著者
(故) 江口 彌 谷垣 昌敬 武藤 邦夫 土屋 博嗣 後藤 英司 佐藤 俊樹
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.1102-1108, 1989-11-10 (Released:2009-10-21)
参考文献数
7
被引用文献数
6 7

気相が共存しない状態で, 均一水溶液中の亜硝酸の消失速度を, 288~313Kで測定して, 速度解析を行った.水溶液中での亜硝酸の自己分解は, 既往の気液系で行われた研究で導かれている素過程にしたがって起こるが, 気相が存在しない場合には, 溶解度の小さい生成物である一酸化窒素の放出が抑制され, 気液系では無視できる逆反応の影響が大きくなる.また, 亜硝酸は自己分解で消失するだけではなく, 溶存酸素による液相酸化によっても消失する.この反応系においては, 亜硝酸の自己分解における迅速な第1素過程で生成する一酸化窒素の溶存酸素による液相酸化が律速過程である.以上の考察に基づいて, 溶存酸素が存在する水溶液中における亜硝酸の総括消失速度を, 一酸化窒素の液相酸化速度を考慮して導いた.また, 総括反応速度定数および総括反応平衡定数の温度依存性を明らかにした.
著者
片岡 健 中塩 文行 寺本 正明 竹内 寛 川崎 順二郎 江口 彌 平田 彰 古崎 新太郎 藤縄 勝彦 原田 誠
出版者
大阪府立大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

乳化粘膜による分離濃縮プロセスの開発においては, 1.二本の長鎖アルキル基を有する新しい界面活性剤が合成され, 分離濃縮プロセスの見地から望ましい界面活性剤であることが実証され, 実用化へ前進した. 2.溶存クロムの連続槽型分離濃縮操作には, 滞留時間とその分布が影響し, 並流操作が実用的であることが判明した. 3.向流接触塔による分離濃縮プロセスのシミュレーションにより, pH変化を拌う分離濃縮系にはpH調節が重要であることを明らかにし, 塔内濃度分布の推算および装置設計が可能となった. 4.乳化液膜の電気解乳化速度式が提案され, 液滴合一の限界電場条件が示唆されるとともに, 試作した連続解乳化装置の操作条件が明らかにされた. 支持液膜による分離濃縮プロセスの開発においては, 1.多孔性支持液膜に使用する有機物として, 直鎖系炭化水素が膜の安定性に優れ, 支持液膜の連続再生方式を提案した. 2.新しい膜形態として流動液膜が提案され, スパイラル型, plate-and-frame型各モジュールが試作され, 好成績を示した. 3.Ga・In湿式製錬プロセスに, 支持液膜法あるいは乳化液膜法が導入できることを明らかにした.液膜分離技術の応用開発においては, 1.希土類, 特にランタンの分離に適用できることを明らかにし, 分離濃縮の基礎的設計指針を見出した. 2.バイオプロセスへの液膜法の検討が行われ, Z-APMの連続合成に適用可能であることを見出した. 3.(O/W/O)液膜による有機物の分離選択性を高める方法を提案し, 転相による新しい機械的解乳化法を見出した. これらの諸成果を基盤とすれば, 実用的な連続分離プロセスは可能であり, パイロット・プラントの試作・操作が望まれる. なお一連の開発研究の過程より新たにマイクロエマルションを応用した液膜分離の技術開発の重要性が萌芽してきた.