著者
沢井 史穂 実松 寛之 金久 博昭 角田 直也 福永 哲夫
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.93-105, 2004-02-01
被引用文献数
8 20

若年男女12名を対象として,携帯型表面筋電計を用い,日常生活の基本動作である姿勢保持・姿勢変換・体重移動動作計27種類について身体8部位から筋電図を導出し,各動作における筋ごとの活動水準を明らかにした.筋活動水準は,各動作で導出された筋電図の時間当たりの平均積分値(mEMG)を各筋の等尺性筋活動によるMVC発揮時の筋電図積分値で正規化して評価した.その結果,以下の知見が得られた.1.対象動作における時間当たりの平均活動水準は,ビラメ筋において一部40%MVCを越える動作があったものの,総じて低く,20〜30%MVC程度だった.2.動作間で各筋の活動水準を比較すると,速い速度での'階段昇り・降り'及び'坂の上り・下り'と'ジョギング'が総じてどの筋でも相対的に高い活動水準を示し,坂や階段を急いで上る(昇る)と,下肢の筋には自然歩行時の2〜3倍の負担がかかることが判明した.3.体幹の筋でぱ立ち座り',脊柱起立筋と大腿直筋でぱ中腰'と'立ちしゃがみ'の活動水準も相対的に高かった.また,腹直筋と大腿直筋は,階段と坂の上り下り動作において昇り(上り)より降り(下り)動作の方が筋の活動水準が高いという特徴が認められた.4.以上の結果は男女に共通するものであったが,筋活動水準の平均値は多くの動作で女性の方が有意に高く,同じ動作を行ったときの筋への負荷は女性の方が相対的に大きいと考えられた.5.本研究の結果から,日京生活の中での速い体重移動動作,特に勾配のある路面での移動動作は,下肢筋群の筋機能の維持・向上に有効な運動刺激となり得るのではないかと推察された.
著者
沢井 史穂 白山 正人 武藤 芳照 宮下 充正
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.155-163, 1990-06-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
31
被引用文献数
5 3

近赤外分光法は, 従来, 食品成分の非破壊分析法として用いられてきたが, 近年アメリカにおいてこの方法をヒトの体脂肪率の推定に応用する試みがなされ, 携帯用小型測定器が開発された.本研究は, この測定法を日本においても汎用可能とするための日本人用体脂肪率推定式を決定しようとするものである.年齢, 体格, 身体活動量の異なる18~58歳の健常な男性69名, 女性52名を対象に, 身長, 体重, 体脂肪率を測定した.体脂肪率は, 水中体重法, 皮脂厚法, 近赤外分光法の3方法を用いて推定した.近赤外分光法の測定部位は, 予備実験の結果, アメリカにおける先行研究と同様, 他の測定法による体脂肪率との相関が最も高かった上腕二頭筋中央部とし, 947mmの近赤外線を照射して光吸収スペクトルを得た.被検者の1/2について, それぞれの近赤外スペクトルの値を水中体重法による体脂肪率に回帰させ, 体脂肪率推定式を算出した.残り1/2の被検者の近赤外スペクトルをその式に代入して得た体脂肪率と水中体重法によって求めた体脂肪率の値とを比較したところ, r=0.89 (SEE=2.9) の高い相関が認められた.これは, 水中体重法と皮脂厚法との間の相関係数とほぼ同様の値であった.アメリカ人用の推定式の決定には, 近赤外分光法スペクトルの他に身長, 体重, 年齢の変数を加えた方が, 相関係数の値が高くなったと報告されているが, 日本人の場合, 他の変数を加えても相関係数の値はほとんど変わらなかった.また, 測定部位における左右差はなかった.したがって, 近赤外分光法による日本人用体脂肪率の推定式は, 体脂肪率=54.14-29.47× (947nmにおける近赤外スペクトル値) 〔r=0.88 (p<0.01) , SEE=3.2〕と決定された.