著者
影山 隆之 小林 敏生 河島 美枝子 金丸 由希子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.103-114, 2004 (Released:2006-09-21)
参考文献数
62
被引用文献数
30 23

勤労者のコーピング特性(CP)は,職業性ストレス要因から健康問題が発展する過程に大きく影響する.しかしCPに関する既存の質問紙の多くは長すぎて,職域精神保健活動に活用しにくい.本研究で著者らは,わずか18項目から成る,勤労者のCP評価のための新しい自記式質問紙の開発過程と,その信頼性・妥当性・実用性について報告する.予備研究に基づき,コーピング戦略に関する18問6尺度から成るコーピング特性簡易尺度(BSCP)が提案された.これと職業性ストレス簡易評価尺度(BSJS)および抑うつ尺度(CES-D)から成る質問紙を某企業の従業員394名に適用し,328名(83%)から回答を得た.年齢の平均(SD)は40.1(10.0)歳,78%が男性,75%が既婚で,ほとんどがホワイトカラーであった.BSCPの因子分析から抽出された6因子は当初想定した6尺度や先行研究の結果とよく一致した.これらは“積極的問題解決”“解決のための相談”“発想の転換”“気分転換”“他者を巻き込んだ情動発散”“逃避と抑制”と命名された.Cronbachの信頼性係数は0.66~0.75で,十分高い内的一貫性が認められた.どの尺度も性・年齢との関連はなかった.多変量解析の結果,抑うつ度得点の分散の38%がBSJSの“量的負荷”“対人関係の困難”“達成感”およびBSCPの“問題解決”“逃避と抑制”によって説明された.交互作用分析の結果,CPが職業性ストレス要因と抑うつ症状の関係を修飾していることが示唆された;“対人関係の困難”得点が高くかつ“達成感”得点が低い群においてのみ“積極的問題解決”得点は抑うつ度得点と負相関しており,“対人関係の困難”得点が高い群においてのみ“逃避と抑制”得点は抑うつ度得点と正相関していた.以上の結果はBSCPの信頼性・妥当性を支持するとともに,職域精神保健領域における職業性ストレスの自己管理や健康教育の道具としてのBSCPの実用性を支持するものである.今後の研究では,BSCPの再現性や併存的妥当性を確認するとともに,他の集団においてCPが性・年齢・職種あるいは他の職業性ストレスアウトカムと関連しているかどうか確認することが,課題である.
著者
影山 隆之 河島 美枝子 小林 敏生
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

勤労者のコーピング特性を評価するための既存の質問紙にはさまざまの問題があった。これらを参考に、職域健診や健康教育場面で使いやすい6尺度20項目からなる新しい簡易質問紙を試作した。これを勤労者集団に適用しては信頼性と妥当性を確認する作業を、数回繰り返した。最終的に、18項目からなるコーピング特性簡易評価尺度(BSCP)を完成した。BSCPの下位尺度(積極的問題解決、解決のための相談、気分転換、視点の転換、他者への情動発散、回避と抑制)には十分な内的一貫性と構成概念妥当性が認められ、また因子構造妥当性に男女差がないことも確かめられた。さらに、職業性ストレスや抑うつとBSCP下位尺度との間には中程度の相関があることや、職業性ストレスと抑うつとの関連をコーピング特性が媒介していることも認められ、職業性ストレス過程モデルとの理論的一致が確認された。BSCPを用いた研究の結果、コーピング特性は、喫煙・飲酒習慣・自殺に関する態度などと関連している可能性がある他、病院看護師の喫煙行動が交替制勤務に伴う眠気に対する対処行動の一種である可能性も示唆された。BSCPの再現性の検討、および大集団における標準化の作業は研究期間中に終了できなかったが、近日中に実行する準備を進めている。BSCPは、職業性ストレスに起因するストレインの予測、勤労者の健康問題関連行動・態度の関連要因分析、職場の「ストレスマネジメント研修」の教材などとして、実用的なツールであることが示唆された。
著者
影山 隆之 錦戸 典子 小林 敏生 大賀 淳子 河島 美枝子
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
大分看護科学研究 (ISSN:13456644)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-10, 2003-04
被引用文献数
5

病院看護職の職業性ストレスの特徴および精神健康との関連を職業性ストレスモデルに拠って検討するために、一公立病院の看護職101 名に対して横断的な質問紙調査を行い、女性98 名(97%)の回答について分析した。一般男性勤労者に比べ、対象者が経験しているjob demand は特に高いものでなく、しかもcontrol とreward の水準は高かった。これは病院看護職についての先行研究と比較しても、比較的恵まれた状況に見える。それにもかかわらず、その精神健康度は、病院看護職についての先行報告と同様の低い水準にあり、このことは職業性ストレス簡易質問紙で調べた一般的な職場環境要因から説明できなかった。精神健康度と関連する要因は、職場の対人関係の困難、達成感、仕事以外の悩み・心配事、抑圧的なストレス対処特性、および年齢であり、達成感は対人関係の困難に対して緩衝作用をもつことも示唆された。これらの関連要因の中には、一般勤労者と共通するものと、本集団に特有のものが見られた。女性交替勤務職という職種の特徴がこれらの関連要因に影響している可能性や、対象者のストレス対処特性に一定の偏りがあるかどうかなどは、今後の検討課題と考えられた。本研究の結果に基づきこの病院で試み始めているストレスマネジメント対策について紹介した。
著者
影山 隆之 大賀 淳子 河島 美枝子 舞 治代 佐田 美貴恵 渡辺 英宣 東保 みづ枝
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
大分看護科学研究 (ISSN:13456644)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.33-39, 2002-06

在宅精神障害者の日常生活における困りごとについて調べるために、大分郡に在住する精神障害者とその同居家族45組に対して自記式質問紙調査を行った。精神障害者自身が認識している困りごとと、その家族が評価した援助の必要性を比較した結果、二つの観点の大きな乖離が詳細に示された。乖離の様相には男女差も認められた。この乖離は、保健師が在宅精神障害者のためのホームヘルプ事業などに係るケースマネジメントを行う際に、参考になる。