著者
伊藤 百合子 荒川 奈津枝 高村 あゆみ 森光 康次郎 久保田 紀久枝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.121-129, 2006-02-15 (Released:2007-03-07)
参考文献数
22
被引用文献数
3 4

1.スウィーティオパイナップルはレギュラーパイナップルに比べ豊かな香りが特徴であるが,香気成分量的にも顕著に多いことが確認された.また,上,中,下部の香気成分量に大きな違いがなく,最も少ない上部においても,レギュラーよりも香気成分量が多いことがわかった.2.フラネオール含量はいずれのパイナップルにおいても高い含有量を示すが,レギュラーでは,フラネオールの含有量が,突出しているのが特徴であるのに対し,スウィーティオでは,フラネオールの他に,3-(メチルチオ)プロパン酸メチル,メシフラン,ヘキサン酸メチル,4-ヘキサノライド,2-メチルブタン酸メチルおよびヘキサン酸エチルの含有量が高く,全体の成分組成のバランスが両パイナップル香気の違いに関与していると考察された.3.AEDA法およびodor unitによりスウィーティオパイナップルの香気寄与成分を抽出すると,量的な主成分であったフラノン類,含S化合物などに加えて短鎖のエステル類である2-メチルブタン酸メチルと2-メチルブタン酸エチルが重要成分として抽出された.4.2-メチルブタン酸メチルと2-メチルブタン酸エチルの立体配置について検討した結果,スウィーティオパイナップルでは,それぞれ97.4% eeおよび100.0% ee, レギュラーパイナップルでは99.0% eeおよび100.0% eeで(S)-体を主成分としていることを確認した.5.高いodor unitを示した2-メチルブタン酸メチルと2-メチルブタン酸エチルについて,ラセミ体を用いてであるがレギュラージュースへの添加実験を行い,官能評価を行った結果,この2種類のエステルを添加することにより,“広がりのある”,“さわやかな”および“果実様の”香りが強められ,スウィーティオパイナップルの香りに類似することが確認され,重要成分であることが分かった.
著者
久保田 紀久枝 勝見 優子 黒林 淑子 森光 康次郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.160, 2006

目的 セルリアク(Apium graveolens var. rapaceum)はセロリの変種で、ヨーロッパでサラダやスープなどによく利用されている。生ではセロリ様の風味を呈するが、加熱すると甘く香ばしいにおいとなる。本研究では、生および煮熟セルリアクの香気特性および主な香気寄与成分について明らかにすることを目的とする。方法 セルリアクの皮をむき2等分した後、細断後水とともにミキサーでホモジナイズし、一方は1h静置、他方は1h沸騰加熱した。遠心分離により上澄液を得、Porapak Qを充填したカラムにて香気成分を捕集した。有機溶媒で脱着・濃縮した画分をさらに高真空蒸留法により香気濃縮物を得、GC, GC-MS, GC-Olfactometryにより分析した。また、生と煮熟セルリアクのにおい特性を官能評価法により比較した。結果 官能評価の結果、セルリアクは煮熟するとみずみずしい青臭いにおいからキャラメル様の甘さや煮た野菜の甘さを感じさせ、まろやかさと深みのあるにおいになると評価された。香気成分組成を見ると、セロリ様の香りを有するフタライド類が生と煮熟いずれにおいても主成分であった。その他、生には青臭い香りを有するβ_-_ピネンなどのテルペン炭化水素類が多いのに対し、煮熟したものにはフラネオール、バニリン、マルトール、ソトロンなど甘い香りに寄与する成分の生成が認められた。さらに、クローブ様のスパイシーなにおいをもつ2-メトキシ-4-ビニルフェノールの顕著な生成が認められ、これらが官能評価で煮熟セルリアクが甘みや深みのあるにおいと評価された特徴香気に寄与していると考察された。
著者
阿部 雅子 小澤 好夫 森光 康次郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.115, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】ショウガ科植物であるミョウガ(Zingiber mioga Roscoe)は特有の香りとさわやかな辛味を有し、薬味や漬物、汁の実として広く利用されてきた日本古来の香辛野菜である。これまでに演者らはミョウガの辛味関連化合物としてMiogadial(aframodial)及び新規Miogatrialを同定し、これらの化合物が抗菌活性、血小板凝集阻害活性などを有することを報告してきた。本研究ではミョウガを調理することにより、これらの化合物がどのように変動するのか精査した。【方法および結果】市販の新鮮ミョウガを洗浄後、加熱調理としてスライスしたミョウガを試料とし、茹でる・炒めるなどの調理、また非加熱調理(漬物)として2分割したミョウガを試料とし塩漬け・酢漬け・味噌漬け・糠漬け・粕漬けなどの加工を施した。漬物は60日間を貯蔵期間として、それぞれ定期的に一定量を酢酸エチルで抽出しHPLCにてMiogadial 及びMiogatrialの定量を行い、新鮮ミョウガとその含有量を比較した。加熱調理においては5分以内の短時間の加熱では茹で操作、炒め操作ともにミョウガ花蕾中におけるMiogadial 、Miogatrialは約60%残存していた。調理中のミョウガからの溶出も検討するため茹で汁、炒め油について同様に分析した結果、油中への溶出が一部認められた。非加熱調理においては60日後のMiogadial 、Miogatrialの残存率が最も高いものは酢漬けであり、著しく減少したものは糠漬け、粕漬けであった。Miogadial 及びMiogatrialの変動に及ぼす要因について、現在検討中である。
著者
黒林 淑子 河野 恵美 森光 康次郎 久保田 紀久枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.156, 2005 (Released:2005-12-08)

目的 セロリはコンソメスープを調製する際、よく用いられる香味野菜のひとつである。セロリは目的とする風味により、葉・茎部が使い分けられることがある。本研究ではセロリの部位別の香気組成を調べ、それらがスープ風味に与える影響を検証し、調理における使い分けの意義付けを試みた。方法 セロリの葉・茎部はそれぞれ水系で加熱後、水相をエーテル抽出し、SAFE(Solvent Assisted Flavor Evaporation)蒸留装置を用い揮発性成分を捕集し、GC、GC/MS、GC/O測定に供し、成分の分析を行った。一方、動物性素材のみでチキンブロスを調製し、水蒸気蒸留法により得られたセロリの葉・茎部の煮熟香気を添加し、その風味について官能評価を行った。結果 セロリ香気を加えたチキンブロスは添加前に比べ、大きく風味が改善された。その際、葉と茎では風味改善効果の特性に若干違いが認められた。セロリ特徴香に関与する主要成分として3-butylphthalide (1)、Sedanenolide (2)、Sedanolide (3)などのフタライド類が同定されたが、葉中には茎に比べ、特にSedanolideが多く見出された。フタライド(1)および(2)を単独でブロスに加えた場合の効果を評価したところ、種類により風味に与える影響が異なっていた。このことから葉と茎におけるフタライド類の組成の違いが、出来上がったスープの風味の差に影響を及ぼすのではないかと考察された。