著者
金子 晃 笠原 勇二 竹尾 富貴子 菊地 文雄 山田 道夫 三村 昌泰 成田 希世子 塚田 和美 真島 秀行 松崎 克彦 山本 昌宏 北田 均 バランディン アレクサン 薩摩 順吉
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

偏微分方程式の基礎理論の研究においては,ジェブレイ級の解の接続問題において,接続可能性を方程式の特性帯の重複度とジェブレイ指数に関連付けた新しい結果を得た.解の漸近挙動・スペクトルの研究では,定数係数線型偏微分方程式が劣指数的増大度の解を持つための条件を追求し,リウビユの定理の拡張を得た.また,枯草菌のコロニーパターン形成過程の数理モデルを提出し,計算機によるシミュレーションにより2次元パターンを再現し,それが相転移的メカニズムで起こることを明らかにした.さまざまな逆問題の研究では,双曲型方程式に対する逆問題の一意性を係数の正則性を弱めた形で導き,逆問題のリプシッツ安定性を最も望ましい形で示した.また,密度一定の2次元図形について,2方向からの投影データによる再構成問題の一意性が成り立つ場合に,その離散化版の実用的な再構成アルゴリズムを与え,安定なことを示した.一意性が成り立たない場合に適当な重み函数を見出してそれを最大にする解を計算機により探索し,非常に面白いパターンが得られることを発見した.偏微分方程式の数値解析的研究では,中厚平板のモデルであるライスナー-ミンドラン平板に対して新しい安定化混合型4辺形有限要素を開発し,ロッキングを起こさずに薄板モデルに漸近することを検証した.また,乱流のシェルモデルにおいて,相似則を満たすカオス解を追跡しリヤプノフスペクトルを得,それが波数空間において特徴的な波数の周辺にのみ大きな値を持つことを見出した.このアトラクタ次元が大きな極限での漸近表式を導き,数値計算との良い一致を検証した.更にスケール変換に対して不変な積分作用素に適合する双直交ウェーブレットを構成し,応用を与えた.また,修正8節点セレンディピテイ要素が3次の補間誤差を持つことを示し,具体的な問題に対する有効性を確認した.
著者
竹尾 富貴子 渡辺 ヒサ子 笠原 勇二 金子 晃 浅本 紀子 吉田 裕亮
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、これまで研究していた線形作用素の理論が、非線形作用素にどこまで発展させることができるかを検討し、更に非線形特有の理論であるカオス・フラクタルの特徴を、作用素論、確率論、ポテンシャル論、微分方程式論など様々な角度から研究することを目的で始めた。その成果として、作用素論の立場からは、セルオーマトンの極限集合をある種の遷移規則について、定常的になるもの、周期的なもの、カオス的なものなどのクラス分けを行い、さらにセルオートマトンの極限集合の存在について作用素に対する不変集合の立場から研究した。その際、線形作用素の場合の規則的な性質が非線形にどのように保存され、また非線形になるとどのように変わるかを注目して極限集合の存在などの研究をした。また、weighted function space L^P_PやC_<0,P>上の半群作用素は、発展方程式の解と関係あるが、その半群のカオス性などはスペクトルの性質から特徴づけられている。本研究ではadmissible weight functionの性質からsupercyclic,hypercyclic又はchaoticになる必要かつ十分条件を求めた。これにより、解がカオス性を持つ発展方程式の性質も求めることができる。この半群は、線形な半群作用素でも、カオス的な振る舞いをすることが分かり、興味深いものである。さらに、確率論、ポテンシャル論、微分方程式論などの立場から線形性と非線形性に着目しながら、発表論文に示しているように種々の結果がでている。これまで得られた結果を更に発展させて、線形理論をどこまで非線形な場合に拡張して美しい理論が得られるか、また半群理論の力学系からカオス・フラクタルについてどのような結果が得られるか、非線形解析学の立場から更に研究していく予定である。