著者
尾原 知行 山本 康正 田中 瑛次郎 藤並 潤 森井 芙貴子 石井 亮太郎 小泉 崇 永金 義成
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.167-173, 2013-05-20 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

要旨:【背景/目的】脳静脈血栓症は近年日常診療で遭遇する機会が増えている.脳静脈血栓症自験例の臨床像,急性期画像所見につき検討する.【方法】対象は2008年4月~2011年3月に当院に入院した脳静脈血栓症10例(平均49歳,男性5例/女性5例)である.【結果】初診時臨床症状は,7例で局所神経症状(うち5例は軽度の運動麻痺)を認め,3例は頭痛のみであった.4例はけいれん発作を伴った.閉塞静脈洞は上矢状洞6例,横静脈洞3例,直静脈洞1例で,初診時脳出血を4例,静脈梗塞を3例に認めた.9例で頭部MRI T2*強調画像にて閉塞静脈洞が低信号で強調された.全例抗凝固療法で治療し,8例は退院時modified Rankin Scale 0~1であった.【結論】自験10症例は比較的軽症で予後良好な例が多かった.T2*強調画像を含むMRI検査による早期診断が臨床経過に影響を与えている可能性が考えられた.
著者
山本 康正 永金 義成 冨井 康宏
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.397-406, 2020 (Released:2020-06-06)
参考文献数
51
被引用文献数
1 4

皮質下穿通枝4血管について支配領域を検討した.①レンズ核線条体動脈(lenticulostriate artery; LSA)の分枝は,medial,intermediate,lateralの3群に分類される.Medialは尾状核頭部内側,内包前脚,被殻の内側,intermediateは被殻・淡蒼球の前半,尾状核頭部,内包前脚,放線冠前方,lateralは被殻・淡蒼球の後半,内包後脚の上部,放線冠後方を灌流する.②Heubner動脈は,尾状核頭部の下方,被殻・淡蒼球の前下方等,基底核の前腹側を,③前脈絡叢動脈は,内包下部,淡蒼球内節,視床外側,側頭葉内側,中脳を灌流する.④髄質枝梗塞は半卵円中心に小梗塞をきたすが塞栓機序が多い.半卵円中心は皮質枝間の境界領域,放線冠は髄質枝とLSA間の深部型境界領域に相当する.
著者
山本 康正 永金 義成
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.75-82, 2015 (Released:2015-03-26)
参考文献数
41

要旨:横断的調査では,血圧高値が認知機能障害(CI)に関連するという報告から,逆の関係,さらに,U カーブの関連にあるとするものなどがある.縦断的には,中年期の高血圧は高齢期におけるCI と一貫して関連しているが,高齢者では,血圧低値がCI を増悪させ,血圧高値は保護的に働いているとの指摘もある.これらを仲裁するような,高齢者ではSBP 高値とDBP 低値がCI を増悪させるとする報告もある.また,認知症が発症進展すると,経年的に血圧が下降することを考慮に入れる必要がある.高血圧は脳血管性認知症(VD)との関連が強いが,アルツハイマー型認知症(AD)についてもより緩やかであるが関連ありとする報告が多い.特に脳血管性CI は,夜間血圧上昇型(non-dipper,riser)に強く関連しており,夜間血圧上昇型は食塩感受性高血圧が多いことから,レニン・アンギオテンシン系抑制薬と利尿薬の使用がCI 予防に役立つ可能性がある.
著者
前園 恵子 牧野 雅弘 蒔田 直輝 永金 義成 芦田 真士 友永 慶 山本 康正
出版者
京都第二赤十字病院
雑誌
京都第二赤十字病院医学雑誌 = Medical journal of Kyoto Second Red Cross Hospital (ISSN:03894908)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.81-86, 2013-12-01

症例は39歳の女性.頭部外傷の既往はない.某年2月5日、立ち仕事中に前頭部に非拍動性の痛みを自覚した.徐々に増悪し、嘔気も出現した.ロキソプロフェンやスマトリプタンは効果がなかった.経過中A型インフルエンザに罹患し、自宅で安静にしていた期間には、頭痛は消失していたが、回復後再び、起立時に増悪する激しい頭痛が出現した.頭部MRIで硬膜の肥厚および造影効果を認めた.脳槽シンチグラフィーでは早期のRI膀胱内集積とRIクリアランスの亢進が見られたが、脳脊髄液漏出像は確認できなかった.特発性低髄液圧症候群と診断し、安静臥床と大量輸液にて加療し、徐々に症状の改善を認め、退院した。硬膜の所見も遅れて回復した.特発性低髄液圧症候群では、多彩な臨床症候を伴うため、不定愁訴として扱われたり、診断に苦慮することがあるが、MRI所見は診断に有用である.
著者
蒔田 直輝 尾原 知行 永金 義成 村西 学 田邑 愛子 武澤 秀理 小泉 崇 山本 康正
出版者
京都第二赤十字病院
雑誌
京都第二赤十字病院医学雑誌 = Medical journal of Kyoto Second Red Cross Hospital (ISSN:03894908)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.113-117, 2011-12

症例は37歳の女性。突然左頸部から肩にかけて痛みが出現し、その数日後から喉頭の違和感、ものの飲み込みにくさが出現し声が嗄れるようになった。発声は鼻声、嗄声を認めた。発声の持続は5秒程度と障害されていた。左軟口蓋挙上不良、左咽頭感覚低下、咽頭反射低下、左声帯傍正中固定を認め、左舌咽神経および迷走神経の障害が考えられた。血液検査、髄液検査は正常、ヘルペスのウイルス抗体価は既感染パターンであった。頭部MRIガドリニウム造影で左舌咽・迷走神経の走行と一致する部位に造影効果を認めた。Bell麻痺で顔面神経の造影効果がみられる報告があり、類似のメカニズムで、何らかの炎症性ニューロパチーが考えられた。ステロイドパルスと後療法により、いずれの症状も完全に改善した。また頭部MRIで造影されていた左舌咽・迷走神経の造影効果も消失した。下部脳神経麻痺の鑑別に、造影MRIが有用である。