著者
河野 恵美子 奥野 敏隆 長谷川 寛 京極 高久 高峰 義和 林 雅造
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.2974-2978, 2007-12-25 (Released:2008-08-08)
参考文献数
11

乳癌術後13×8cmの皮膚欠損創に対し, ラップ療法で治癒した1例を経験したので報告する. 症例は55歳, 女性. 左乳房に15×25×5cm大のカリフラワー様の腫瘍を認め, 乳癌の診断で左乳房切除術を施行した. 第5肋骨の露出を伴う13×8cm大の皮膚欠損創となったが, 創感染のリスクが高いと判断し, 一期的遊離皮膚移植は行わず, 水道水による洗浄後, ポリ塩化ビニリデン製食品包装用ラップフィルムを用いた開放ドレッシング (ラップ療法) を続けた. 術後8日目に肉芽増生が開始し, 17日目には平坦化した. 上皮化は14日目に縦方向, 37日目に横方向が開始したが, 次第に停滞したため, 57日目よりステロイド外用剤を使用したところ, 翌週には, 潰瘍の辺縁に上皮化を認め, 以後1週間に1cmのスピードで上皮化が進み, 約2カ月でほぼ治癒となった. 以上より, ラップ療法は10cm以上の大きな皮膚欠損創でさえも治癒することができる優れた治療法であると考える.
著者
諏訪 竜一 大見謝 恒太 西原 隆 高橋 昌弘 住 秀和 殿岡 祐樹 河野 恵美子
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.19-23, 2020

<p>沖縄県における海洋汚染の主たる原因の一つとして,畑地からの赤土流出が挙げられる。これらの赤土流出保全のため沖縄県においてはベチバー(<i>Vetiveria zizanioides</i>)がグリーンベルトとして広い地域に植栽されている。本研究では,このグリーンベルトとして栽培がされているベチバーから精油の採油が可能であるか,また,市販の精油との比較,さらに採取時期による採油率の変化および成分変動の有無について検証を行った。本研究で比較のために用いた二つの市販精油(インドネシア産およびスリランカ産)では精油中の組成成分の構成が異なっていた。採油を行った精油中の特長では,最も主要な成分ではkhusimolやvetiselinolなどのアルコール類が主要であり,この傾向はインドネシア産と同様であった。また,初夏と初冬における採油率(乾物重あたり)を比較した場合,初夏において0.62%であるのに対して初冬においては0.34%であった。一方,精油製造時に季節を問わず,構成成分の変動が比較的小さかった。このため,採油時期に起因する品質の不安定の懸念が少ないことが示された。今後,グリーンベルトを用いた精油の製造が進むことにより,一次産業とアロマ業界が複合することによる環境保全の促進につながることが想定される。</p>
著者
黒林 淑子 河野 恵美 森光 康次郎 久保田 紀久枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.156, 2005 (Released:2005-12-08)

目的 セロリはコンソメスープを調製する際、よく用いられる香味野菜のひとつである。セロリは目的とする風味により、葉・茎部が使い分けられることがある。本研究ではセロリの部位別の香気組成を調べ、それらがスープ風味に与える影響を検証し、調理における使い分けの意義付けを試みた。方法 セロリの葉・茎部はそれぞれ水系で加熱後、水相をエーテル抽出し、SAFE(Solvent Assisted Flavor Evaporation)蒸留装置を用い揮発性成分を捕集し、GC、GC/MS、GC/O測定に供し、成分の分析を行った。一方、動物性素材のみでチキンブロスを調製し、水蒸気蒸留法により得られたセロリの葉・茎部の煮熟香気を添加し、その風味について官能評価を行った。結果 セロリ香気を加えたチキンブロスは添加前に比べ、大きく風味が改善された。その際、葉と茎では風味改善効果の特性に若干違いが認められた。セロリ特徴香に関与する主要成分として3-butylphthalide (1)、Sedanenolide (2)、Sedanolide (3)などのフタライド類が同定されたが、葉中には茎に比べ、特にSedanolideが多く見出された。フタライド(1)および(2)を単独でブロスに加えた場合の効果を評価したところ、種類により風味に与える影響が異なっていた。このことから葉と茎におけるフタライド類の組成の違いが、出来上がったスープの風味の差に影響を及ぼすのではないかと考察された。