著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.25-31, 2017 (Released:2018-07-25)
参考文献数
11

オオコノハズクOtus lempiji の齢の識別について論じた.栃木県内での鳥類標識調査で捕獲された個体の写真を用いて羽衣を比較した結果,風切や尾羽,初列大雨覆の色彩と長さなどで齢を識別できる可能性が高いことがわかった.すなわち,風切や尾羽は,幼鳥では幅が狭く先細りする形状であるのに対し,成鳥では幅が広く先端は丸い形状であった.また,第一回冬羽の幼鳥では初列大雨覆が淡色で,次列大雨覆の先端より短いのに対し,成鳥では暗色で,次列大雨覆の先端と同程度までの長さがあった.幼鳥は,秋にこれらの羽を換羽しないため,生まれた翌年の繁殖期までは齢の識別が可能だと考えられた.
著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.31-37, 2004 (Released:2015-08-20)
参考文献数
5

標識放鳥,死体拾得,保護飼育されたヨタカ6個体をもとに,春季における齢の識別点と換羽様式について検討した.春季には成鳥も幼鳥も同様に,初列大雨覆と尾羽に新羽と旧羽が混在するが,幼鳥では旧羽が幼羽であり,旧羽も成鳥羽である成鳥と容易に識別できることがわかった.また,秋と春の換羽状況から,本種の換羽様式は,繁殖地と越冬地で風切と尾羽の一部ずつを換羽する,変則的なものであると考えられる.
著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1_2, pp.50-56, 2010 (Released:2012-09-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

カムチャツカで実施された日露共同標識調査で捕獲されたアカマシコについて,亜種アカマシコの換羽様式と,雌型個体の羽色における二型について論じた.ヨーロッパの基亜種では,成鳥は繁殖地では換羽せず,越冬地で完全換羽をおこなう.しかし,カムチャツカで繁殖する亜種アカマシコの成鳥には,基亜種同様に繁殖地では換羽せずに渡りを開始する個体と,繁殖地で完全換羽する個体がいることがわかった.また,雌と同じ羽色の成鳥と幼鳥には,風切や尾羽などの羽縁の色に,オリーブ色と赤色の二型があることがわかった.このうち,赤色型の個体は,雄・幼鳥または発色の悪い雄・成鳥の可能性がありうる.
著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1_2, pp.57-63, 2010 (Released:2012-09-01)
参考文献数
8

サメビタキMuscicapa sibirica,エゾビタキM. griseisticta,コサメビタキM. dauuricaの幼羽について,既存の情報を整理し,観察結果を加えて識別点をまとめた.これら3種の幼羽では,頭部から背にかけての斑の色と形,大きさが特徴的で,種の識別に役立つ.第1回冬羽に換羽した個体でも,これらの幼羽の一部が残っていれば識別に役立つと考えられる.
著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.22-28, 2016 (Released:2016-10-05)
参考文献数
19

アオバズクNinox scutulataの齢の識別について論じた.標識調査で捕獲された個体と標本の写真,文献の生態写真を用いて比較した結果,幼鳥の尾羽は,やや先細りする形状で,先端の淡色部が内側の淡色帯とほぼ同じ色で太いのに対し,成鳥では先細りしない丸い形状で,先端の淡色部が内側の淡色帯より白くて細かった.幼鳥は秋に尾羽を換羽しないため,生まれた翌年に尾羽を換羽するまでは尾羽の特徴で齢の識別が可能である.
著者
深井 宣男
出版者
日本鳥類標識協会
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-12, 2000 (Released:2015-08-20)
参考文献数
9

栃木県渡良瀬遊水地での秋の標識調査において,1994年から2000年までの7年間で,ヨタカが51羽標識放鳥された.そのうちの31羽について写真撮影を行って比較資料とし,齢の識別点を検討した.齢の確定した再捕獲個体と幼鳥の写真,死体,換羽状態から推定される齢をもとに,各部の羽色を比較した結果,初列雨覆,大雨覆,尾羽,換羽状態に注目すれば,本種の秋における齢の識別は可能であることがわかった.また,本種の秋季における換羽様式を推定した.成鳥は繁殖地で完全換羽を開始し,外側初列風切と次列風切の一部,尾羽の一部を換羽した後,越冬地への渡りを行うが,多くの幼鳥は,繁殖地では体羽と雨覆の一部を換羽するのみで,越冬地への渡りを行うものと考えられる.
著者
深井 宣男 須川 恒 千葉 晃 尾崎 清明
出版者
The Japanese Bird Banding Association
雑誌
日本鳥類標識協会誌 (ISSN:09144307)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.8-36, 2010
被引用文献数
2

1998~2000年に実施された日露共同標識調査の結果から,優占種,日周変化,再捕獲記録,主な種の渡り時期について解析した.3年間で合計46種5,278羽が標識放鳥され,21種361羽が再捕獲された.優占種は,カシラダカ,コガラ,メボソムシクイ,オジロビタキ,オオジュリンであった.日本での捕獲数との比較から,オジロビタキとアカマシコはカムチャツカ半島からオホーツク海を越えて大陸沿いに南下するものと推定される.種別の日周変化では,シマゴマなどの朝型,マミチャジナイの朝夕型,オオジュリンなどの午前型,オジロビタキなどの平均型の4つに類別された.移動後回収の記録はオオジュリンで18例あり,日本での回収地および放鳥地は宮城県から宮崎県まで広範囲に及んだことから,日本各地で越冬するオオジュリンにとって,カムチャツカ半島が重要な繁殖地の一つであることが再確認された.渡りの時期には,換羽様式などさまざまな要因が関係していると考えられる.成鳥が繁殖地で完全換羽をおこなうオジロビタキ,カシラダカ,オオジュリンでは幼鳥が先に渡り,越冬地で換羽をおこなうアカマシコ,メボソムシクイでは成鳥が先に渡ることがわかった.体重や皮下脂肪量との関係では,成鳥の渡りのピークは脂肪量の増加とほぼ一致していたが,幼鳥の体重と脂肪量の増加はピークから10日ほど遅れていた.成鳥の渡り期間に比べ幼鳥の渡りの期間が長いのは,体重や脂肪量の増加が渡りのピークとずれていることが関係している可能性が考えられた.