著者
上岡 裕美子 篠崎 真枝 橘 香織 山本 哲 宮田 一弘 青山 敏之 富田 美加
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.97-101, 2021-04-25 (Released:2021-11-14)
参考文献数
13

背景 : 理学療法学生において効果的な臨床参加型実習に向けた実習前の客観的臨床能力試験 (OSCE) のあり方を検討するため, 実習前OSCEと実習到達度との関連を明らかにすることを目的とした. 方法 : 理学療法学科4年生79人を対象に, OSCEと知識試験成績, 実習中の経験症例種類数, 実習到達度を分析した. 結果 : OSCE成績は知識試験成績, 経験症例種類数, 実習到達度と有意な相関関係にあった. 特にOSCEの実施技術要素は実習到達度の診療補助および評価分野と有意な相関を認めた. 考察 : OSCEは臨床ではない状況で能力を評価するものであるが, 実習終了時点での臨床実践力と関連性があることが示唆された.
著者
篠崎 真枝 浅川 育世 大橋 ゆかり
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.819-827, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
19

〔目的〕PBLテュートリアル教育の効果と問題点および学生の学習行動の変化を検討した.〔対象と方法〕1~4年生を対象に3年間自由記載のアンケートを実施し,計量テキスト分析した.〔結果〕クラスター分析より,【PBL授業への積極的参加】,【主体的な学習姿勢の修得】などの因子が形成された.学年別コードの分析より,4年次では能動的な姿勢や自己学習のコードの増加を示した.〔結語〕PBLの効果として,主体的学習や自己学習の増加などが確認できた.PBLの経験を積んだ高学年で主体的学習行動への変化が見られ,4年間のカリキュラムを通して学生の学習行動の変化を促すプログラムの構築の必要性が示唆された.
著者
大橋 ゆかり 篠崎 真枝 坂本 由美
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.805-809, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
12
被引用文献数
4 1

[目的]本研究では歩行周期各相の相対的時間比率に着目して脳卒中片麻痺患者の歩行パターンを検討した。[対象]回復期病棟に入院中の脳卒中片麻痺患者18名を対象とした。[方法]歩行時の下肢の動きをビデオ撮影し,両側の立脚開始および遊脚開始の時期を抽出した。これらの時期を重複歩時間で正規化し,歩行周期各相の比率を算出した。歩行パターンは各対象者が歩行可能になってから退院するまでの期間,3週間に1回の頻度で反復測定した。[結果]歩行周期各相の比率はブルンストロームステージIIとIIIの間,およびIVとVの間で有意に異なっていた。[結語]今後は縦断的な分析も加えて,運動麻痺の回復と歩行パターンの変化の関係についてより詳細に検討したい。
著者
篠崎 真枝 大橋 ゆかり
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1982, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】理学療法教育において,臨床実習は,学内教育と臨床現場をつなぐ重要な教育過程である。同時に,これまで学習してきた現象を体験し,理学療法士という専門職の魅力を感じる再考の機会である。本研究では,総合臨床実習後の感想より,学生が臨床実習をどのように振り返り,理学療法士についてどう捉えたかを検討することとした。また,長期臨床実習は1期,2期と実習施設を変えて2回実施する。1期目の経験を踏まえて2期目の実習指導がなされることが多いが,それぞれの実習目標の設定な明確ではない。そのため,本研究では,1期と2期での学生の学びの特徴についても検討し,目標設定に繋げることを目的とした。【方法】4年次に実施する総合臨床実習は7週間を2回行う。1期目,2期目終了後に臨床実習を振り返って内省し,次への自分自身の課題や目標を考える手段として臨床実習感想を作成している。本研究は4年生37名を対象にし,研究目的での感想文の利用に同意を得られたものを分析対象とした。感想文をすべてテキスト形式にデータ化し,語句の整理を行った後,KH Coder.2.Xを用いて分析した。KH Coderは,内容分析の考え方を基盤として開発された計量テキスト分析のためのフリーソフトウェアである。1期と2期での学生の学びの違いについて分析するため,各期終了後の感想でデータ全体に比して高い確率で出現する特徴語を抽出し,語句と語句の結びつきを示す共起ネットワークを作成し,各期の特徴を分析した。さらに,臨床実習の経験により,学生が理学療法士をどのように捉えたかを検討するために,理学療法士を示す語句はすべてPTとしてまとめ,「PT」という語句と結びつきを示す語句について抽出した。【結果】感想から得られたテキストデータ全体では,1195文章数,39514語句数からなり,2319種類の語句が分析対象として抽出された。1期の感想では643文章数,2期は552文章数から成った。各期のテキストデータを特徴づける30語を比較すると,1期は「コミュニケーション」「関係-築き」という情意面に関する語句が抽出された。また,「分かる-変化-気づく」といった長期間の臨床実習で得られる症例の反応の変化に関する語句がみられた。「アプローチ-難しい」「不足-技術」という理学療法介入での困難を示す語句がみられた。さらに,共起ネットワークでは,「不安」「緊張」「反省」という語句も示された。一方,2期では「リハビリテーション」「生活」という広い視点で理学療法に取り組む姿勢を示す語句が抽出された。「PT」を含む文章は全体で110あり,これらと結びつきを示す特徴語を抽出した。今回は理学療法士のイメージを検討するため,分析対象は名詞,形容詞,形容動詞とした。共起関係により結びつきの高い語句として抽出された13語は,「患者」「介入」「生活」「治療」「自分」「病院」「実施」「実習施設」「実習指導者」「理学療法」「重要」「環境」「関係」であった。【考察】臨床実習後の感想を計量テキスト分析したところ,1期と2期で総合臨床実習という経験の振り返りで出現する語句から,学生の捉え方や学びの傾向の違いが示された。1期では経験を次の臨床実習へ繋げるという意味でも「難しい」「不足」「反省」から自らの課題を明確にしようとする傾向がみられた。また,1期でコミュニケーションに関連する語句が抽出され,臨床の場面で患者や実習指導者とのコミュニケーションや関係づくりの難しさや重要性を学んでいた。1期では,初めての長期臨床実習に対し,「不安」「緊張」を示す語句もみられ,学生の不安感の高さが伺えた。コミュニケーションに対しては臨床実習前に状況を想定したシミュレーションなどを通して,準備を行う必要性が示唆された。2期では,2回の臨床実習を総括し,「生活」「リハビリテーション」という広い視点で考える必要性を感じたと考えらえる。理学療法士像については,「患者の生活に介入する」ということと,それを実行するために必要となる「環境」や「関係」の重要性が認識されていたと考える。【理学療法学研究としての意義】本研究より,臨床実習での経験について,学生の振り返りの傾向が明らかとなった。また,各期の学びの特徴も示され,それぞれの実習目標設定や臨床実習前の準備に活用し,今後の臨床実習展開へ繋げることができた。