著者
山崎 勝利 鳴戸 康 上田 要一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.219-225, 2005-05-15
被引用文献数
2 4

本研究では, タンパク質架橋重合化酵素であるトランスグルタミナーゼ (以下, MTGと略す) に着目して, スポンジケーキの調製工程における有用性について検討した. その結果, スポンジケーキの要件を満たすことが可能となり, 以下のような有用性をみることができた.<br>(1) MTGによりスポンジケーキの比容積の向上が図れた.<br>i) MTG 0.5u/gp~5.6u/gp最も効果を発現された. 14u/gpでは比容積の減少がみられた. ii) MTGと他の改質材0.5%との併用においては, 乳化剤, 増粘多糖類, 小麦タンパク分解物の順に作用性が高く得られた. iii) MTG 1.4u/gpと乳化剤0.2%の併用において, MTG単独に対して, 約1.2倍の比容積を得た.<br>(2) MTGの添加により, スポンジケーキの上面の凹みや, 皺もみられず形状の整ったスポンジケーキが得られた. i) MTGの最適添加量は0.5~1.4u/gpであった. ii) 2.8u/gp以上では表皮部がやや硬くなる傾向を示したが, 乳化剤, 増粘多糖類0.2%との併用において, 保形性のよいクラムが形成され, 気泡がよくのびて, しっとりして柔らかい食感が得られた.<br>(3) 破断試験による物性評価では, 無添加に対して, MTG 1.4u/gp添加において破断強度が高くなり, 破断距離ものびたことから, 弾力と柔らかさが向上する傾向が得られるものと推定された.<br>(4) SDS-PAGEからも低分子グリアジン画分の減少が認められた. これらのことからMTGによるスポンジケーキの有用性および主な反応基質タンパク質などが示唆された.
著者
坂本 浩子 山崎 勝利 加賀 千文 山本 幸子 伊藤 隆二 黒澤 康之
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.598-602, 1996-05-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1 21

準強力粉を主原料として中華麺を調製し,麺の物性に対するMTGaseの添加効果を調べた.(1) かんすいの添加量を調整し生麺調製時のpHを約6~10と変化させ,ゆで麺,酸処理麺の破断強度に及ぼす影響を調べた結果,MTGase無添加麺ではpHが高いほど破断強度が高かったが,MTGase添加系ではpH 6~8で破断強度増加効果が得られた.(2) pH 8.0で生麺を調製し, MTGaseの添加量が破断強度に及ぼす影響を調べた結果,MTGase 0~7U/gproteinで酵素濃度の増加とともにゆで麺の破断強度が増加した.ゆで麺を酸処理またはレトルト処理した場合,調べた0~10U/g proteinの範囲内で酵素濃度の増加とともに破断強度が増加した.(3) 生麺の断面を走査型電子顕微鏡により観察した結果から,これらMTGaseによる効果はG-L架橋形成によりグルテンのネットワーク構造が補強されたためと推定された.(4) 以上より,MTGaseを使用するとゆで麺の破断強度が増加すること,さらに酸処理やレトルト処理をしても破断強度の低下が抑制されることが判明した.
著者
湯川 尚一郎 湯浅 美那 江塚 楓奈 湯川 元美 山崎 勝利 仲 克己
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.22-26, 2021-04-10 (Released:2021-04-15)
参考文献数
23

海外では、イヌ用ペットフードへのサルモネラ属菌混入が原因であるヒトサルモネラ症の発生事例が報告されている。このことから、本邦においてイヌ用ウェットフードへのサルモネラ属菌混入の有無を明らかにするために日本国内で販売されているイヌ用ウェットフードからサルモネラ属菌の検出の有無を調査した。イヌ用ウェットフードは国内23社の国内産20製品と中国産24製品、オーストラリア産14製品、タイ産と米国産が各4製品そしてニュージーランド産2製品を供試した。サルモネラ属菌の検出方法は「愛玩動物用飼料等の検査法 (27消技第1051号) 」に従った培養法により行った。その結果、サルモネラ属菌は、すべての製品から検出されなかった。このことから、日本におけるイヌ用ウェットフードのサルモネラ属菌混入に関するヒト及びイヌの健康被害のリスクは低いと考えられた。
著者
添田 孝彦 山崎 勝利
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.354-360, 2002
被引用文献数
1

沖縄および関東地方の市販木綿豆腐に関する商品調査, 聞き取り調査および物性評価を中心におこなった.<BR>(1) 原材料について, 凝固剤はすまし粉からニガリへ, 大豆は輸入大豆から国産大豆への切り替えが, 特に関東地方において顕著で, 近年の潮流であることが示された. 消泡剤は沖縄地方では使用されず, 関東地方でも約半分以上が不使用となっていた.<BR>(2) 製法について, 沖縄地方では現在でも約70%が生絞り法を採用していたが, 関東地方はすべて煮とり法となっていた.<BR>(3) 沖縄地方の豆腐料理を豆腐の前処理法と調理法の二つの軸を用いて整理した. 調理耐性をもった豆腐が沖縄地方の豆腐の存続の要因と推察された.<BR>(4) 成分的にはMg含量は上昇し, 逆にCa含量は低下していた. これは商品調査から約80%がニガリ使用であるという結果と併せると, 凝固剤はすまし粉からニガリへの切り替えを裏付けるものであり, 現時点で既に5訂日本食品標準成分表記載のMgおよびCa値と大きな差異がみられた.<BR>(5) 豆腐のかたさについては沖縄地方と関東地方間で大きく異なった. 関東地方の豆腐に比べて, 沖縄地方の豆腐のかたさは1.7倍を有し, 豆腐物性の地域間での客観的比較が可能となった. 将来, 大豆をより多く摂取するための手段として, 沖縄料理的な豆腐料理を各地に提供していく意義は大きいと感じる.