著者
下条 文武 成田 一衛
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.1310-1315, 2006-07-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

平成16年9月中旬以後, 新潟県北部の血液透析患者に原因不明の急性脳症が多発し, 死亡例も発生した. 私どもは, 関連病院の透析担当主治医から, 発症者のなかにスギヒラタケ摂取後に発症した症例があるとの情報を得たので, この事実に注目し, スギヒラタケ摂取との関連性について全国の日本腎臓学会員に情報提供を呼びかけた. その結果, スギヒラタケ摂取と急性脳症の発症に強い関連がある32症例の情報を得, 致死率が約30%に及ぶ重篤な臨床経過をとる脳症であることがわかった.
著者
清水 夏恵 村松 芳幸 成田 一衛
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.29-35, 2013-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1

糖尿病患者では高血糖や神経障害などが不眠を認める原因と考えられており,一方で睡眠時間の低下や質の低下が糖尿病を引き起こす可能性も指摘され,相互に影響を及ぼしあっていると考えられている.また睡眠時無呼吸症候群や,抑うつや不安など精神症状を合併しやすいため睡眠障害をきたしやすいとも指摘されている.糖尿病患者の多くは矢感情症,失体感症の存在が明らかであることも指摘されており,不眠を自覚せず訴えがないため医療者側は治療対象にしていない場合もあると考えられる.糖尿病患者の睡眠障害を医療者側が意識的に診断し,良好な血糖コントロール管理に加え併存する症状に対しても,心身医学的な視点をもって適切な治療を行うことが重要である.
著者
早川 兼司 三星 知 須藤 晴美 忰田 亮平 成田 一衛
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.173-177, 2022 (Released:2022-08-13)
参考文献数
8

CKD患者に対する腎排泄型薬剤の処方は過量投与による副作用リスクが高く、処方監査時には特に注意を要する。病院と診療所では腎機能に対して過量投与が疑われる薬剤の種類が異なる可能性があり、その特徴について調査した。2018年4月から5月に入院した1,630名の中から、除外基準に該当しなかった1,049名の持参薬について、改定45版腎機能別薬剤投与方法一覧に基づき、推奨される投与量よりも過量だった場合に過量投与疑いありと定義した。過量投与疑いがあった患者は66名(6.3%)、過量投与疑いのあった薬剤数は75剤であった。過量投与疑いあり群はCKDステージ2–3群では病院が34薬剤(58%)、CKDステージ4–5群では診療所が10薬剤(63%)を占め、CKDの進行に伴い診療所での過量投与が増加する傾向を認めた。薬効別ではH2遮断薬が11件、糖尿病治療薬が8件、抗アレルギー薬が8件、高尿酸血症治療薬が8件、抗菌薬が7件と過量投与疑いの件数が多かった。糖尿病治療薬の過量投与疑いは病院が有意に多く(P = 0.03)、抗精神病薬の過量投与疑いは診療所が有意に多かった(P = 0.03)。抗菌薬の過量投与疑いはCKDステージ2–3群において診療所が多い傾向を認めた(P = 0.17)。この結果は処方元医療機関の違いにより、腎機能低下時に注意すべき薬剤が異なる可能性を示した。これらを把握することで病院における持参薬の鑑別や保険薬局における処方監査の質を向上させると考えられる。また、過量投与疑いのあった薬剤は、日常的に処方されるものが多かったことから、処方監査時は薬剤の種類を限定せず腎機能を把握しておく必要がある。CKDシールや、院外処方箋への検査値印字、病院と保険薬局の情報共有による薬薬連携により、腎機能の指標となるデータを処方元医療機関もしくは患者本人から確認し調剤を行うことが、薬剤師業務の質を向上させCKD患者における安全な薬物療法を向上できる可能性がある。
著者
糖尿病性腎症合同委員会・糖尿病性腎症病期分類改訂ワーキンググループ 馬場園 哲也 金崎 啓造 宇都宮 一典 古家 大祐 綿田 裕孝 繪本 正憲 川浪 大治 深水 圭 久米 真司 鈴木 芳樹 和田 淳 和田 隆志 岡田 浩一 成田 一衛 小岩 文彦 阿部 雅紀 土谷 健 加藤 明彦 市川 和子 北谷 直美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.797-805, 2023-11-30 (Released:2023-11-30)
参考文献数
20

わが国では2014年に改訂された糖尿病性腎症病期分類が広く用いられてきた.最近では,高齢化や肥満者の増加,糖尿病や高血圧症に対する新規治療薬の開発などを背景に,糖尿病患者に合併した腎臓病が多様化していることが指摘されている.そこで糖尿病性腎症合同委員会では,腎症病期分類を再度改訂する必要性を検討した.現時点では,アルブミン尿や推算糸球体濾過量に基づく2014年分類を変更する必要性を示唆する新たなエビデンスが発出されていないことから,今回の改訂では2014年分類の基本的な枠組みは変更しないこととした.ただし,日本腎臓学会のCKD重症度分類や国際的な表記との整合性を重視し,病期名を「正常アルブミン尿期(第1期)」,「微量アルブミン尿期(第2期)」,「顕性アルブミン尿期(第3期)」,「GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)」,「腎代替療法期(第5期)」へ変更した.

2 0 0 0 OA IV.AKIと薬剤

著者
小林 大介 成田 一衛
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.922-927, 2021-05-10 (Released:2022-05-10)
参考文献数
10

薬剤性腎障害(drug-induced kidney injury:DKI)とは,「薬剤の投与により,新たに発症した腎障害,あるいは既存の腎障害のさらなる悪化を認める場合」と定義される.臨床現場では,治療目的で投与した薬剤がしばしば腎障害を引き起こす.薬剤により,障害のメカニズムや発症様式にある程度のパターンがあり,そのパターンを把握することは有益である.
著者
穂苅 諭 中山 秀章 梶原 大季 鈴木 涼子 大嶋 康義 高田 俊範 鈴木 栄一 成田 一衛
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-34, 2011-06-30 (Released:2016-07-05)
参考文献数
14

目的:呼吸機能低下患者での術後ハイリスク群を検討した.対象:術前呼吸機能検査で1秒量<1.2 Lを満たした80例.方法:術後呼吸不全の発生について診療録より後ろ向きに調査した.結果:7例で合併症が発生した.多因子より算出した呼吸不全リスク指数は合併症群で有意に高値であった.また,同リスク指数と合併症発生頻度の間に有意な傾向性が認められた.結論:呼吸不全リスク指数は術後呼吸不全の検出に有用である.
著者
成田 一衛 瀬賀 弘行 下条 文武 荒川 正昭
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.1317-1321, 1990

著しい高ナトリウム (Na) 血症によるrhabdomyolysisから急性腎不全を発症し, 血液透析により改善した1例を経験したので, 若干の考察を加えて報告する.<br>症例は58歳男性. 2度の脳出血の既往がある. 昭和63年8月中旬頃から食欲不振を訴え, 肺炎と消化管出血を合併し, 9月17日無尿となって入院した. 血清Naが191mEq/<i>l</i>と著しい高値を示し, CPK, LDH, GOT, アルドラーゼ, ミオグロビン等の骨格筋由来の酵素および蛋白も上昇し, また血漿浸透圧は461mOsm/kgH<sub>2</sub>O, 尿浸透圧も462mOsm/kgH<sub>2</sub>Oと上昇していた. 高張性脱水による高Na血症とrhabdomyolysisによるミオグロビン尿性急性腎不全と診断し, 高Na透析を連日短時間行った. 入院4日日, 3回の透析後から血清Na濃度は正常化し, 計12回の透析治療の後, 離脱し, 11月1日退院した.<br>高Na血症によるミオグロビン尿性急性腎不全の報告は稀で, 本例は7例目である. これらの報告例の基礎疾患をみると, 明らかな内分泌異常を有していたのは尿崩症の1例のみで, 他は高度の高張性脱水が持続したことが高Na血症の原因と考えられた. いずれも血清Na 180mEq/<i>l</i>以上の著しい高Na血症を呈していたが, 予後は全例良好であった. 一般に, 急性の高Na血症の予後は不良で, 165mEq/<i>l</i>を超える場合の致死率は75%といわれており, 骨格筋の壊死を起こすほどの高度の高Na血症は, 徐々に進行する高張性脱水が原因であることが多いと考えられた.<br>治療については, 血液透析が有効であるが, 急激な血漿浸透圧の低下による脳浮腫を防ぐために短時間の高Na透析を頻回に行うことが必要であると考えられた.
著者
榛沢 和彦 林 純一 大橋 さとみ 本多 忠幸 遠藤 祐 坂井 邦彦 井口 清太郎 中山 秀章 田中 純太 成田 一衛 下条 文武 鈴木 和夫 斉藤 六温 土田 桂蔵 北島 勲
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.14-20, 2006-01-10
被引用文献数
4

新潟中越地震の車中泊では地震による心的ストレス,窮屈な下肢屈曲姿勢,そして脱水により下肢深部静脈に血栓が発生しエコノミークラス症候群(肺塞栓症)が多発した.10/31,11/3,11/7には厚生連佐久総合病院の診療チームと計69名(男性4名)にポータブルエコーで,11/15から12/20までは厚生連魚沼病院に通常のエコー装置を設置しマスコミを通じて呼びかけ82名(男性13名)に下肢静脈エコー検査施行した.2005/2/28から3/31まで再度魚沼病院で検査した方を対象に再度下肢静脈エコーを行った.10/31-11/7に検査した69名中車中泊経験者は60名で,8名にヒラメ静脈浮遊血栓(そのうち1名はCTで肺塞栓症を認めた),14名に壁在血栓を認め,血栓陽性例は全員車中3泊以上であった.11/15-12/20の検査では車中泊は66名(6名は30日以上連泊),そのうち60名が下肢の疼痛や腫脹を訴えヒラメ静脈の充満血栓1名,9名で壁在血栓を含めた血栓を認め,血栓陽性例は全員震災直後から車中4泊以上であった.血栓陽性率は震災後からの経過時間とともに低下し12/20では10%であったが2/28から3/31の診療結果では新たな血栓も認め血栓陽性率は21.9%と上昇を認めた.11/7までの下肢静脈エコーにおける車中泊者のヒラメ筋最大静脈径は8.8±2.5mm(車中泊経験の無いヒラメ筋最大静脈径7.1±2.0mm)より有意に大(n=55,p<0.05),また血栓を認めた被災者のヒラメ静脈最大径10.0±2.6mmで血栓の無い被災者(7.5±4.4mm)より有意に大であった(n=67,p<0.0001).本診療調査により大災害時における車中泊は急性期に肺・静脈血栓塞栓症を起こすだけでなく,静脈の損傷により慢性期に反復性の血栓を生じて血栓後症候群になる危険性も大であることが示唆された.
著者
下条 文武 成田 一衛
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.1310-1315, 2006-07-10
被引用文献数
1

平成16年9月中旬以後, 新潟県北部の血液透析患者に原因不明の急性脳症が多発し, 死亡例も発生した. 私どもは, 関連病院の透析担当主治医から, 発症者のなかにスギヒラタケ摂取後に発症した症例があるとの情報を得たので, この事実に注目し, スギヒラタケ摂取との関連性について全国の日本腎臓学会員に情報提供を呼びかけた. その結果, スギヒラタケ摂取と急性脳症の発症に強い関連がある32症例の情報を得, 致死率が約30%に及ぶ重篤な臨床経過をとる脳症であることがわかった.