著者
清水 かおり 神里 みどり
雑誌
沖縄県立看護大学紀要 = Journal of Okinawa Prefectural College of Nursing (ISSN:13455133)
巻号頁・発行日
no.12, pp.55-64, 2011-03

【背景】離島で勤務する看護職は地理的特徴から継続教育の機会が得られにくく、知識・情報入手手段も限られている。これらは、人材確保の難しさや、早期離職の一因になっていることが予測される。そのため、へき地・離島で働く看護職が学習や相談を受けられるようなサポートをはじめとする支援体制をつくる必要がある。【目的】本研究の目的は、ICTを活用して離島で勤務する看護職者間のコミュニケーションの輪(ネットワーク)を作ること、離島診療所看護師が抱える問題を抽出しサポート体制について検討することである。【方法】研究参加の同意が得られた沖縄県内の離島診療所看護師を対象とし、半構成的面接法による個人インタビュー、ビデオカンファレンスの会議内容、ICTでのチャットからデータを得た。ICT環境として音声はskypeの会議通話、画像は沖縄県立看護大学の遠隔講義システム(FCS)を用いた。【結果】3名の離島診療所看護師が本研究に参加した。5回のビデオカンファレンスと2回の公開講座を発信した。ビデオカンファレンスの主な内容は自己紹介と各島の現況、看護実践上の振り返り、慢性疾患予備軍への働きかけ、保健師との取り組み報告、島の伝統行事と診療所看護師の関わり、死亡者・感染症患者の搬送方法、危機管理体制等であった。ビデオカンファレンス実施後は「他の島との情報交換が出来る」、「自分の島だけではないのだという安堵感」、「ビデオカンファレンスの便利さを感じる」、「繋がっている感じがする」、「孤立感が軽減した」、「モチベーションが上がる」、「愚痴ることができストレスが解消される」等の意見が聞かれた。また、ICT環境設定後、診療所看護師間でのSkypeによるチャット、電話での交流、島の行き来が行われるようになった。【考察】今回、市販のWebカメラ、FCSとSkypeという簡便なツールを用いて双方向のネットワークを確立することができ、参加者は他の離島看護師とのコミュニケーションの機会を得た。初めは大学側が中心となった交流であったが、自らVC以外での交流を持つようになった。それらを通して、離島の看護師間の交流が生まれ、相互作用が働いたと考える。|BACKGROUND: The nurses in the remote island are difficult to obtain continuing education and new information of nursing knowledge and limited communication with outside islands. These are cause of early resignation for nurses. Therefore, the making of the support system such as providing continuing education or consultation is necessary and indispensable. PURPOSE: To make the network system using Information Communication Technology (ICT) to support for remote area nurses. METHODS: The nurses, who want to join the support system with ICT, in remote island's clinic were recruited with snowball methods from the health care providers. We provide several videoconference with ICT to have meeting and chat for these nurses. Data were obtained by Semi-structured interviews, conversation of videoconference activities and chat from ICT. RESULTS: Three clinical nurses from different islands participated videoconference and individual interviews. Before we had videoconferences, they had problems; " a lack of relationships with other health care providers", "no Information", "isolation", "unable to attend professional meetings", "stress on interpersonal relationship with a medical doctors". We had 5 videoconferences and provided two open lectures for these nurses. The main contents of videoconferences were case conferences, review of nursing practices, island people's health problems and nursing intervention on traditional event. After the videoconferences, nurses have been reporting their positive interaction such as " feeling connecting with outside health care providers", " exchanging nursing knowledge" "using of ICT", "feel less isolated", "increasing of their own motivation", "refreshing themselves". After the videoconferences, these nurses have been making connections themselves by the telephone, skype chat, and meeting directly. CONCLUSIONS: Providing videoconferences and open lectures were a very supportive way to connect with remote island nurses.
著者
清水 かおり 片岡 弥恵子 江藤 宏美 浅井 宏美 八重 ゆかり 飯田 眞理子 堀内 成子 櫻井 綾香 田所 由利子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.267-278, 2013
被引用文献数
3

<b>目 的</b><br> 日本助産学会は,「エビデンスに基づく助産ガイドライン―分娩期2012」(以下,助産ガイドライン)をローリスク妊産婦のスタンダードケアの普及のため作成した。本研究の目的は,助産ガイドラインで示された分娩第1期のケア方針について,病院,診療所,助産所での現状を明らかにすることを目的とした。<br><b>方 法</b><br> 研究協力者は,東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県の分娩を取り扱っている病院,診療所,助産所の管理者とした。質問項目は,分娩第1期に関するケア方針18項目であった。調査期間は,2010年10月~2011年7月であった。本研究は,聖路加看護大学研究倫理審査委員会の承認を受けて行った(承認番号10-1002)。<br><b>結 果</b><br> 研究協力の同意が得られた施設は,255件(回収率37.3%)であり,病院118件(回収率50.2%),診療所66件(20.8%),助産所71件(54.2%)であった。妊娠期から分娩期まで同一医療者による継続ケアの実施は,助産所92.9%,診療所54.7%と高かったが,病院(15.3%)では低かった。分娩誘発方法として卵膜剥離(病院0.8%,診療所3.1%,助産所1.4%)および乳房・乳頭刺激(病院0%,診療所1.5%,助産所5.6%)のルチーンの実施は低かった。入院時の分娩監視装置による胎児心拍の持続モニタリングの実施は,助産所の38%が実施していた。硬膜外麻酔をケースによって行っているのは,病院の31.6%,診療所の31.3%であった。産痛緩和のための分娩第1期の入浴は,助産所では92.7%,病院48.3%,診療所26.7%で可能とされていた。産痛緩和方法として多くの施設で採択されていたのは,体位変換(95%),マッサージ(88%),温罨法(74%),歩行(61%)等であった。陣痛促進を目的とした浣腸をケア方針とする施設は非常に少なかった(病院1.7%,診療所9.1%,助産所1.4%)。人工破膜をルチーンのケア方針としている施設はなかった。<br><b>結 論</b><br> 分娩第1期のケア方針について,病院,診療所,助産所における現状と助産ガイドラインのギャップが明らかになった。本研究の結果を基準として,今後助産ガイドラインの評価を行っていく必要がある。本研究の課題は,回収率が低かったことである。さらに,全国のケア方針の現状を明確化する必要がある。
著者
清水 かおり 片岡 弥恵子 江藤 宏美 浅井 宏美 八重 ゆかり 飯田 眞理子 堀内 成子 櫻井 綾香 田所 由利子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.267-278, 2013 (Released:2014-03-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1 3

目 的 日本助産学会は,「エビデンスに基づく助産ガイドライン―分娩期2012」(以下,助産ガイドライン)をローリスク妊産婦のスタンダードケアの普及のため作成した。本研究の目的は,助産ガイドラインで示された分娩第1期のケア方針について,病院,診療所,助産所での現状を明らかにすることを目的とした。方 法 研究協力者は,東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県の分娩を取り扱っている病院,診療所,助産所の管理者とした。質問項目は,分娩第1期に関するケア方針18項目であった。調査期間は,2010年10月~2011年7月であった。本研究は,聖路加看護大学研究倫理審査委員会の承認を受けて行った(承認番号10-1002)。結 果 研究協力の同意が得られた施設は,255件(回収率37.3%)であり,病院118件(回収率50.2%),診療所66件(20.8%),助産所71件(54.2%)であった。妊娠期から分娩期まで同一医療者による継続ケアの実施は,助産所92.9%,診療所54.7%と高かったが,病院(15.3%)では低かった。分娩誘発方法として卵膜剥離(病院0.8%,診療所3.1%,助産所1.4%)および乳房・乳頭刺激(病院0%,診療所1.5%,助産所5.6%)のルチーンの実施は低かった。入院時の分娩監視装置による胎児心拍の持続モニタリングの実施は,助産所の38%が実施していた。硬膜外麻酔をケースによって行っているのは,病院の31.6%,診療所の31.3%であった。産痛緩和のための分娩第1期の入浴は,助産所では92.7%,病院48.3%,診療所26.7%で可能とされていた。産痛緩和方法として多くの施設で採択されていたのは,体位変換(95%),マッサージ(88%),温罨法(74%),歩行(61%)等であった。陣痛促進を目的とした浣腸をケア方針とする施設は非常に少なかった(病院1.7%,診療所9.1%,助産所1.4%)。人工破膜をルチーンのケア方針としている施設はなかった。結 論 分娩第1期のケア方針について,病院,診療所,助産所における現状と助産ガイドラインのギャップが明らかになった。本研究の結果を基準として,今後助産ガイドラインの評価を行っていく必要がある。本研究の課題は,回収率が低かったことである。さらに,全国のケア方針の現状を明確化する必要がある。
著者
清水 かおり 高良剛 ロベルト 金城 俊昭 安慶 名洋克
出版者
沖縄県立看護大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

離島住民参加型の災害医療対策啓蒙活動として「命どぅ宝・ユイマールプロジェクト」に参加し、離島講習会の開催による離島住民への知識・技術提供を行った。3年間の沖縄県遠隔離島における講習会受講実績は約1,160名(19カ所28回)である。講習会の都度、指導者である保健医療従事者への学習会を実施し、各離島の特徴・対象者を考慮した指導内容、指導方法についての討議、およびフィードバックを行った。内容はプロジェクトのメーリングリスト上でも公開し共有した。平成19年9月には、この講習会を受講した離島住民3人によって、目の前で心肺停止に陥った同僚に対しAEDを用いた心肺蘇生法を実施して救命し、後遺症無く社会復帰を果たした。