著者
山田 達雄 稲葉 継雄 坂野 慎二 一見 真理子 本間 学 白土 悟 池田 充裕 山田 礼子 佐々木 毅 澤野 由紀子 馬将 光場
出版者
中村学園大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

イデオロギー対立の終焉の後の失われた10年と言われる間に、経済開発モデルとしての日本の地位は地に落ちた。代わってグローバリゼーションが風靡し、各国の経済開発を牽引するモデルとしてアメリカの地位が強大になった。国際的な経済競争に勝つか否かは教育システムがボーダーレスになった世界経済に適合しているかどうかが一つの重要な鍵になっているのではないかと考え、平成11年度から平成13年度までの3年間、英、米、独、仏、オランダ、ノールウエー、ヨーロッパ連合、中国、韓国、台湾、タイ、マレーシア、シンガポール、オーストラリアの12カ国2地域を訪問し、これらの国で学校と企業の間のパートナーシップの状況を調査した。調査には団体あるいは個人で25回延べ36人が出かけた。またこの間に、国内学会で3回、国際学会で2回、国際セミナーとワークショップでそれぞれ1回発表し評価を受けた。報告書は第2年度に中間報告書(125頁)と最終年度に最終報告書(232頁)を刊行した。調査の結果、共通に見られる傾向としては、脱イデオロギーと経済競争への対応が教育の最も強力な動因となったことにより、官僚支配が弱まり市場化・民営化がどこの国も起こっており、グローバリゼーションの影響を強く受けていることが分かった。その結果、教育システムと経済システムの調和的あり方がどこの国においても重要な課題とされており、教育改革が模索されている。その対応のあり方に、経済そのものの建て直しがうまくいっていないロシア連邦などと、急成長を遂げつつある中国などとは大きな差が見られた。他方、新経済開発国(NIES)と言われる韓国、台湾及びシンガポールではグローバルな経済に対応した人材育成に成功している。注目すべきことは、これらの国が脱日本の政策をとっているらしいことである。かつて日本を先頭とする国際分業の雁行モデルが語られたことがあったが、今は影を潜めてしまった。逆に、日本は改革のスピードが遅く、日本のまねをしていてはならないという考えが強くなっている。韓国、台湾、シンガポールの国々は、米国を先頭とするグローバリゼーションに柔軟についていく姿勢を見せており、イギリスに倣って学校教育と就職後の職能開発を統合する傾向がある。