著者
海老沢 功 本間 れい子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.701-707, 1985-07-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
6
被引用文献数
1

日本に於ける破傷風患者は減少し過去の疾患と考えられやすい. 日本の破傷風の実態を把握するために人口動態統計に基づく破傷風死亡率及び自験例を中心に破傷風致死率について検討した. 1947~1982年までの破傷風死亡総数は21,916人であり1947年の破傷風死亡率は人口10万対2.84であったが1955年に10万対0.98, 1982年に10万対0.02と著しく減少した. 新生児破傷風死亡率は1947年に生産児10万対36.1であったが1966年ごろより減少の速度をはやめ1979年には死者0となった. 破傷風死亡者の年齢別分布の推移をみると1955年ごろまでは新生児破傷風が40%以上をしめ次いで0~9歳の患者が20%近くをしめており若年患者が多く高齢者の割合が少なかった. 1966年ごろより著しく減少した新生児破傷風にかわって60歳以上の患者の増加がめだち破傷風患者の高齢化現象が認められた. この原因として施設内出生率の増加に伴う新生児破傷風の減少, DTP三種混合ワクチン普及による若年層患者の減少及び平均寿命の延びに伴う高齢患者の相対的増加等が考えられる. 自験例593人について破傷風の致死率の変遷を検討したところ1970年までは40%以上の患者が死亡したが1971年以後の致死率の低下はめざましく20%以下となった. 特にOnsettime48時間以内の重症例における1976年以後の致死率の低下が著しく, 集中治療の普及と進歩によるものと考えられた.
著者
小森谷 武美 海老沢 功
出版者
日本熱帯医学会
雑誌
熱帯 (ISSN:2186179X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3-4, pp.147-152, 1973-03-31 (Released:2011-05-20)
参考文献数
34
著者
海老沢 功
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.351-357, 2007-09-10

4種類あるマラリア原虫のうち, 生命に危険のある熱帯熱マラリア原虫は世界中に広く分布し, かつ最も代表的な抗マラリア薬であるクロロキン, メフロキン. サルファドキシン+ピリメタミンの合剤ファンシダール<SUP>®</SUP>などに耐性を示し, マラリア研究者を悩ませてきた。これに対して中国の古墳, 馬王堆から発掘された古文書の解読により発見された漢方薬青高素 (チンハオス, アーテミシニン) の分析, 合成によって開発されたアーテメータ, アーテエータ, アーテスネイトなどを薬剤耐性熱帯熱マラリアの流行地, タイ, ミャンマー, アフリカなどで単独で使用した成績をまず紹介した。いずれも即効性があり熱帯熱マラリア原虫の速やかな消失が認められたが, 単独使用では数%の再燃例が認められることを確認した。<BR>次の段階で上記薬剤に補強的に作用するメフロキンとの併用療法あるいは補助的に作用するアモダイアキン, アトヴァコン, プログアニル, トリメトプリム, ルメファントリン, ダプソンなどとの併用療法あるいは合剤, 座薬の開発の現状を分析・報告した。患者が再感染しやすい環境にあり,「再燃」と分類される症例が必ず数%出てくる現状では, 新薬の効力が持続することを望んで止まない。<BR>日本国内でもアーテメータ+ルメファントリンの合剤 (リアメット<SUP>®</SUP>, コアルテム<SUP>®</SUP>) がマラリア研究班により輸入・保管されている。
著者
海老沢 功 高柳 満喜子 倉田 真理子 城川 美佳
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.277-282, 1986-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
5
被引用文献数
1

1) 破傷風菌は川や池の湿った岸辺, 田や畑, 民家の庭から容易に分離される.種々の場所から集めた土100検体のうち破傷風菌が37株分離され, さらに14検体から破傷風毒素が証明された.その内乾燥した土1mgから10株の破傷風菌が分離された.0.1mgの土から破傷風毒素が証明されたものもある.ここで外傷を受けた患者は外科的処置を受けた後に破傷風にかかった.2) 破傷風菌は同一場所に何時も同一量の菌数を保っているものではない.また地表の方が地下深い所よりも破傷風菌は多い.3) 破傷風患者が発生した家の庭で, その患者が受傷後2年7ヵ月たってから, 50cmおきに採取した土10検体からは全て破傷風菌が分離された.