著者
深水 圭 酒井 和子 甲斐田 裕介 大塚 紹 和田 芳文 杉 健三 奥田 誠也
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.367-374, 2014 (Released:2014-06-28)
参考文献数
13
被引用文献数
3

血液透析 (HD) 患者におけるカルニチン欠乏は, 貧血や低栄養を惹起しQOLを低下させる. 最近わが国において透析患者に対するL-カルニチン経口・静注治療が可能となり, その効果が期待されている. 今回, HD患者に対する6か月間のL-カルニチン900mg経口投与が貧血や栄養状態にいかに影響するかについて, さらに500mg, 1,000mg静注への切り替えによりカルニチン濃度がどのように推移するかについて観察した. 総カルニチン50μmol/L未満の102人のHD患者を単純無作為化によりコントロール群, L-カルニチン群に分け, 6か月後の時点で観察し得た患者を比較検討した. カルニチン投与群 (n=23) では, コントロール群 (n=24) と比較しすべてのカルニチン濃度は有意に上昇し (p<0.001), アシルカルニチン/遊離カルニチン (A/F) 比は低下した (p=0.006). コントロール群と比較しL-カルニチン群ではHt (p=0.02), 総コレステロール (p=0.002), 中性脂肪 (p=0.022) が上昇し, AST (p=0.008), ALT (p=0.013) は低下した. 経口900mgから静注1,000mg (n=8) への切り替えはHD前後, 静注10分後においてすべてのカルニチン濃度を上昇させたが, 500mg (n=6) への切り替えは経口投与と同等であった. 500mgと比較すると1,000mgへの切り替えはHD前後ともに遊離カルニチンを上昇させたが有意差は認めなかった. カルニチン欠乏HD患者に対するL-カルニチン900mg経口投与は貧血や栄養状態, 肝機能を改善しうる可能性を見出した. カルニチン濃度, 患者アドヒアランス, 医療経済効果, トリメチルアミン-Nオキシド産生等を考慮すると静注が推奨されるが, 今後はどちらの投与方法が透析患者に有用であるかを検証するための比較試験が必要である.
著者
糖尿病性腎症合同委員会・糖尿病性腎症病期分類改訂ワーキンググループ 馬場園 哲也 金崎 啓造 宇都宮 一典 古家 大祐 綿田 裕孝 繪本 正憲 川浪 大治 深水 圭 久米 真司 鈴木 芳樹 和田 淳 和田 隆志 岡田 浩一 成田 一衛 小岩 文彦 阿部 雅紀 土谷 健 加藤 明彦 市川 和子 北谷 直美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.797-805, 2023-11-30 (Released:2023-11-30)
参考文献数
20

わが国では2014年に改訂された糖尿病性腎症病期分類が広く用いられてきた.最近では,高齢化や肥満者の増加,糖尿病や高血圧症に対する新規治療薬の開発などを背景に,糖尿病患者に合併した腎臓病が多様化していることが指摘されている.そこで糖尿病性腎症合同委員会では,腎症病期分類を再度改訂する必要性を検討した.現時点では,アルブミン尿や推算糸球体濾過量に基づく2014年分類を変更する必要性を示唆する新たなエビデンスが発出されていないことから,今回の改訂では2014年分類の基本的な枠組みは変更しないこととした.ただし,日本腎臓学会のCKD重症度分類や国際的な表記との整合性を重視し,病期名を「正常アルブミン尿期(第1期)」,「微量アルブミン尿期(第2期)」,「顕性アルブミン尿期(第3期)」,「GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)」,「腎代替療法期(第5期)」へ変更した.
著者
中島 惠仁 小池 清美 深水 圭 楠本 拓生 玻座真 琢磨 松元 貴史 上田 誠二 奥田 誠也
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.493-499, 2013-05-28 (Released:2013-06-08)
参考文献数
32

ロサルタン,フロセミドによる中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)を発症し救命しえた1例を経験した.症例は76歳,男性.慢性腎不全と高血圧の教育入院中にTENを発症した.原因薬剤中止後も改善せず,ステロイド内服とステロイド外用薬に加え,ステロイドパルス療法,血漿交換を施行し,口腔内膿瘍合併に対しヒト免疫グロブリン大量静注療法(Intravenous immunoglobulin:IVIg)を併用した.リンパ球幼弱化試験(DLST)陽性と臨床経過よりロサルタン,フロセミドを原因薬剤と判断した.TENの原因薬剤としてロサルタンは本邦初,さらにフロセミドもまれであるため報告する.腎不全患者で薬疹が疑われた場合は速やかに被疑薬を中止し,薬疹が改善しない場合は重症薬疹を考え迅速に対症することが重要と考えられた.