著者
古関 一則 吉川 憲一 前沢 孝之 浅川 育世 水上 昌文
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.271-279, 2015-06-20 (Released:2017-06-09)
被引用文献数
1

【目的】リハビリテーション病院(以下,リハ病院)入院時点の身体状況から,脊髄不全損傷者の歩行獲得に影響を及ぼす因子および予後予測のアルゴリズムを明らかにすること。【方法】脊髄損傷者87名を対象に診療録より後方視的に調査した。調査項目は入院時の基本情報,神経学的情報,動作能力等を含む14項目とし,退院時の歩行自立度を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。【結果】自立歩行獲得にはASIA Impairment Scale・寝返り・Functional Independence Measure認知合計・Walking Index for Spinal Cord Injury IIが,屋外歩行獲得には受傷年齢・立位が予測因子として挙げられた。【結論】リハ病院において使用可能な客観的予後予測の指標を作成できたことは,計画的かつ効率のよい介入内容の選択や目標の統一を図るうえで大きな意義がある。
著者
篠崎 真枝 浅川 育世 大橋 ゆかり
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.819-827, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
19

〔目的〕PBLテュートリアル教育の効果と問題点および学生の学習行動の変化を検討した.〔対象と方法〕1~4年生を対象に3年間自由記載のアンケートを実施し,計量テキスト分析した.〔結果〕クラスター分析より,【PBL授業への積極的参加】,【主体的な学習姿勢の修得】などの因子が形成された.学年別コードの分析より,4年次では能動的な姿勢や自己学習のコードの増加を示した.〔結語〕PBLの効果として,主体的学習や自己学習の増加などが確認できた.PBLの経験を積んだ高学年で主体的学習行動への変化が見られ,4年間のカリキュラムを通して学生の学習行動の変化を促すプログラムの構築の必要性が示唆された.
著者
有竹 愛理 浅川 育世
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.300-306, 2023 (Released:2023-08-15)
参考文献数
14

〔目的〕訪問リハビリ利用者の環境因子介入効果を,活動参加をアウトカムに検討した.〔対象と方法〕視床出血後症例1名に対し各3ヵ月のA期B期を比較した.事前調査で訪問リハビリ利用者36名の活動参加の変化量を算出し,機能的自立度評価(FIM)9点,Life Space Assessment(LSA)5.9点,Community Integration Questionnaire(CIQ)4.3点を目標値に設定し,A期は標準的介入,B期はA期に加え包括的環境要因調査票(CEQ)を介入した.〔結果〕各変化量はA期FIM 3点,LSA 9.0点,CIQ 2.0点,B期FIM 9点,LSA 1.0点,CIQ 4.5点であった.〔結語〕訪問リハビリ利用者の環境因子介入は活動参加に良い影響を与えることが示唆された.
著者
浅川 育世 内田 智子 小貫 葉子 前沢 孝之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】2006年の介護保険改正以降,介護予防が重視されるようになり,地域包括ケアシステムの実現に向けて介護予防の推進が施策に盛り込まれた。一方,介護予防について介護予防の提供者が,活動や参加に焦点をあててこなかった等の指摘もある。特に参加は活動のより高次のレベルであり,参加レベルを維持・向上させることは介護予防に重要である。しかし,参加についての概念は難しく個人によって捉え方も異なる。本研究は,介護予防における一次予防の対象者がどのような項目を重要視しているかICFコードに基づき調査した。【方法】茨城県が介護予防事業のプロジェクトとして取り組むシルバーリハビリ体操の指導士より500名を無作為抽出し,自記式郵送調査を実施した。調査項目はICF Core Setsの活動と参加の項目より第6章から第9章までの第2レベル36項目から下1桁の数値が8及び9のものを除外し24項目に絞った。24項目については対象者が理解し易いよう注釈を加えた。その際に別に扱うより,1つにまとめた方が理解が容易と判断された2項目については1つに集約し23項目とした。23項目を「今現在の生活において,生きがい,家庭や社会生活での役割を形成するためにどのくらい重要ですか」について「全く重要でない」;0,「あまり重要でない」;1,「やや重要」;2,「とても重要」;3の4件法で質問した。また年齢については別に質問した。各項目について選択肢の回答者数を集計した。前期高齢者と後期高齢者の回答状況の比較にはU testを実施した。【結果】368名より返送され,回答に欠損がある,要介護認定を受けている,64歳以下であることを除外基準とし,262名分(52.4%)を有効回答とした。回答者の平均年齢は70.2±4.3歳であり,内訳は前期高齢者が226名(86.3%),後期高齢者は36名(13.7%)であった。なお,回答について「全く重要でない」,「あまり重要でない」を否定的な回答とした場合,回答が半数以上あった項目は,d730【よく知らない人との関係】(回答者の割合;53.1%),d845【仕事の獲得・維持終了】(同;58.4%),d850【報酬を伴う仕事】(同;62.2%),d865【複雑な経済的取引】(同;56.5%),d930【宗教とスピチュアリティ】(同;59.9%)であった。逆に肯定的な回答が多い項目は上位からd710・720【基本的な(複雑な)対人関係】(回答者の割合;96.2%),d760【家族関係】(同;95.4%),d750【非公式な社会関係】(同;94.6%)であった。前期高齢者と後期高齢者の回答の状況は有意差を認めなかった。【結論】第8章主要な生活領域,特に仕事と雇用(d840-d859)に否定的な回答が多く見られた。回答者の多くが,すでに定年退職を迎える年齢以上の者であることに起因するものと思われる。一方,第7章対人関係については肯定的な回答の割合も高く,他者との関係を構築し維持することは生きがい形成につながる重要な参加であることが伺える。