著者
指村 奈穂子 池田 明彦 井出 雄二
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.123, pp.33-51, 2010-07 (Released:2011-07-26)

絶滅危惧植物ユビソヤナギの保全方法の検討資料とするため、ユビソヤナギの潜在生育域を推定し、その結果を踏査により検証した。推定は東北地方から中部地方にかけての地域において、気候、地形、地質などの環境要因に基づきGISを用いておこなった。また、過去の生育域を地史的な気候変動との関係から推定し、現在の分布への影響を考察した。ユビソヤナギの既知生育地は、温量指数60.1〜85.5、積雪深80cm以上、TPI値-3〜0、河床勾配0.1%〜6.3%、集水域に占める花崗岩系と第三紀層の合計地質割合61.7%以上の範囲内に分布していたため、これらの条件が対象地域内の河川において重なる範囲を潜在生育区間と推定した。その結果248区間が選択され、既知生育地のほとんどはこれらの区間に含まれていた。このうち54区間を踏査し、新たに7区間にユビソヤナギの生育を確認した。このことから本推定の確からしさが証明された。また、ユビソヤナギの過去の生育可能域は、最終氷期最盛期(約20,000年前)には日本海側の丘陵地2ヶ所ほどに、縄文海進期(約6,000年前)には脊梁山脈沿いの狭い地域に限定されていたと推定された。なおこれらの地域から離れた場所には、先に推定された潜在生育区間であっても現在ユビソヤナギの生育は認められなかった。ユビソヤナギの潜在生育区間は、温度や積雪、地形、地質などの制限により非常に限定的であり、個体群の維持や分布地の拡大は容易ではない。同時に、その地質地形的特徴から、治山・砂防ダム、貯水ダムが作られやすいと考えられた。そのため、未知のユビソヤナギの生育地を早急に発見し、現在分布している河川において適切な保全対策をとることが緊急の課題であると考えられた。
著者
池田 明 海尻 賢二
出版者
社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.4105-4110, 2008-12-15

仕様書が不完備な場合の政府調達は,交渉契約によらざるをえない.「開発・生産リスクおよび官民生産情報格差」と「契約制度」の未整合は,モラルハザードの誘因となる.本論文では,マルチエージェントベースアプローチにより政府調達を模擬し,エージェントの裁量行動が,モラルハザード「過大請求」および「価格交渉レース」の誘因となることを検証し,制度改革の基本条件を提言する.Government procurements with incomplete specification have to be based on negotiated contracts. The contract with the risk and the information gap between government procurers and companies on production is apt to lead to moral hazards. In this article, we simulate government transaction with multiagent based approach, we verified that agent discretion behavior lead to moral hazards such as "excessive claim" and "price negotiation race", and propose basic condition for the reform of the government procurement institution.
著者
山内 啓太郎 吉田 真太郎 長谷川 晃久 池田 明弘 張 奎泰 松山 茂実 西原 真杉 宮澤 清志 高橋 迪雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.905-909, 1995-10-15
被引用文献数
5

ウマ卵巣より作出したcDNAライブラリーより, ウマインヒビンαサブユニット前駆タンパク質をコードするcDNAを単離した. ラットインヒビンαサブユニットcDNAの配列を基にプライマーを設計し, ラット卵巣RNAを用いたRT-PCR法によりスクリーニング用のプローブを作製した. 1.2×10^5個のプラークより19個の陽性クローンが得られた. そのうちの一つ(Eq-α-11)は, 367個のアミノ酸をコードする完全長のタンパク質翻訳領域を含んでいることが確認された. cDNAの塩基配列より推定されるウマインヒビンαサブユニット前駆タンパク質及び成熟タンパク質のアミノ酸配列は他の6種類の哺乳動物 (ウシ, ブタ, ヒツジ, ヒト, ラット, マウス) のものと比較して80%以上の相同性を有していた. ノーザンブロット法によりウマ卵胞及び精巣に存在するインヒビンαサブユニットmRNAのサイズは1.5 kbであることが判明した.