著者
河島 茂生
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.53-69, 2016 (Released:2017-02-03)
参考文献数
42
被引用文献数
1

本論文では, ネオ・サイバネティクスの理論のなかでも特にオートポイエーシス論に依拠しながら, 第3次ブームの人工知能を定位し倫理的問題の基礎づけを目指した。オートポイエティック・システムは自分で自分を作るシステムであり, 生物の十分かつ必要な条件を満たす。一方, アロポイエティック・マシンは, 外部によって作られるシステムであり, 外部からの指示通りに動くように調整されている。この区分に照らせば, 第3次ブームの人工知能は, 人間が設定した目的に応じたアウトプットが求められるアロポイエティック・マシンであり, 自己制作する生物ではない。それゆえ, 責任を帰属する必要条件を満たさず, それ自体に責任を課すことは難しい。人工知能に関する倫理は, あくまでも人間側の倫理に帰着する。とはいえ人間は, しばしば生物ではない事物を擬人化する。特に生物を模した事物に対しては愛情を感じる。少なからぬ人々が人工知能に度を越した愛情を注ぐようになると社会制度上の対応が要される。そうした場合であっても, 自然人や法人とは違い, 人工知能はあくまでもアロポイエティック・マシンであることには留意しなければならない。
著者
河島 茂生
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-15, 2013

本論文は,オートポイエーシス論に基づきながら,ネットゲーム依存の問題を検討している。これまで心理学的もしくは精神医学的なアプローチでの取り組みがなされ,対策も講じられてきた。しかし,情報学の基礎理論でもあるオートポイエーシス論を援用した分析はほとんど見られない。そこで本研究は,オートポイエーシス論の視座からネットゲーム依存を考察することにした。この方法を採ることにより,人間の心理において現実と虚像の境界が原理的に曖昧である点が指摘でき,またネットゲームだけにのめり込む危険性も考察することができた。さらには,インターネット依存から身をかわす一契機を見出すことが可能となった。This paper discusses online gaming addiction, based on the theory of autopoiesis. Several studies have been made on internet addiction from the psychiatric or psychological point of view. However, there has been no study from the perspective of autopoietic theory. Therefore, this paper examines online gaming addiction from the stance of autopoietic theory. In taking this approach, it is pointed out that the boundary between reality and virtual image is ambiguous in human mentality. Furthermore, the risks which stem from being engrossed in online gaming are considered. Finally, opportunities for curing online gaming addiction are explored.
著者
河島 茂生
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

本発表では,ネオ・サイバネティクスの理論に依拠しながら,人工知能に関わる倫理的問題の整序-再編を目指す。社会的な領域では人工知能は公正さや公知性を保ちながら社会システムの継続・改善に資することが求められるのに対して,個人的な領域では人工知能の利活用というよりもオートポイエティック・システムとしての相手への配慮が引き続き求められる。人工知能が普及した社会では,こうした複眼的な倫理的観点が欠かせない。
著者
河島 茂生
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-14, 2019-06-30 (Released:2019-07-10)
参考文献数
18

本論文は,AIやロボットが社会に普及している状況下において,また複数のAIが通信ネットワークにおいて接続していく状況下において,いかに倫理的責任の帰属を位置づけるかを検討している。ネオ・サイバネティクスの理論に依拠しつつ,EU議会における電子人間の提言への懸念を示し,AIネットワーク環境下の集合的責任ともいうべき考え方を支持した。電子人間確立の提案は,オートポイエティック・システムでないものに人格という位置を与えることであり,それは,実情に合わないのに加えて倫理的問題を引き起こしかねない。電子人間を制度的に確立しなくとも,集合的責任の制度構築により補償は可能である。近年のコンピュータ技術の動向を鑑みるに,特定の人や組織に責任を帰属できない場合が想定される。その場合は,被害者を救済し,開発者・利用者の萎縮を引き起こさないために集合的責任の導入が求められる。ただしAIネットワーク状況下における責任のありようは,集合的責任のみだけは不足である。特定の人や組織の瑕疵が明確である場合は,そこに責任を帰属させることが望まれる。これは近代以降の慣習になっており容易に変えることが難しいうえ,開発者・利用者の故意の過失もしくは怠慢,責任感の減退を防ぐためには,また技術を改善する動機の維持のためには必要であると考えられる。
著者
河島 茂生 カワシマ シゲオ
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-15, 2013

本論文は,オートポイエーシス論に基づきながら,ネットゲーム依存の問題を検討している。これまで心理学的もしくは精神医学的なアプローチでの取り組みがなされ,対策も講じられてきた。しかし,情報学の基礎理論でもあるオートポイエーシス論を援用した分析はほとんど見られない。そこで本研究は,オートポイエーシス論の視座からネットゲーム依存を考察することにした。この方法を採ることにより,人間の心理において現実と虚像の境界が原理的に曖昧である点が指摘でき,またネットゲームだけにのめり込む危険性も考察することができた。さらには,インターネット依存から身をかわす一契機を見出すことが可能となった。
著者
河島 茂生
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.1E1OS24a2, 2017 (Released:2018-07-30)

本発表では,ネオ・サイバネティクスの理論に依拠しながら,人工知能に関わる倫理的問題の整序-再編を目指す。社会的な領域では人工知能は公正さや公知性を保ちながら社会システムの継続・改善に資することが求められるのに対して,個人的な領域では人工知能の利活用というよりもオートポイエティック・システムとしての相手への配慮が引き続き求められる。人工知能が普及した社会では,こうした複眼的な倫理的観点が欠かせない。
著者
河島 茂生
雑誌
聖学院大学論叢 = The Journal of Seigakuin University (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.第25巻, no.第2号, pp.1-15, 2013-03

本論文は,オートポイエーシス論に基づきながら,ネットゲーム依存の問題を検討している。これまで心理学的もしくは精神医学的なアプローチでの取り組みがなされ,対策も講じられてきた。しかし,情報学の基礎理論でもあるオートポイエーシス論を援用した分析はほとんど見られない。そこで本研究は,オートポイエーシス論の視座からネットゲーム依存を考察することにした。この方法を採ることにより,人間の心理において現実と虚像の境界が原理的に曖昧である点が指摘でき,またネットゲームだけにのめり込む危険性も考察することができた。さらには,インターネット依存から身をかわす一契機を見出すことが可能となった。
著者
土橋 祐介 河島 茂生
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.77-93, 2005

本研究は,書き込み機能のアーキテクチャ変更にともなうユーザ行動のありようを比較している.すなわち,本研究は,ウェブサイトの書き込み機能のアーキテクチャを変更して,(1)ユーザ登録およびログイン作業の有無が書き込み数や書き込み内容に与える影響,(2)返信機能の有無が書き込み数や書き込み内容に与える影響,を検討している.調査の結果,ユーザ登録およびログイン作業なしの場合は,サイト全体での書き込み数は増えず「荒らし」が散見されるようになったものの,書き込みの窓口が広くなりRAM比率が上がることが示された.また,返信機能なしの場合は,サイト全体での書き込み数も増えずRAM比率も下がり,話題も深く掘り下げられることなく話題転換しやすかった.