著者
細矢 治夫 時田 澄男 浅本 紀子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

われわれはこれまでの研究で、n次元の水素原子のシュレーディンガー方程式の解の角度部分の縮重度の一般式を導出し、それがパスカルの三角形を若干修正した非対称パスカル三角形によって容易に表現できることも示した。これは、化学者の帰納的直観に基づいて得られた代数的な処方箋であるが、この波動関数に数学的に厳密な裏付けを行うこと、及び得られた波動関数を動的にグラフィック表示するという二つの目的をもっている。以下に、本研究で得られた結果を列記する。i)アニメーション技法の開発簡単な操作で、原子軌道のn次元のイメージを把握しやすくするアニメーション技術を、市販のQTVRというソフトウエアを利用して実現した。ii)3次元の原子軌道表示の見直し3次元のd軌道も、切断する面の方向と位置を変えることによって、s型、p型、d型等いろいろな対称性をもった断面を得ることができた。iii)4次元の原子軌道の多面的な可視化ii)で得られた可視化の手法を4次元の原子軌道に拡張して適用することによって、4次元の原子軌道関数の極座標表示を直交座標系に変換してから、様々な等値曲面表示を行う手法を開発した。iv)原子軌道の縮重度とパスカルの三角形n次元の原子軌道の縮重度が、変形した非対称パスカルの三角形によって容易に表されることは既に見出しているが、微分方程式の解の代数的な構造の解析から、その数理的意味についての考察を若干進めることができた。
著者
藤原 正彦 小木曽 啓示 堀江 充子 浅本 紀子 榎本 陽子 小山 敏子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

代数多様体上の小さな領域(box)に含まれる、有理点の個数を評価した。exponential sumとこの個数との橋渡しとして、“Fujiwaraの方法"と呼ばれるものがあるが、その方法に依り、これまでより弱い条件下での、整数点の個数の上限を与えた。diagonalなものへの応用もした。ただし、有限体上の評価から、整数点へ移行する際のロスについては、革新的アイデアを得たが、まだ証明を完了していない。引き続き研究してみる予定である。一方、堀江充子は、ハッセのノルム定理を、部分体との関係から研究し、榎本は、有限群のp-ブロックを惰性剰余群の視点から研究し、小木曽は、最止、物理学との接触で興味を呼んでいるCalabi-Yau多様体について、3次元の場合の精細な研究を行なった。
著者
渡辺 千晶 浅本 紀子 桑名 杏奈
雑誌
研究報告アクセシビリティ(AAC) (ISSN:24322431)
巻号頁・発行日
vol.2017-AAC-3, no.15, pp.1-5, 2017-03-03

現在,日本には 393 万 7 千人もの多くの身体障害者がいる.しかし求職中の身体障害者数と実際の被雇用者数には不釣り合いが生じている.身体障害者の就労をもっと増やすためには,彼らの享受する教育をより良いものにすることが必要である.身体障害者の学習には,障害の特性に応じた機能を使用できる教材があれば良いと考える.本研究ではオンライン学習は身体障害者の中でも視覚障害者に対して特に有効であると考え,視覚障害者の学習を保障するアプリケーションを作成したいと考えた.そこで視覚障害者のスクリーンリーダーを利用した数式のオンライン学習を支援するため,数式の TeX コードをコンテンツ形式 MathML に変換するアプリケーションを考案した.
著者
竹尾 富貴子 渡辺 ヒサ子 笠原 勇二 金子 晃 浅本 紀子 吉田 裕亮
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、これまで研究していた線形作用素の理論が、非線形作用素にどこまで発展させることができるかを検討し、更に非線形特有の理論であるカオス・フラクタルの特徴を、作用素論、確率論、ポテンシャル論、微分方程式論など様々な角度から研究することを目的で始めた。その成果として、作用素論の立場からは、セルオーマトンの極限集合をある種の遷移規則について、定常的になるもの、周期的なもの、カオス的なものなどのクラス分けを行い、さらにセルオートマトンの極限集合の存在について作用素に対する不変集合の立場から研究した。その際、線形作用素の場合の規則的な性質が非線形にどのように保存され、また非線形になるとどのように変わるかを注目して極限集合の存在などの研究をした。また、weighted function space L^P_PやC_<0,P>上の半群作用素は、発展方程式の解と関係あるが、その半群のカオス性などはスペクトルの性質から特徴づけられている。本研究ではadmissible weight functionの性質からsupercyclic,hypercyclic又はchaoticになる必要かつ十分条件を求めた。これにより、解がカオス性を持つ発展方程式の性質も求めることができる。この半群は、線形な半群作用素でも、カオス的な振る舞いをすることが分かり、興味深いものである。さらに、確率論、ポテンシャル論、微分方程式論などの立場から線形性と非線形性に着目しながら、発表論文に示しているように種々の結果がでている。これまで得られた結果を更に発展させて、線形理論をどこまで非線形な場合に拡張して美しい理論が得られるか、また半群理論の力学系からカオス・フラクタルについてどのような結果が得られるか、非線形解析学の立場から更に研究していく予定である。