著者
浜崎 健児
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.35-40, 1999-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
21
被引用文献数
2 4

1. 水田における栽培管理の違いがアメリカカブトエビの発生に与える影響を明らかにするため,広島県下3地域の慣行農法水田と有機農法水田で,アメリカカブトエビの発生を調査した.慣行農法水田では8筆中5筆でアメリカカブトエビが発生したのに対し,有機農法水田では6筆すべてで発生しない現象が観察された.2. 東広島市吉川町の両農法水田で,アメリカカブトエビとその捕食者の一つと考えられる水生昆虫類の発生を調査したところ,両者の発生経過には関連性が認められなかった.よって,水生昆虫類は有機農法水田でアメリカカブトエビが発生しない要因ではないと考えられた.3. 東広島市吉川町の両農法水田から土壌を採取して人工水田を作製し,アメリカカブトエビ幼生を接種する実験を行った.慣行土壌水槽では,接種6日目以降,生存率が50%前後で推移したのに対し,有機土壌水槽では接種6日目までにすべての個体が死亡した.有機土壌水槽で測定された田面水のpHは,慣行土壌水槽に比べて明らかに低く,現地水田で測定された結果と同様の傾向を示したことから,田面水のpHは,有機農法水田でアメリカカブトエビ幼生が生存できない要因の一つとして関与することが示唆された.
著者
田中 幸一 浜崎 健児 松本 公吉 鎌田 輝志
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.189-199, 2013-10-05 (Released:2018-09-21)

鯉淵学園農業栄養専門学校構内(茨城県水戸市)において2004年に,水生生物の生息地を提供することを目的として,水路および池から成る面積1,500m^2のビオトープが造成された.このビオトープの生物の生息地としての機能を評価するため,2006〜2011年に,トンボ目成虫および水面・水中の水生昆虫(コウチュウ目およびカメムシ目,トンボ目幼虫)の調査を行った.トンボ目成虫は合計9科31種,水面・水中の水生昆虫は少なくとも41種が確認され,本ビオトープが水生昆虫の生息地として好適な環境であると考えられた.トンボ目成虫,水面・水中の水生昆虫の種数は,2007年までは増加したが,2008年には減少した.この減少の原因として,池や水路の底に泥が堆積し水生昆虫にとっての生息環境が悪化したことが考えられたため,浚渫を行った.浚渫後には,トンボ目成虫および水生昆虫の種数は回復した.これらの結果から,ビオトープ造成後の水生昆虫種数の変化とその要因およびビオトープの管理について考察した.
著者
浜崎 健児
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.35-40, 1999-02-25
参考文献数
21
被引用文献数
5 4

1. 水田における栽培管理の違いがアメリカカブトエビの発生に与える影響を明らかにするため,広島県下3地域の慣行農法水田と有機農法水田で,アメリカカブトエビの発生を調査した.慣行農法水田では8筆中5筆でアメリカカブトエビが発生したのに対し,有機農法水田では6筆すべてで発生しない現象が観察された.<br>2. 東広島市吉川町の両農法水田で,アメリカカブトエビとその捕食者の一つと考えられる水生昆虫類の発生を調査したところ,両者の発生経過には関連性が認められなかった.よって,水生昆虫類は有機農法水田でアメリカカブトエビが発生しない要因ではないと考えられた.<br>3. 東広島市吉川町の両農法水田から土壌を採取して人工水田を作製し,アメリカカブトエビ幼生を接種する実験を行った.慣行土壌水槽では,接種6日目以降,生存率が50%前後で推移したのに対し,有機土壌水槽では接種6日目までにすべての個体が死亡した.有機土壌水槽で測定された田面水のpHは,慣行土壌水槽に比べて明らかに低く,現地水田で測定された結果と同様の傾向を示したことから,田面水のpHは,有機農法水田でアメリカカブトエビ幼生が生存できない要因の一つとして関与することが示唆された.
著者
熊木 雅代 山田 誠 浜崎 健児 高村 仁知 高田 将志 和田 恵次
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-17, 2015 (Released:2015-04-08)
参考文献数
30

和歌山県における面源汚染の実態を広域的に把握するため,土地利用と河川水質の関連性について,県内の18河川を対象に定量評価した.具体的には,河川水中の主要な溶存成分を測定し,GIS (Geographical information system)データを用いて算出した流域の土地利用面積割合との相関を調べた.その結果,北部・中央部(以降,北中部と記す)の河川で面源汚染が進んでいることが明らかとなった.これは,下水道普及率の低い和歌山県においては,住宅地が多い北中部で,面源負荷が多いためと考えられる.また,特に中部河川では,果樹園に由来する面源負荷も大きく,栽培する果樹の種類による施肥量の違いや,元々の土壌生産性,降水量などの自然条件の違いが影響しているとみられる.一方,南部の河川では,流域の大部分が樹林地に覆われ,人為的な環境負荷が少ないため,面源汚染の影響はほとんど見られなかった.