著者
磯部 美良 江村 理奈 越中 康治
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.187-204, 2008-05-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、仲間外れ、無視といった関係性攻撃を示す幼児を対象とした社会的スキル訓練プログラムを開発し、その有効性を検討することであった。プログラムは全10セッションであり、(1)仲間入りスキルの習得や仲間協力児とのかかわりを通して排他的な仲間関係を解消すること、(2)関係性攻撃を適切な規律性スキルに置き換えること、の2点から構成された。訓練対象者は、関係性攻撃が顕著であるとして保育者から報告のあった年中女児1名であった。プログラムの効果は、訓練後と3か月後の保育者評定と行動観察によって検討された。その結果、対象児の関係性攻撃は低減し、多様な仲間とのかかわりが増加していた。また、ターゲットスキルも増加していた。この効果は3か月後のフォローアップ査定の時点でも安定して維持されていた。最後に、関係性攻撃を頻繁に示す幼児に対する社会的スキル訓練の有効性や意義について考察した。
著者
江村 理奈 岡安 孝弘
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.339-350, 2003-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23
被引用文献数
14 8

本研究では, 中学校1年生を対象に学級を単位とした集団社会的スキル教育を行い, 社会的スキルの促進と主観的適応状態 (ストレス反応, 学校ストレッサー, ソーシャルサポート, 孤独感, 不登校傾向) が改善されるかどうかを検討した。期間は, 約半年で総合的学習の時間を利用して8セッション実施された。標的スキルは, a) 自己紹介, b) 仲間の誘い方, c) あたたかい言葉かけ, d) 協力の求め方, e) お互いを大切にする, f) 上手な断り方, 9) 気持ちのコントロールの7つであった。介入前・中・後の社会的スキル尺度総得点に基づくクラスター分析を行った結果, 下降群, 低得点上昇群, 高維持群, 高得点上昇群の4つのタイプに分類できた。各群の介入前・中・後・フォローアップにおける主観的適応状態について比較したところ, 低得点上昇群の孤独感が減少し, 友人サポートが上昇していた。一方, 下降群は, 不機嫌・怒りが上昇していた。以上の結果より, 中学校における集団社会的スキル教育は社会的スキルを促進し, 主観的適応状態を改善することに一定の効果をもつことが示唆された。
著者
新見 直子 川口 朋子 江村 理奈 越中 康治 目久田 純一 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.7, pp.125-138, 2007

本研究では、中学生、高校生、大学生を対象に自己愛傾向(評価過敏性、誇大性、身体賞賛、自己確信)と自尊感情(Rosenberg, Cheek & Buss, SE-Iの各自尊感情尺度で測定される自尊感情)を測定し、青年期の自己愛傾向と自尊感情の関連性について発達的に検討した。本研究の主な目的は、4つの自己愛傾向尺度得点と3つの自尊感情尺度得点が、中学、高校、大学の各学校段階においてどのような因子構造をもつのかについて二次因子分析をとおして検討することであった。自己愛傾向と自尊感情の7つの尺度得点について学校段階別に二次因子分析を行った結果、いずれの学校段階においても自己を受容する尺度得点から構成される因子と他者評価を気にする尺度得点から構成される因子の2因子が抽出された。
著者
越中 康治 江村 理奈 目久田 純一 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.5, pp.161-167, 2005

本研究では,幼児の自由な集団編成に及ぼす仲間からの人気度と社会的行動特徴の影響を検討するために,保育園における整列場面(幼児が自由に2人組あるいは3人組を編成する場面)の観察と,人気度及び社会的行動特徴の測定を行った。結果として,男児では,集団編成に人気度の影響は認められず,攻撃性の高い者ほど3人組で中央の位置を占めていることが示された。女児では,2入組を編成する際には,仲間から人気がある者及び社会的コンビタンスが高いとされる者ほど容易に集団編成を行うことが示された。また,3人組を編成する際には,攻撃性の高い者ほど容易に集団編成を行うこと,引っ込み思案で非攻撃的な者ほど3人組で中央の位置を占めていることが示された。幼児の自由な集団編成に及ぼす仲間からの人気度と社会的行動特徴の影響は,性別や編成する集団の人数によって異なることが示された。