著者
井上 吉世 林 淑美 原 知子 和田 珠子 水野 千恵 中原 満子 伊藤 知子 村上 恵 的場 輝佳
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 = Journal for the integrated study of dietary habits (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.313-319, 2010-03-30

This study clarifies the applicability of a sensory evaluation to easily determine the life span of frying oil on the fried food cooking in the kitchen. Two types of foods, i. e. , a chicken fillet and potato, were deep-fried coated with two types of flour, i. e. , potato starch and wheat flour. Frying was continued until the flavor score of the oil had dropped to 3. A sensory evaluation of the frying oil and each fried food was then carried out. The life span of the frying oil to reach the flavor score of 3 was slightly longer for the potato compared to the chicken fillet. It was suggested that the scores for the viscosity and rancid flavor of the frying oil corresponded to the flavor score result of the frying oil. The flavor and taste of the potato fried in the oil with a flavor score of 3 were not good. However, it was difficult to judge the degradation by the appearance of the fried chicken fillet coated with potato starch. The flavor score of the frying oil corresponded to the rancid flavor of the frying food in any case. The color of the frying oil and the taste of the fried materials varied case by case. These results suggest that the flavor score of the frying oil is a useful and easy method to determine the life span of frying oil in the domestic kitchen when a potato starch or wheat flour coating is used.
著者
横山 佳子
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 = Journal for the integrated study of dietary habits (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.21-27, 2013-06-30
被引用文献数
1

本研究では, 野菜サラダの加工過程および冷蔵保存を含め, 大量調理施設衛生管理マニュアルに基づき7工程 (原材料, 水洗・下処理, 中性洗剤・すすぎ, 殺菌・すすぎ, 試料の切断・混合, 冷蔵保存10°C, 24時間後, 冷蔵保存10°C, 48時間後) を設定し, 一般細菌数と細菌叢の変化について検討した。特に野菜に多く分布しているNFGNBの消長について検討した。野菜を7つの全工程に従って処理した結果, 一般細菌数および細菌叢に大きな変化は認められなかった。野菜には多くのNFGNBに分類される菌種が分布していた。野菜サラダを作成し, 10°C, 48時間冷蔵保存をすると, 腸内細菌科の細菌割合が増加する傾向が見られた。全工程で検出回数が多かったのは, 芽胞形成・桿菌および<i>Burkholderia cepacia</i>であった。また検出された菌種の多くがNFGNBに属するものであった。NFGNBは一般的にヒトへの病原性は低いが易感染性宿主には重篤な感染症を起こし, また常用抗菌薬に対する耐性を有することが知られていることから, 易感染性宿主や在宅介護を受けている者に対しては, 野菜を加熱調理して提供することおよび生での提供が必要な場合は調理後速やかに食することでリスクが緩和されることが示唆された。
著者
坂田 由紀子
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.38-51, 1995

目的: カナダBC州のバンクーバー, スティーブストン, フレーザーバリー在住の日系人の食生活における日本人としてのアイデンティティーの検索調査時期及び調査対象: 調査時期は1992年9-10月であり, 対象は27-90歳の日系二世および三世225名 (男子19名, 女子206名) である.<BR>結果: 1. 行事は, 西洋の行事 (クリスマス, ハローイン, イースター) と日本の行事 (正月, お盆, 雛祭り, 大晦日) が並列に行われており, 行事食は伝統的な形のものが残っていた. 日本の行事食として定着しているのは, 赤飯, 寿司, 煮しめ, 饅頭であった. こんにゃくは, 現在でも手作りされている.<BR>2. 正月料理の雑煮は, 丸餅を焼かずに煮込む白味噌または澄まし仕立てであり, 西日本の食文化が主流である.<BR>3. カナダでアレンジされた料理には, BCロールがあり, カリフォルニアロールと一緒にレストラン料理として定着している.<BR>4. 日系人独特の行事食としてチャーメンが定着していた.
著者
高屋 むつ子 菅野 美千代
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.112-120, 2002

宮城県やその近辺県を中心とした女子短大生の漬物に対する嗜好性と摂食状況並びに市販漬物利用状況と調味に対する嗜好性を把握する目的で, 宮城県にある尚絅女学院短期大学学生544名を対象にアンケート調査を行い, 以下のような結果を得た.<BR>1. 漬物に対するイメージは「塩分が多く健康によくない」「漬物より生野菜の方が断然健康によい」「保存食品」といったマイナス・イメージをもつ者と, 「嗜好食品」「野菜を食べるための調理法」「食物繊維・ビタミン・ミネラルの宝庫」といったプラス・イメージをもつ者とに二分された. 特に宮城県以外の他県出身者(主に東北地方)は漬物を「保存食品」として捉えている者が多く (p<0.05), また, 専攻別では他専攻より食物栄養専攻の方が「嗜好食品」として捉えている者が多かった (p<0.05)<BR>2. 漬物が食卓にでる頻度は「時々でる」49.4%, 「必ずでる」40.3%で, いずれも核家族より拡大家族の方が顕著に多かった (p<0.01). 摂食頻度は「1日1回」「週1回」「3日に1回」と分散し, 居住地別, 家族形態別で差がみられた.<BR>3. 漬物の嗜好度はかなり高く, 嫌いと回答した者は僅か5%であった. また, 漬ける人の有無で嗜好度に差がみられ, 漬ける人がいる家庭は有意に好み (p<0.05), いない場合は嫌う傾向が強かった (p<0.01).<BR>4. 食卓における漬物は「自家製・市販漬物併用」59.1%, 「市販漬物」25%, 「自家製漬物」15.9%で, 核家族は市販漬物利用者が多く, 拡大家族は自家製漬物が多かった (p<0.01).<BR>5. 自家製漬物品目は胡瓜浅漬, 白菜浅漬が最も多く, たくあん漬, 梅干は自家製群, 拡大家族群で有意に多かった. 市販漬物63品目中購入頻度が高く, 好きな漬物は白菜キムチ, 梅干, 胡瓜浅漬, カリカリ梅, かつおたくあん, 白菜浅漬, 茄子浅漬で, 居住地, 居住形態別で有意差がみられた. また, 苦手・嫌いな漬物はピクルス, らっきょう漬, セロリ浅漬, 奈良漬, わさび漬, 粕漬, べったら漬, 甘酢しょうがであった.<BR>6. 今後の市販漬物利用状況については「利用したい」が「自家製漬物が好き」32.3%, 「市販漬物が好き」68.5%, 「どちらも好き」81.9%で, 市販品に対する依存度が高かった.<BR>7. 市販漬物を購入する際に注意する点は「味」99.1%, 「賞味期限」63.5%, 「価格」56.2%, 「表示内容」33.6%であり, 価格のみ居住形態で差がみられた (p<0.01).
著者
多山 賢二 住田 初美 岡本 洋子
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.241-249, 2011
被引用文献数
1

有機酸の存在が不可欠な5種の酸味のメニュー ((1)すし飯, (2)酢の物, (3)ぽん酢醤油をかけた豆腐, (4)ハチミツドリンク, (5)飲むヨーグルト) において, 代表的な有機酸である酢酸, クエン酸, 乳酸にグルコン酸を加えた合計4種の内, どの有機酸を用いたメニューが最も美味しいか酸味度を揃えた上で評価した。その結果, グルコン酸は(5)においてクエン酸と共に最も好まれたものの,(3)でやや好まれた以外, その他のメニューでは最も好まれないグループに属した。(1)(2)(3)で酢酸が最も好まれたことは食べ慣れた味が美味しく感じることを示唆している。調理上のグルコン酸の評価を上げていくためには様々な検討や時間をかけた取り組みが必要と思われた。<br>  一般的なお寿司には多くの食塩が含まれるため, すし飯の減塩の手法を考えた。グルコン酸に着目した検討の結果, 食酢, 砂糖, 食塩の三者ですし飯を作る際, グルコノデルタラクトンを追加すれば, 食塩量を半量としても美味しさを変えることなくすし飯を味わえることが明らかになった。グルコン酸カリウムでも減塩できたものの, 食酢の酸味を緩和しすぎることから食酢使用量が多くなり過ぎ, 調理コストの点で好ましくなかった。<br>  食経験がある酢酸菌を入手しグルコースを主原料としたグルコン酸発酵を検討し, グルコースと酵母エキスの培地で酢酸が少ない条件では, 220時間でグルコン酸を9%蓄積させることができた。また, 米とアルコールからなる原料からもグルコン酸10%を含む醸造酢が試作できた。
著者
秋山 秀一
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.151-155, 2014

From the trip for the production of the trip program of the NHK radio for 3 years, I focused on "a meal" and thought about "a Japanese trip and meal". It is so-called gourmet to introduce the custom prevalent among many parts of the country. The program also includes the thing which came up in the history and classic thing, for the activation of the town, these days of interview is various. I described each story and photographs about each place on the earth.
著者
三宅 義明
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.35-40, 2011

Three scavengers of DPPH (1, 1-diphenyl-2-picrylhydrazyl) radical were isolated from commercial mint teas such as spearmint and peppermint, and they were identified as eriodictyol 7-<i>O</i>-β-rutinoside (eriocitrin), luteolin 7-<i>O</i>-β-rutinoside, and rosmaric acid by HPLC and LC-MS. The extracts of mints leaves such as peppermint variegate, orange mint, black peppermint, candy mint, apple mint, and Japanese mint (hakka) by hot water were examined for content of radical scavengers and their activity. It was shown to have high correlative relationship (<i>R</i>=0. 914) between the sum content of three scavengers in the extract and the activity. The isolated scavengers and their aglycones (eriodictyol and luteolin) were shown to have the high scavenging activity for superoxide as well as DPPH radical. They were examined for suppressive effects on the expression of blood adhesion molecules. Eriodictyol, luteolin, and rosmaric acid exhibited significantly the high activity (<i>P</i><0. 05).
著者
江間 三恵子
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 = Journal for the integrated study of dietary habits (ISSN:18812368)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.310-315, 2007-03-30
被引用文献数
2

本論文では機能性食品に対する若年層の食行動を調査し, これらの食品の利用法の意識について考察した。<BR>  1) 調査対象者は10~20代の若者であるが, 身体が不調と考えている人が多い(73%)。<BR>  2) 身体の不調の理由として, 不規則な生活 (13.1%), ストレス (8.5%) や疲労感 (11.9%), 肩こり (7.8%), イライラ (6.2%), 疲れ目 (5.9%) を挙げている。<BR>  3) 機能性食品を利用する目的は, ミネラルの補給, 整腸, ビタミンの補給など身体の不調回復に関する用途が多い。<BR>  4) 平成18年に利用数が増加したのはビフィズス菌, キシリトール, ポリフェノール, DHA・EPAなどである。逆に, 利用数が減少したのはポカリスエットなどのスポーツドリンク, ロイヤルゼリーなどである。<BR>  5) 機能性食品の購入先はスーパー, コンビニなどが多い。平成18年には薬局での購入も増加している。<BR>  6) 購入の基になった判断基準は店頭, TV・新聞などのCMが多いが, 平成18年は簡単な飲食とか味覚など嗜好的な判断も多くなった。<BR>  7) 購入しない理由は平成6年は「必要としない」や「効果がない」が多いが, 平成10年は「食事から摂る」が多かった。平成18年には「価格が高い」ことも問題にしている。<BR> 機能性食品は, 最近, 種類も豊富になり多様化しているが, 現在新しく導入されたものもあり, 旧来のものが減少し, 新しいものへの転換が激しい。従って, 流行がある。正しい情報を伝達し, 消費者が体の健康維持, 回復にあった十分安全な食品が利用できることが望まれる<sup>9)~13)</sup>。本論文は10~20代の学生の調査で限定的とはいえ, 若年層の機能性食品に対する食行動の一端を把握できたものと考える。
著者
鈴木 亜夕帆 渡邊 智子 渡邊 令子 中路 和子 満田 浩子 井上 小百合 山岡 近子 西牟田 守 宮崎 秀夫
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.259-269, 2015
被引用文献数
1

自立した生活をしている81歳の男女58名の3日間の食事秤量調査を行い,食生活の実態について検討した。1) 血液検査値,体位およびBMIは,それぞれ正常範囲内であった。2) 男女とも嗜好飲料類の摂取量が一番多く,次いで,穀類の摂取量であった。穀類摂取量の変動係数は,食品群の中一番低く,藻類および菓子類は,男女で摂取量の個人差の違いが異なる食品群であり,女性は男性に比べ,菓子類の摂取量が多く,そのばらつきも少なかった。3) エネルギー摂取量は,男性2,077kcal,女性1,761kcalで男女とも適正であった。エネルギー産生栄養素比率は,たんぱく質:男性15.4%,女性15.2%,脂質:男性23.9%,女性24.1%,炭水化物:男性56.6%,女性59.9%,アルコール:男性4.1%,女性0.7%であった。4) イコサトリエン酸およびアラキドン酸で男性が女性よりも有意に多く摂取していた。エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸の合計摂取量は,1.1g (男性1.2g,女性1.0g) であった。5) グルタミン酸,次いでアスパラギン酸が多く摂取されていた。6) ショ糖,次いでぶどう糖および果糖が多く摂取されていた。7) 日本人の食事摂取基準2010年版から対象者の個人別必要エネルギーを算出した値と,実摂取量とを比較すると,男女ともに1%以内の相違にすぎなかった。 これらのことから,自立して生活している高齢者のエネルギー摂取量および栄養素別エネルギー摂取比率は食事摂取基準の適正範囲内であったが,食品群別摂取量を見ると男女別に特徴があることがわかった。
著者
重田 公子 笹田 陽子 鈴木 和春 樫村 修生
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.164-171, 2007
被引用文献数
2 4

近年の若年女性においては, Body Mass Index (BMI) を基準とする体型区分ではやせおよび正常でありながら, 特有の体重調節意識を持つ者が増加している。本研究では, 若年女性の痩身志向が心身に与える影響について, 食行動と疲労自覚症状をもとに明らかにすることを目的とした。<BR>  1) BMIを基準とする体型区分によるやせ, 正常, 肥満の割合は, 順に17.5%, 75.4%, 7.1%であったが, 痩身志向がある者は全体の87.9%に達した。特に痩身志向がある者の中で, BMIが「やせ」と「正常」の者の割合は92.2%であった。<BR>  2) 痩身志向のある者は, 60.3%が自分の体型を「太っている」とイメージし, 60.9%がダイエットをしたことがあり, 痩身志向の有無の間には, それぞれ有意差が認められた。<BR>  3) 自棄食い経験は, 痩身志向がない者 (38.0%) に比較して, ある者 (53.6%) が有意に高い割合を示した。<BR>  4) 疲労愁訴率合計は, 痩身志向がない者 (19.7%) に比較して, ある者 (25.9%) で有意に高かった。疲労自覚症状I群の「ねむい」, 「足もとがたよりない」では, 痩身志向のない者に比較して, ある者が有意に高い割合を示した。
著者
妹尾 春樹
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.309-316, 2008

Nobu Shirase (born in Konoura in Akita Prefecture) was a pioneer of polar expedition. He reached 80° 5' south latitude in 1912 after Amundsen and Scott reached the South Pole. White bear (polar bear) is a unique animal in the Arctic, and stores a large amount of vitamin A in the liver. Hepatic stellate cells (vitamin A-storing cells, lipocytes, interstitial cells, fat-storing cells, Ito cells) exist in the space between parenchymal cells and sinusoidal endothelial cells of the hepatic lobule, and store 80 % of vitamin A in the whole body as retinyl palmitate in lipid droplets in the cytoplasm in mammals such as human or rats. In physiological conditions, these cells play pivotal roles in the regulation of vitamin A homeostasis; they express specific receptors for retinolbinding protein (RBP), a binding protein specific for retinol, on their cell surface, and take up the complex of retinol and RBP by receptormediated endocytosis. Hepatic stellate cells in top predators in arctic animals such as polar bears and arctic foxes store 20-100 times the levels of vitamin A found in human or rat. Nuclear deviation in hepatic parenchymal cells, degeneration of Glisson's sheath, inflammation of the intestine, and a shift of vitamin A-storing site from the liver to the kidney were found in the arctic top predators. These findings were not reported in the wild animals and alarming to the human beings.
著者
添田 孝彦 山崎 勝利
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.354-360, 2002
被引用文献数
1

沖縄および関東地方の市販木綿豆腐に関する商品調査, 聞き取り調査および物性評価を中心におこなった.<BR>(1) 原材料について, 凝固剤はすまし粉からニガリへ, 大豆は輸入大豆から国産大豆への切り替えが, 特に関東地方において顕著で, 近年の潮流であることが示された. 消泡剤は沖縄地方では使用されず, 関東地方でも約半分以上が不使用となっていた.<BR>(2) 製法について, 沖縄地方では現在でも約70%が生絞り法を採用していたが, 関東地方はすべて煮とり法となっていた.<BR>(3) 沖縄地方の豆腐料理を豆腐の前処理法と調理法の二つの軸を用いて整理した. 調理耐性をもった豆腐が沖縄地方の豆腐の存続の要因と推察された.<BR>(4) 成分的にはMg含量は上昇し, 逆にCa含量は低下していた. これは商品調査から約80%がニガリ使用であるという結果と併せると, 凝固剤はすまし粉からニガリへの切り替えを裏付けるものであり, 現時点で既に5訂日本食品標準成分表記載のMgおよびCa値と大きな差異がみられた.<BR>(5) 豆腐のかたさについては沖縄地方と関東地方間で大きく異なった. 関東地方の豆腐に比べて, 沖縄地方の豆腐のかたさは1.7倍を有し, 豆腐物性の地域間での客観的比較が可能となった. 将来, 大豆をより多く摂取するための手段として, 沖縄料理的な豆腐料理を各地に提供していく意義は大きいと感じる.
著者
小川 久惠 奥嶋 佐知子 児玉 ひろみ
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.36-42, 2001
被引用文献数
1

肥満予防や食事制限を余儀なくされている人たちでも利用できるように, 身体に蓄積されにくいジアシルグリセロールを主成分とするクッキングオイル (市販健康エコナクッキングオイル, DAG-O) を菓子に応用した時の調理性について検討した. 試料調製には上記の油と同一原料から調製したトリアシルグリセロールを主成分とする油 (TAG-O) を用い, シフォンケーキ, フィナンシェ, シュー, クッキー, ドーナツの5種の菓子を調製し, 官能評価を中心に物性面からはクリープメーターによるテクスチャー解析およびバッターの比重の測定, 焼成前後のシフォンケーキの高さの測定などを行って両油を比較検討し以下の知見を得た.<BR>1. 官能評価法による評価の結果, シフォンケーキを除く他の4種の菓子についてはDAG-O試料およびTAG-O試料間に有意差はみられなかった.<BR>2. シフォンケーキの官能評価の結果は, DAG-O試料はTAG-O試料にくらべきめ粗く均一でない, ふっくら感で劣るなどの理由から総合的な評価において有意に低く評価された.<BR>3. DAG-Oを用いたシフォンケーキに小麦粉重量の3%のB.P. を添加すると, 炭酸ガスが気泡を押し上げることから, 総合的な評価を有意に高めることができた.<BR>4. シフォンケーキ調製時のバッターの比重を測定したところ, DAG-OはTAG-Oに比べて約0.04大きく, またクリープメーターによるかたさの測定値においてもDAG-OはTAG-Oにくらべて高値を示し, いずれも官能評価の結果を裏付けていた.
著者
今井 悦子
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.121-127, 2002

家庭内で常に特定の人が使うことが決まっている食器を属人器というが, 属人器の実態を明らかにする手始めとして, 埼玉県居住者を中心とする2, 500名を対象とし, 郵送調査法を用いてアンケート調査を行った. 回収率は41.4%であった (家族2人以上の者に限った).<BR>調査の結果, 以下のことが明らかになった.<BR>1. もっとも専用率が高い食器は箸であり, 次いで飯碗, 湯呑みで, これらは8~9割方属人器として使われていた. 汁椀はほぼ半数が, 一方取り皿は約8%のみが属人器としていた.<BR>各食器の専用・共用実態と家族人数の間には関係がなく, 同居世代数との間には一部関係があった. また, 食事作りを担当している者の年齢との間には食器によっては有意差があり, 若い世代は専用が少なく, 高齢世代は専用が多かった.<BR>2. 食器の共用に対する抵抗感の有無を調べたところ, 抵抗感ありは箸が50.0%ともっとも高く, 次いで湯呑み (39%), 飯碗 (35%), 汁椀 (24%), 取り皿 (5%) であることが分かった. 抵抗感は, どの食器でも有意に女性にありが多く, 男性に少なかった. また, 年齢とは関係がなく, 家族人数とは一部関係が見られただけだったが, 同居世代数とは関係があった. すなわち, どの食器も3世代以上の世帯では抵抗感ありが多く, なしが少なく, 逆に1または2世代世帯では抵抗感ありが少なく, なしが多かった.<BR>3. 家族の中の誰に対して抵抗感があるか調べたところ, どの食器も義理の関係にある者に対しての抵抗感がもっとも強いことが分かった. 次いで父母, 兄弟, 配偶者, 子どもの順であった.<BR>4. 日常の家族との食生活と抵抗感との関係をみたところ, 抵抗感ありの人々では, 食事中家族団欒がほとんどなしが多く, 団欒ありが少なかった.5. 食器共用への抵抗感に寄与する因子を見つけるためにCHAIDを行った結果, 抵抗感なしの人々は実際にその食器を共用していること, また, 抵抗感ありの人々はまず食器は専用としていて, さらに性や同居世代数, または家族との日常の共食実態などが抵抗感の有無に影響していることが示唆された.
著者
石橋 源次 山形 知広 力武 史郎 滝口 靖憲
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.107-111, 2002
被引用文献数
1

鶏の鶏冠から抽出されたムコ多糖類のピアルロン酸を用いて, in vitroとin vivoにおける消化性および腸内細菌叢について検討した.<BR>1. ピアルロン酸は, 消化管内の消化酵素で消化されず, また, ラットに経口投与した場合, 糞中に排泄されなかった.これは, ピアルロン酸が内在する腸内細菌により発酵を受けると思われた.<BR>2. ピアルロン酸を摂取すると盲腸内のLactobacillusやBifidobacteriumが増加することが分かった.
著者
宮城 淳
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 = Journal for the integrated study of dietary habits (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.320-324, 2012-03-30
参考文献数
22
被引用文献数
4

醤油造りは, 古来より一麹 (きく : 麹造り), 二櫂 (かい : 諸味のかく拌), 三火入れ (香りづけ, 色づけおよび殺菌) の三工程が重要であるといわれている。製品化においても醤油の色は, 品質上, もっとも大切な要素の一つである。今回, 千葉県の消費者176名を対象とした醤油の購入に関する意識と醤油の色の嗜好性について調査を行った。醤油購入の際の選択動機は, 「価格」と同様に, 「銘柄」や「品質」を重視する傾向があった。色の嗜好性は, 用途によって異なり, 「つけ醤油」や「麺つゆ (つけ汁) 」用は色の濃い方が, 「ポン酢醤油」や「煮物」用, 「麺つゆ (かけ汁) 」用は色の淡い方が好まれた。「ポン酢醤油」や「煮物」用については, 性別による色の嗜好性の差異も認められ, 女性の方が淡い色を好む傾向があった。年齢層別による色の嗜好性の差異は, 全体的には認められなかった。本調査結果は, 今後の消費者ニーズに応じた商品開発や販売戦略の基礎資料として期待される。