-55, 2006-12-30
被引用文献数
1

近年、コミュニティの再生やさまざまな社会問題克服のため、社会に対する市民的・積極的関与者を育成することが大きな目標とされ、その基盤としてソーシャル・キャピタルという概念が注目を集めている。本論においてはソーシャル・キャピタルの構成要素である一般的信頼に焦点をあて、二次データを用いて一般的信頼への規定要因の検討をおこなった。結果として高信頼者の特徴として(1)収入・学歴が高いこと(2)読書冊数が多く、テレビ視聴時間が短いこと(3)友人関係に満足していること(4)異質な他者に対して寛容であること(5)生活を支える組織に対して信頼を持っていることという五つの特徴が見出された。
著者
岩崎 邦彦 藤澤 由和
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

インバウンド戦略を検討するために定量的調査を実施し、外国人が意識する日本のイメージや強み、及びおもてなしを含めた日本における観光の魅力等について把握するとともに、同じ日本を対象とした日本人による国内観光旅行がどのような需要によって生じているかに把握を試みた。特に、今年度の分析では訪日人数が欧米において最も多く、長期に渡って安定的に多いアメリカ人を対象に調査を実施した。その結果、アメリカ人が思う日本人の強みは、文化・人・食にあることが示さ、その一方で日本人が思う日本の強みがおもてなし・安全・治安というように両者で一致しないことが明らかとなった。
著者
武藤 伸明 斉藤 和巳 池田 哲夫 大久保 誠也 藤澤 由和 小藪 明生
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、 ソーシャルネットワークから収集可能なエゴセントリック情報より、全体ネットワーク構造を推定する手法の開発を目的とする。このネットワークの構造推定は NP-困難クラスに属する組合せ最適化問題を扱うことになり、その効率的な解法として遅延評価付き貪欲法の応用法を考案した。また、ネットワーク構造推定法の妥当性を評価するために、ネットワークの本質的構造を表す評価尺度の考案や、ネットワークデータを含む各種データの可視化法の考案を行った。
著者
藤澤 由和
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.4, pp.44-60, 2007-06-23 (Released:2012-09-24)
参考文献数
34

ソーシャル・キャピタルという考え方に対しては, 現在, 学術分野における関心のみならず, 多様な政策領域においても関心が高まっている. その理由としてはソーシャル・キャピタル概念の多様性とその適応可能性といったものがあるのであるが, 健康との関連性においてソーシャル・キャピタルを検討する研究領域においても, ソーシャル・キャピタルの捉え方に関しては多様な考え方が存在してきたといえる. また当該研究領域, なかでも公衆衛生学の分野などを中心に, 過去20年以降多くの多様な領域の研究者らの関心を集めてきた健康に対する社会的決定因を検討する研究の流れは, この分野においてソーシャル・キャピタル概念を導入するための一つの背景となっているといえる. なかでも所得格差が健康に与える影響の問題また健康の地域格差といった論点は, とくにソーシャル・キャピタル概念を, 健康との関連性において検討しようとする研究領域において重要な方向性, 具体的には地域レベルの特徴とその変化を実証的にとらえるという方向性を与えてきたといえる. そこで本論は, こうした健康とソーシャル・キャピタルの関係性を検討する研究領域における理論的な背景とこれまで行われてきた代表的な実証的研究を概観し, 福祉領域などをはじめとする他の地域を検討せざるを得ない領域におけるソーシャル・キャピタル概念の可能性を検討することとする.
著者
米林 喜男 濱野 強 藤澤 由和 佐々木 正道
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

現在、わが国においては多種・多様な調査が実施されており、それらに関しては非常に精度の高い、有用なデータが多く含まれている。欧米諸国においては、公的機関により実施された調査データはもちろんのこと、公的な助成により得られた調査データに関しては、一定の期間が経過した後には個人が特定されない形での公開が一般的に行われている現状にある。そこで、本研究においては、保健医療分野における調査データの公開制度に関してその具体的な課題抽出と、それらを可能とするための諸要件より検討を行うことを目的としたものであった。具体的には、前年度までの研究成果であるソーシャル・キャピタル研究におけるデータアーカイブの活用実態をもとに、わが国における適応可能性に関して検討した。すなわち、データアーカイブにおける基本的要件を整理し、わが国における背景との適合性を検討することにより、保健医療分野におけるデータアーカイブの可能性を具体的に示したものである。さらにデータアーカイブは、データの公開に際して個人の情報などプライバシー、および情報のセキュリティなどを十分に検討する必要があるが、この点に関しては法律的な観点、および情報技術的観点からそれぞれの専門家らとの意見交換を行ない、オープン・リソースを展開していくための通信技術と個人情報保護との関連性などに関して専門的視点より明らかにした。
著者
藤澤 由和 斉藤 和巳 大久保 誠也 小籔 明生 武藤 伸明 石田 祐
出版者
静岡県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究においては、ソーシャル・キャピタルの構造的側面を把握する新たな手法を検討すると同時に、その手法により構築されたデータの解析を実施し、さらにその結果を踏まえ、当該研究課題の今後の展開に関する検討を行った。具体的にはRespondent-Driven Samplingと呼ばれる手法を、当該集団におけるネットワーク把握に応用し、ソーシャル・キャピタルの構造的側面の把握を試みた。またデータ構築に際しては、いわゆるディバイスを用いてより効率的かつ効果的な対象把握とデータ構築に関する検討を試みた。
著者
永冨 聡 藤澤 由和
出版者
静岡県立大学
雑誌
経営と情報 : 静岡県立大学・経営情報学部/学報 (ISSN:09188215)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.1-13, 2009-03

2008年7月に閣議決定された国土交通省の国土形成計画において「新たな公」を基軸とする地域づくりが掲げられ、我が国では個々の地域における多くの住民参加と、豊かなソーシャル・キャピタルの形成が一層求められる方向性が、ひとつの地域政策の方策として考えられる。本論では、我が国におけるソーシャル・キャピタルの変化を踏まえ、近畿圏の地域的特性について、定量的かつ定性的な把握を試みることにより、当該エリアにおける住民参加のポテンシャルと、それを踏まえた政策的方向性を検証した。その結果、近畿圏では、定量的な把握から、テーマ型活動を介した橋渡し型(bridging)及び職場を介した結合型(bonding)の人間関係の強さに特徴があることが明らかとなった。さらに、定性的な把握を加味した検討から、近畿圏全体としてソーシャル・イノベーションを可能とする人材育成を重視した仕組みづくりの必要性が導かれた。
著者
佐藤 央庸 濱野 強 片見 眞由美 高野 千代 大川 優子 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.51-56, 2007
被引用文献数
1

茨城県大洋村(現,茨城県鉾田市)では,精神障害者(以下,当事者)のエンパワーメントの向上を目的として,当事者と住民の参画による普及啓発イベントの開催を試みた。 13名の当事者が実行委員となり,普及啓発イベントの企画とその運営の中心を担い,3ケ月間の準備を経て開催された。そこで,本研究においてはこうした一連の活動が当事者のエンパワーメントに及ぼす影響に関して検討を行なった。その結果,参画後は参画前に比べて「自尊/自己効力感」,「楽天/将来へのコントロール」の2項目について,スコアの改善が示された。以上の結果から,今回の試みが当事者のエンパワーメント向上に有益な影響を及ぼしたことが推察され,その要因として当事者への適切な役割分担と主体性の尊重,当事者に対する周囲の一貫した支持と肯定的態度などが考えられた。