著者
阿部 稚里 池田 彩子 山下 かなへ 市川 富夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.187, 2005 (Released:2005-12-08)

【目的】私達は、日常摂取しているビタミンEの約半分を植物油から摂取している。サフラワー油、サンフラワー油、オリーブ油などに含まれるビタミンEは、生理活性が最も高いα-トコフェロールがほとんどであるが、コーン油、大豆油、ゴマ油などには、α-トコフェロールよりもγ-トコフェロールが多く含まれる。そこで、本研究では、ビタミンEとしてα-トコフェロールのみを摂取した場合と、α-およびγ-トコフェロールを同時に摂取した場合の体内のα-トコフェロール濃度を、ラットを用いて比較した。【方法】ビタミンE無添加飼料を4週間摂取させたラットに、α-またはγ-トコフェロールのみを各10mg、あるいはα-およびγ-トコフェロール各10mgの混合物をそれぞれ胃内に経口投与し、8または24時間後に屠殺した。血清および組織のα-およびγ-トコフェロールを、HPLC法で定量した。【結果】α-トコフェロールの摂取によって、8時間後には血清、肝臓、肺、副腎のα-トコフェロール濃度は著しく上昇したが、心臓、筋肉、脂肪組織、皮膚などでは、24時間後でもその上昇の程度は小さかった。α-トコフェロールのみを摂取した場合と、α-およびγ-トコフェロールを同時に摂取した場合で、血清および肝臓のα-トコフェロール濃度に変化は見られなかったが、肺、心臓、大動脈などのα-トコフェロール濃度は、γ-トコフェロールの同時摂取によって有意に低下した。以上の結果から、体内のα-トコフェロール濃度は、γ-トコフェロール摂取によって低下することが明らかになり、ビタミンE同族体の摂取量によっては、ビタミンE要求量が増加する可能性が示された。
著者
池田 彩子
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.162-165, 2020-03-25 (Released:2021-03-31)

In the last 30 years, the research on vitamin E metabolism has made great progress. Initially, dietary vitamin E was thought to be absorbed by passive diffusion in the small intestine, but it has become clear that transporter proteins, such as Niemann-Pick C1-like 1 and ATP- binding cassette transporter A1, are involved in at least a part of the intestinal absorption of vitamin E. The α-tocopherol transfer protein (α-TTP) has also been shown to play an important role in maintaining levels of vitamin E in the body. Among vitamin E isoforms, α- tocopherol, which has the highest affinity for α-TTP, is preferentially transported from the liver to extrahepatic tissues. The importance of α -TTP in vitamin E metabolism has influenced the Dietary Reference Intake for Japanese. In addition, carboxyethyl-hydroxychroman was identified as the major metabolite of vitamin E. This finding revealed that vitamin E is metabolized by a kind of drug metabolism reaction.
著者
池田 彩子
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.14, no.12, pp.539-545, 2014 (Released:2017-02-01)
参考文献数
16

ビタミンK代謝に及ぼすビタミンEの影響を明らかにするために,ラットのビタミンK濃度に対するトコフェロール摂取の影響を調べた。ラットにα-トコフェロール(αT)添加飼料を6週間摂取させたところ,肝臓以外のさまざまな組織のフィロキノン(PK)濃度が低下した。また,PK経口投与後の組織への移行を調べたところ,αTによっていくつかの肝外組織のPK濃度が低下した。さらに,トコフェロール異化の律速酵素であるトコフェロール水酸化酵素が,PKの水酸化も触媒することが明らかになった。PKの水酸化は,PK異化の第一段階である。そこで,トコフェロールの異化を阻害するゴマリグナンが,PK濃度に与える影響を調べたところ,セサミン添加飼料の7日間の摂取によって,肝臓のPK,メナキノン-4 (MK-4),トコフェロール濃度が上昇した。以上の結果から,体内のPK濃度は,トコフェロール代謝の変動によって大きく影響を受けることが明らかになった。