著者
津志田 藤二郎 村井 敏信 大森 正司 岡本 順子
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.817-822, 1987
被引用文献数
33 45

(1) 茶葉を窒素ガスや炭酸ガスのなかに入れ,嫌気的条件に置いたところ, γ-アミノ酪酸とアラニンが増加しグルタミン酸とアスパラギン酸が減少した.一方,テアニンやカフェイン,タンニン含量は変動しなかった.<br> (2) γ-アミノ酪酸は血圧降下作用を示す成分であるといわれることから,窒素ガス処理を行った茶葉で緑茶を製造した.その結果,一番茶,二番茶,三番茶ともにγ-アミノ酪酸含量が150mg/100g以上になった.<br> (3) ウーロン茶,紅茶のγ-アミノ酪酸含量は,茶葉を萎凋する前に窒素ガス処理するより,萎凋後に窒素ガス処理するほうが高くなった.<br> (4) 窒素ガス処理した茶葉から製造した茶は独特な香りを持っていたので, GC-MSで香気成分を分析,同定したところ,窒素ガス処理しないで製造した茶に比べて,脂肪酸のメチルやエチルエステルが増加していた.しかし,これらの成分の臭いは窒素ガス処理した茶が持つ香りとは,異なっていた.
著者
大森 正司 矢野 とし子 岡本 順子 津志田 藤二郎 村井 敏信 樋口 満
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1449-1451, 1987-11-15 (Released:2009-02-18)
参考文献数
7
被引用文献数
74 87

This study was conducted to investigate the effects of green tea made from leaves incubated in an anaerobic condition (Gabaron tea) on the blood pressure of spontaneously hypertensive rats (SHR). No difference was found in the mean body weight of the control groups (first group, fed on water; second group, fed on ordinary green tea) and the experimental group (third group, fed on Gabaron tea) throughout the test period. The mean blood pressure of the three groups was identical at 160 mmHg in the pre-test period. The mean blood pressure of the experimental group was 158 mmHg, whereas the control groups shared 163_??_167 mmHg one week after the experiment started. The blood pressure of the experimental group was significantly lower than pressures of the control groups (P<0.01). In all groups, the mean blood pressure increased gradually from 10 to 20 weeks of age. The mean blood pressure of the experimental group was about 150 mmHg, and those of the control groups reached 175_??_180 mmHg. The mean blood pressure of the experimental animals was 14_??_17% lower than the pressures of the control animals at 20 weeks of age (P<0.01). The hypotensive effect on SHR fed the Gabaron tea infusion disappeared when the animals were returned to ordinary green tea intake at 20 weeks of age.
著者
津志田 藤二郎 鈴木 雅弘
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.642-649, 1996-05-15
参考文献数
22
被引用文献数
6 54

北海道産の黄色タマネギ,赤色タマネギ及び白色タマネギのフラボノール含量を測定したところ,生鮮重当たり黄色タマネギではケルセチン-3, 4'-ジグルコシドが16.8mg/100g,ケルセチン-4'-グルコシドが18.5mg/100g,セルセチン-3-グルコシドが0.8g/100g,イソラムネチン-4'-グルコシドが2.9mg/100g存在していた.赤色タマネギでは黄色タマネギに比べて3倍量のフラボノール配糖体が検出されたが,白色タマネギには検出されなかった.また,フラボノール配糖体は外側の鱗茎に多く存在した.<BR>一方,フラボノール配糖体の代謝に関与する酵素としては,2種のフラボノールグルコシダーゼと2種のUDP-グルコース:フラボノールグルコース転移酵素が検出された.これらはそれぞれ至適pHが異なり,3-β-グルコシダーゼでは4.5, 4'-β-グルコシダーゼでは7.0であり,3-β-グルコース転移酵素では6.0, 4'-β-グルコース転移酵素では8.0であった.使用した全ての品種において,ケルセチン-4'-β-グルコース転移酵素の活性が4'-β-グルコシダーゼの活性に勝っていることから,ケルセチン-4'-β-グルコシドは蓄積される方向にあることが分かった.一方,ケルセチンの3位においては逆にグルコース転移酵素がグルコシダーゼの活性より弱いため,ケルセチン-3-β-グルコシドは蓄積しにくいことが分かった.<BR>また,ケルセチンの3位に糖が結合したフラボノール配糖体には4'-β-グルコース転移酵素が作用できないため,タマネギのケルセチン-3, 4'-ジグルコシドは,ケルセチン-4'-β-グルコシドに糖転移が起こることにより合成されることが推定できた.
著者
津志田 藤二郎
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.448-449, 2006-08-15

<B>1.食事バランスガイドの制定</B><BR>食事は,運動やストレス,喫煙,飲酒などとともに,私たちの健康に大きな影響を与える要因の一つになっており,健康を維持するためにはそのバランス,すなわち「フードバランス」あるいは「食事バランス」が重要であると考えられるようになった.アンバランスな食事を続けると高血圧や糖尿病,心疾患,脳血管疾患,アレルギーなどの免疫系失調等の生活習慣病に陥る確率が高くなり,生活の質が低下するのみならず早死にを招く結果となることは,誰もが理解するところである.しかし,理解しながらもその実践となると,心もとないのが現実である.こうした事態を打開するため,平成12年に制定した「食生活指針」を具体的な行動に結び付け,国民一人ひとりがバランスのとれた食生活を実現していくことができるよう,食事の望ましい組み合わせやおおよその量を分かりやすくイラストで示した「食事バランスガイド」を,農林水産省と厚生労働省が共同で平成17年6月に決定・公表した.主食(米やうどん,パン)と副菜(野菜やいも,キノコ,海藻等の料理),主菜(肉や魚,卵,大豆等の料理),そして牛乳・乳製品と果物の5つのグループの望ましい摂取量をコマの体積からイメージできるように図案化し,摂取バランスが悪いとコマが倒れ,いわば生活習慣病などの不測の事態が生じることをイメージさせるガイドである.コマの上の軸にはコップがあり,水やお茶などの飲料水摂取の重要性も意識させ,さらにコマの上を走る人間の姿も図案化され,食事のみならず普段からの運動の重要性も見て取れ,世界的に見ても分りやすくユニークなガイドになっている(図1).この「食事バランスガイド」は,同時期(平成17年6月)に制定された「食育基本法」を実践するための教材ともなっており,わが国に健全な食生活を定着させるために大きく役立つものとして期待されている.<BR><B>2.マクガバン報告から現在まで</B><BR>食事と健康の関係について注目し,それを行政的な課題として取り上げた最初の事例は,1977年の「マクガバン報告」である.米国の上院議員であったマクガバン氏は,1960年代の米国民一人当たりの医療費が世界のどの国よりはるかに高いにも係わらず,平均寿命が世界26位であることに失望を覚え,アメリカ上院栄養問題特別委員会を設置して世界から学者を集めて食事と健康に関する調査を行い,膨大な調査結果(マクガバン報告)を1977年に発表した.その中で,(1) 炭水化物摂取の奨励,(2) 脂肪摂取の抑制,(3) 飽和脂肪酸より不飽和脂肪酸摂取の推奨,(4) コレステロール摂取の抑制,(5) 砂糖摂取の抑制,(6) 食塩摂取の抑制を取り上げ,タンパク質(P)と脂質(F),炭水化物(C)摂取の比率は,当時の日本の食事が理想的であり,米国の食事は間違っていることをすなおに認め,以後積極的な食事改良政策を展開した.その後,米国農務省は1992年に各食品群別に食べる量をピラミッドに示した面積から推定できるフードガイドピラミッドを制定し,2005年には個人の事情に合わせることが可能なマイピラミッド型のフードガイドを制定するに至っている.なお,米国でのフードガイドピラミット制定以来,オーストラリアやカナダ,イギリス,オランダ,ポルトガル,中国等でもそれぞれ独自の図案によるフードガイドが制定され,各国が生活習慣病の予防に向けた取り組みを活発に行う時代が到来している.<BR><B>3.国民栄養調査と「日本食事摂取基準(2005年版)」の制定</B><BR>こうした「フードガイド」制定の科学的な根拠としては,わが国で毎年実施している国民健康栄養調査がある.それによると3大栄養素であるPFCについては,30歳以上69歳までの人の摂取目標量がそれぞれエネルギー比で20%未満,20以上25%未満,50以上70%未満となっている.また,脂肪については飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けてその摂取基準を定めており,18歳以上の男性では飽和脂肪酸の目標量(エネルギー)が4.5~7.0%,n-6系脂肪酸の摂取目標量(エネルギー)が同様に10%未満,n-3系脂肪酸の摂取目標量(エネルギー)が男性の18歳以上49歳までが9.4%以上,50~69歳までが11.6%以上,70歳以上が8.8%以上となっている.この他,ビタミン,ミネラルなど微量栄養素についても,それぞれ摂取量の基準が「日本食事摂取基準(2005年版)」に示されており「食事バランスガイド」には,この食事摂取基準を満たすための役割も期待されており,当面はわが国において摂取量が不足している野菜の摂取目標値1日350gと果実の摂取目標値1日200gの実現が重要な課題になっている.
著者
津志田 藤二郎 鈴木 雅博 黒木 柾吉
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.611-618, 1994-09-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
35
被引用文献数
16 77

リノール酸の自動酸化物がβ-カロチンを退色させることを利用し,その退色の防止活性を指標とした抗酸化性の測定法を用いて, 43種の野菜の80%メタノール抽出液の抗酸化活性を測定し,以下の結果を得た.(1) BHAの抗酸化活性と比較し検討したところ,シュンギクやショウガ,アスパラガス等13種は, BHAが生鮮重100g当たり25mg以上含有されていることに相当する程の活性を示すことが分かった. BHA 5mg/100g以下に相当するものは,カボチャやキウリ,カブ,キャベツ等13種であった.(2) 野菜抽出液のポリフェノール含量と抗酸化性の相関性を検討したところ, 43種の野菜でr=0.7694となり,相関性があることを明らかにした.(3) 比較的抗酸化性の強い3種の野菜の抗酸化性成分をHPLCで分取し,質量分析計等で解析したところ,アスパラガスではルチン,ショウガではヘキサヒドロクルクミンとジンジェロールが同定された.一方シュンギクでは, 3, 5-ジカフェオイルキナ酸および新規のジカフェオイルキナ酸誘導体と推定される成分が得られた.
著者
大森 正司 矢野 とし子 岡本 順子 津志田 藤二郎 村井 敏信 樋口 満
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1449-1451, 1987
被引用文献数
41 87

This study was conducted to investigate the effects of green tea made from leaves incubated in an anaerobic condition (Gabaron tea) on the blood pressure of spontaneously hypertensive rats (SHR). No difference was found in the mean body weight of the control groups (first group, fed on water; second group, fed on ordinary green tea) and the experimental group (third group, fed on Gabaron tea) throughout the test period. The mean blood pressure of the three groups was identical at 160 mmHg in the pre-test period. The mean blood pressure of the experimental group was 158 mmHg, whereas the control groups shared 163_??_167 mmHg one week after the experiment started. The blood pressure of the experimental group was significantly lower than pressures of the <br>control groups (<i>P</i><0.01).<br> In all groups, the mean blood pressure increased gradually from 10 to 20 weeks of age. The mean blood pressure of the experimental group was about 150 mmHg, and those of the control groups reached 175_??_180 mmHg. The mean blood pressure of the experimental animals was 14_??_17% lower than the pressures of the control animals at 20 weeks of age (<i>P</i><0.01). The hypotensive effect on SHR fed the Gabaron tea infusion disappeared when the animals were returned to ordinary green tea intake at 20 weeks of age.