著者
河本 毬馨 辻 慶太
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.79, pp.85-107, 2018

【目的】近年, 米国では "library as place (場所としての図書館)"という概念が広まり, 利用者が長時間滞在しやすいよう飲食を許す図書館が現れている。一方, 日本の多くの図書館では, 従来館内飲食は許されないと言われてきた。だが, 日本の館内飲食の現状や飲食許可による効果などは明らかにされていない。そこで本研究では, (1) 日本の図書館における現在の飲食方針, (2) 飲食による図書館資料への影響, (3) 図書館利用者の館内飲食に対する反応, (4) 図書館員の館内飲食に対する意見, (5) 館内飲食許可の前後における図書館利用量の変化, を明らかにする。【方法】本研究では, (a) アンケート調査, (b) 図書館利用量分析, を行った。(a) アンケートは無作為抽出した公共・大学図書館各500館に2015年5~7月に送付し, それぞれ356館, 329館から回答を得た。(b) 図書館利用量分析では『日本の図書館 : 統計と名簿』から入手した来館者数, 個人貸出総数, 参考業務受付件数が, 飲食を許した年の前後2年間ずつでどのような増加率を示しているかを調べた。【結果】調査の結果, 公共図書館の56.2%, 大学図書館の62.3%が飲み物または食べ物の利用を許していることが明らかとなった。また, 館内飲食に付随する問題として取り上げられる資料への汚れに関しては, 飲食を許した後に汚れが「目立つ」「少し目立つ」と回答した公共図書館は4.0%, 大学図書館は14.6%と比較的低い割合であることがわかった。さらに, 飲み物を許した公共図書館の来館者数の増加率の平均値は+65.7%であり, 全国の平均値+8.6%より有意水準0.05 で高いことや, 食べ物を許した公共図書館の個人貸出総数の増加率の中央値は+56.5%であり, 全国の中央値+4.1%より有意水準0.01 で高いことなども示された。因果関係の証明などは難しいものの, 飲食許可後は来館者数や個人貸出総数が増加する傾向があり, 館内飲食は図書館利用量向上に有効なサービスである可能性が示された。Purpose : While more libraries in the United States are starting to allow food and drinks as a result of the rise of the "library as place" theme, the changing policies on food and drinks in Japanese libraries have not been studied. Therefore, we investigated Japanese libraries' food and drink policies and their effect on library materials, as well as user reactions, librarians' opinions of the policies, and changes in library usage after the introduction of the policies.Methods : In 2015, we sent questionnaires to 1,000 libraries (500 public and 500 university), of which 356 public and 329 university libraries responded. We also investigated library usage (gate counts, loans, and reference transactions) both before and after the introduction of policies that allow food and drinks, and found that the numbers consistently increased after the policies were put in place.Results : The results show that 56.2% of public and 62.3% of university libraries allow food and drinks. Only 4.0% of public and 14.6% of university libraries reported that these policies resultedin noticeable stains on library materials. The gate count for all public libraries, including those that did not allow food and drinks, increased by an average of 8.6%, while that for public libraries allowing food and drinks increased by 65.7%. Public libraries that allowed food and drinks saw a median 56.5% increase in the number of library loans. Therefore, allowing food and drinks may have positive effects on library usage.原著論文
著者
小泉 公乃 吉田 右子 池内 淳 松林 麻実子 和気 尚美 河本 毬馨
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

21世紀社会における中心的課題は,産業構造の変化や不安定化する国際政治によって生じた社会分断を克服することであり,地域コミュニティの中心にある図書館は社会分断克服空間への変化を求められている。本研究では,①包括的文献レビュー,②北欧北米と日本における図書館の政策分析,③北欧北米と日本の先進的な図書館を対象とした詳細な事例分析,④先進的な図書館の立地する地域を対象としたエスノグラフィ,⑤新しく創造された社会分断克服空間を対象とした図書館評価法の開発という5つの研究を通して,伝統的な図書館から21世紀の次世代図書館への<革新メカニズム>を解明したうえで,<新しい図書館評価法>を開発する。