著者
浅野 敏彦 湯浅 一博 欅田 清彦 寺地 務 光岡 知足
出版者
財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
ビフィズス (ISSN:09142509)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.29-35, 1994 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
1

グルコン酸の各種腸内細菌によるin vitroでの利用性, およびヒトに摂取させた時の糞便中の腸内細菌叢に与える影響について検討した.グルコン酸はBifidobacterium属の中ではB. adolescentisgroup に選択的に利用され, Clostridium clostridioforme, C. innocuum, Propionibacterium acnes, Megasphaera elsdenii, Enterococcus faecium, Klebsiella pneumoniaeなど一部の菌種にも利用されたが, Bocteroidaceaeをはじめ多くの菌種には利用されなかった.健康成人男子10人に1日9gのグルコノデルタラクトン (グルコン酸の無水物) を摂取させた結果, Bifidobacteriumが有意 (p/I<0.001) に増加し, Costridium perfringensは減少した.しかし, Enterobacteriaceaeの菌数には影響しなかった.1日3gの低用量試験においてもBifidobacteriumは有意 (p<0.05) に増加した.
著者
浅野 敏彦 湯浅 一博 近藤 亮子 伊勢 直躬 竹縄 誠之 飯野 久和
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-9, 1997 (Released:2010-06-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

便秘傾向の成人女性を対象にしてグルコン酸カルシウム (GCA) の便性および菌叢に及ぼす影響について検討した.GCA摂取期間はGCAを含有するオレンジジュースを飲用し, 対照期間にはGCAを含有しない同じ組成のジュースを飲用させた.最初の試験として, GCAを1日6.0g (グルコン酸の重量として) 摂取した場合の糞便内菌叢, 有機酸および腐敗物質の分析を9名で, 排便に関するアンケート調査を107名で実施した.その結果, GCA摂取期間中のBifidobacteriumの菌数および排便回数は有意に増加したが, 水分含量, pH, 有機酸, 腐敗物質では顕著な変化は見られなかった.次に最小有効摂取量を求めるため, 糞便内菌叢については1日の摂取量を1.5g, 2.0g, 3.0gの順に設定して15名で, 排便に関するアンケート調査は1.5gおよび3.0gの順に摂取する群と, 2.0gおよび4.0gの順に摂取する群の各37名の2群に分けて実施した.その結果, 2.0g摂取以上でBifidobacteriumの菌数の有意な増加が見られ, 1.5g以上の摂取で排便回数は有意に増加し, 便の形状, 色でも一部で有意差が見られた.
著者
泉福 英信 浅野 敏彦 村田 貴俊 花田 信弘
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、ヒト型モノクローナル抗体を利用した新しい口腔バイオフィルム感染症予防方法の確立を行った。ヒト型モノクローナル抗体の作製は、PAc(361-377)ペプチドを利用して行った。このペプチドは、S.mutansの歯表面への付着阻害抗体の認識するB細胞エピトープとT細胞エピトープを有する。実際にこのペプチドがヒトにおいて有効に免疫原として作用するか、唾液のペプチドIgA抗体量とS.mutans量との相関関係を検討した。その結果、抗体価の高い唾液を有するヒトは、S.mutans量も低下していることが明かとなった。またDRB1^*1501やDRB1^*0406などを含む10種類のHLA-DR遺伝子タイプを有する被験者においてその高い唾液抗体誘導が認められた。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をNOD-scidマウスに移植し、このペプチドを接種して、ヒト特異ペプチド抗体を誘導できるか検討を行うと、すべての遺伝子タイプのPBMC移植において、PAc(361-386)ペプチドIgG抗体を誘導できることを明かにした。これらの結果から、PAc(361-386)ペプチドはヒトへの接種によりPAc(361-386)ペプチドIgA抗体やIgG抗体を誘導できる抗原であることが確認できた。よって、この抗原を利用して作製されたヒト型モノクローナル抗体を用いれば、有効な齲蝕予防方法が確立して行くことができる。このPAc(361-377)ペプチドを免疫原として、10種類のモノクローナル抗体を得た。それら抗体のうちKH3,KH5,SH2,SH3は、S.sobrinusとS.mutansのみに反応する事が認められた。これらの抗体SH2,SH3,KH5は、S.mutansの歯表面の付着においてPBSで処理したラットに比べ60%以上の阻害効果が認められた。またこれらのモノクローナル抗体は、S.mutansと唾液成分との結合をBIAcore in vitro実験においても70%以上の阻害することが認められた。今回明かとなったペプチド抗原で誘導されたヒト型モノクローナル抗体をこの3DSのような口腔バイオフィルム除去法を併用していけば、さらに長期間効果を期待できるう蝕予防が実現化していくと考えられる。