著者
津田 良平
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.169-178, 1971-03-15

水中での物体の見え具合いは物理的要因と視覚生理との総合作用の結果として決まるものであるが、今回はその第一歩として人間の目を用いて網糸の見え方、即ち網糸の視程の研究を行なった。実験は水面の上から散乱光を照射した時の水平視程を測定すると共に、水中視程に大きな影響を与える物理的諸要因、即ち物体の色、反射率、透過率及び濁り、照射光度等をかえで視程測定を行ない、Koschmieder,Middletonの大気中の視程の理論式を実験条件に合う様に書きかえ、実測値を解析し、物理的要因とコントラストの識閾という生理的要因とに分けて視程に対する影響を調べた。 その結果、黒米では視角の小さい範囲では視角が減少すればコントラストの識閾は直線的に増加し、その直線の傾斜は水槽水の濁り、表面照度によってそれぞれ変化する事がわかった。この様な関係はBlackwellの大気中における実験でも確かめられている。
著者
中西 正己 紀本 岳志 熊谷 道夫 杉山 雅人 東 正彦 和田 英太郎 津田 良平 大久保 賢治
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1994

1993年の琵琶湖の夏は、記録的な冷夏・長雨だったのに対し、1994年は猛暑と渇水に見舞われた。この気候変動は、琵琶湖の微小生物生態系を大きく変化させた。1993年夏の琵琶湖国際共同観測(BITEX)に続いて、1994-1995年夏の本総合研究において、世界に先駆けて実施された生物・化学・物理分野の緊密な連携のもとでの集中観測結果は、琵琶湖の水環境を考える上での最重要部分である『活性中心』としての水温躍層動態の劇的な変化を我々に垣間見せてくれた。特に注目された知見として、1993年、1995年の降雨は、河川からの水温躍層直上への栄養塩の供給を増やし、表水層での植物プランクトンの生産を活発にしたのに対し、1994年は河川水の流入が絶たれたため、表水層での植物プランクトンの生産は低下し、キッセ板透明度も十数メートルと向上した。その一方で、躍層内での植物プランクトンの異常に高い生産が、詳細な多地点・沿直・高密度連続観測によって発見された。この劇的な理学の変化は、湖の生物・化学・物理全般にわたる相互作用として、従来指摘されていなかった新たな機構についての知見の一つである。