著者
添田 孝彦
出版者
九州共立大学
雑誌
九州共立大学・九州女子大学・九州女子短期大学・生涯学習研究センター紀要 (ISSN:13421034)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.101-111, 2006-03-31

全国の豆腐を同時に比較し、その地域性を検討した。地域性がみられた項目としては、まず、大豆原料とニガリがあげられる。国産大豆、無農薬人豆、遺伝子非組換え大豆という大豆選択型は北海道地方、近畿地方、中国地方で多くみられ、逆に沖縄および山間部ではあまりその傾向はみられない。全国的にみれば、80%以上が大豆選択型原料をとっていた。凝固剤では、特に近年の傾向としてニガリ使用傾向が強くなっており、豆腐全体の70%がニガリ使用と高い比率を占めた。その比率の高い地域としては、沖縄地方、関東地方、四国地方であった。逆に、近畿地方、九州地方、東北地方は低かった。ミネラル成分については、Na含量の地域性が強かった。すなわち、東海地方を底に、北では北海道地方、西では九州地方、沖縄地方に行くほどNa含量は高くなるという明らかな地域性を示した。価格についても地域性は顕著であった。関東地方、北陸地方、東海地方、近畿地方を頂点に、北では北海道地方、西では沖縄地方に移るに従って価格は低くなった。重量については大きな地域性はみられなかったが、形状については上表面積と高さにおいて地域性がみられた。ゲル強度の地域性も顕著にみられ、西日本の方が北日本よりも硬い木綿豆腐が食べられていた。
著者
添田 孝彦
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.77-86, 2004-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
3

Soybeans soaked in water are expressed as 'tsuke-mame' in the north of the Kinki district, and as ''kkaasshhii-mame' in the west of the Chugoku district. The supernatant formed during coagulation is expressed as 'uwazumi' in the north of the Kinki district, 'kimizu' and 'shimizu' in the west of the Chugoku district, and 'yu' in the Tohoku and Chugoku districts. The cloth used in okara separation is expressed as 'hukuro' in the north of the Tohoku district, and 'nuno' in the west of the Shikoku district. Soaking soybeans in water is expressed as 'tsukeru' throughout the country, and as 'kashu'locally in the west of the Chugoku district. Coagulation is expressed as 'yoseru' throughout the country, and as 'utsu' locally in the Tohoku and Kinki districts, and 'awasu' locally in the Hokuriku and Shikoku districts.
著者
添田 孝彦
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.87-92, 2004-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
4

1.訴求表現に関する文字数訴求文字数は豆腐1 個あたり平均2 1 . 7 字の表現がなされていた. 項目としては「大豆」, 「にがり」, 「味風味」および「製法」における文字数は多く,「安心安全」,「新鮮さ」,「料理」,「形態」,「食感」および「消泡剤」に関するものは少なかった.地域的にみると,「大豆」および「にがり」は四国地方で多く,沖縄地方は少なかった.「製法」は沖縄地方および近畿地方で多く, 北海道および東北地方で少なかった. 「味風味」は各地域一様に表現されていた.2.具体的訴求内容「大豆」は"無農薬有機栽培大豆","国産大豆"および"地名+国産大豆"の出現がほとんどで,「にがり」は" にがり使用" または" 地名+ にがり" , 「水」は" 地名+ 水" が多く出現した. 「製法」は" 手造り" が最も多く,"生絞り法","一丁仕込み"なども使われ,「味風味」は" 豆の旨み・香り・こく・甘味" , " まろやかな味わい"が多く出現し,「食感」は"煮くずれしない"," なめらかな舌ざわり" といったわかりやすい表現が多かった.3.地名を冠した訴求表現の出現頻度地名を冠した表現のものは全体に対して3 5 . 8 % と高く,項目別では「大豆」および「水」が高く,地域的には東北,関東,北陸地方の東日本および四国地方で高かった.
著者
添田 孝彦 山崎 勝利
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.354-360, 2002
被引用文献数
1

沖縄および関東地方の市販木綿豆腐に関する商品調査, 聞き取り調査および物性評価を中心におこなった.<BR>(1) 原材料について, 凝固剤はすまし粉からニガリへ, 大豆は輸入大豆から国産大豆への切り替えが, 特に関東地方において顕著で, 近年の潮流であることが示された. 消泡剤は沖縄地方では使用されず, 関東地方でも約半分以上が不使用となっていた.<BR>(2) 製法について, 沖縄地方では現在でも約70%が生絞り法を採用していたが, 関東地方はすべて煮とり法となっていた.<BR>(3) 沖縄地方の豆腐料理を豆腐の前処理法と調理法の二つの軸を用いて整理した. 調理耐性をもった豆腐が沖縄地方の豆腐の存続の要因と推察された.<BR>(4) 成分的にはMg含量は上昇し, 逆にCa含量は低下していた. これは商品調査から約80%がニガリ使用であるという結果と併せると, 凝固剤はすまし粉からニガリへの切り替えを裏付けるものであり, 現時点で既に5訂日本食品標準成分表記載のMgおよびCa値と大きな差異がみられた.<BR>(5) 豆腐のかたさについては沖縄地方と関東地方間で大きく異なった. 関東地方の豆腐に比べて, 沖縄地方の豆腐のかたさは1.7倍を有し, 豆腐物性の地域間での客観的比較が可能となった. 将来, 大豆をより多く摂取するための手段として, 沖縄料理的な豆腐料理を各地に提供していく意義は大きいと感じる.
著者
添田 孝彦
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.672-676, 1995-09-15
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

冷蔵ゲルを中心とした大豆タンパク質ゲルのゲル状食品への適性を,ソーセージ,ハンバーグ,さつま揚げを用いて調べた.その結果,冷蔵ゲルは加熱ゲル,凍結ゲル,SPIと比べてゲル状食品への高い適性をもち,畜肉や魚肉すり身に対する高い代替の可能性を示した.特に,ハンバーグのようなヘテロジニアスな歯ごたえを有する食品に対してはテクスチュロメータ物性並びに官能評価の結果から,畜肉代替比率50%でも対照(大豆タンパク質無添加)と同等の食感を有した.一方,ソーセージとさつま揚げの場合は畜肉代替比率が50%であると,その物性は対照よりも劣った.その理由は両サンプルともかたさと弾力の低いスコアーのためであった.<BR>以上より,冷蔵ゲルはゲル状食品において畜肉や魚肉すり身の高い代替が可能であった.これは冷蔵ゲルのもつしなやかで喉ごしのよいゲル物性が最終食品の物性に活用されたためであり,冷蔵ゲルの性質が畜肉や魚肉すり身との親和性を向上したためであると考えられた.この冷蔵ゲルの高い親和性は,冷蔵ゲルが加熱ゲルのようなS-S結合主体のゲル化ではなく,疎水結合や水素結合主体のゲル化であると考えられる2)ことに基因していると推察された.