著者
玉井 なおみ 神里 みどり
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.40-50, 2015

要 旨 本研究の目的は,乳がん体験者が運動を生活の中に取り入れていくプロセスを明らかにすることである.外来通院中で運動をしていない乳がん体験者24 名に対し,6 カ月間の運動支援と運動の実施状況や運動を継続する認識について,半構成的面接を平均11.4 回実施した.主たる支援は,乳がんの再発や副作用に対する運動の予防効果の情報提供,電話支援1回/週/2 カ月,歩数計の配布,運動日記を用いた振り返りである.さらに,調査開始時に運動を継続している乳がん体験者15 名には,運動の影響要素や運動継続の認識について半構成的面接を行った.面接内容は,逐語録を作成して質的帰納的に分析した.結果,乳がん体験者が運動を生活に取り入れていく意識と行動の変化には,「知識獲得後移行型」「自信獲得後移行型」「非移行型」の3 つの運動行動パターンがあった.まず1 つ目に,乳がんの再発や副作用に対する運動の予防効果の情報提供だけで運動を生活に取り入れ継続するという信念(以下,運動信念)に移行できる「知識獲得後移行型」,2 つ目は徐々に自信を獲得し運動信念に移行できる「自信獲得後移行型」,3 つ目は運動の予防効果を知っても再発の不安などで運動に思考が向かず,運動信念へ移行できない「非移行型」である.運動を継続するには乳がん体験者が生活の中で歩く方法を自ら見出し,運動を継続するという信念をもつことが重要であった.運動支援として,乳がん体験者が生活に取り入れる運動行動パターンに応じた個別的な支援をすることが重要である.
著者
相原 優子 神里 みどり 謝花 小百合
出版者
沖縄県立看護大学
雑誌
沖縄県立看護大学紀要 (ISSN:13455133)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-16, 2012-03

【目的】: がん看護実践で活用可能な補完代替療法(Complementary and Alternative Medicine, 以下CAMとする)を選出し、それらの効果と安全性のエビデンスについて、文献を用いて検討する。【方法】: アロマセラピー/マッサージ、音楽/音楽療法、アートセラピー、呼吸法/リラクセーション法、タッピングタッチの5 つについて、がん領域のCAMのガイドライン、Cochrane Database Systematic Review、米国がん看護学会のシステマティックレビュー、および医学中央雑誌・CINAHL・MEDLINEにより検索された過去5 年間の研究論文を用いて、効果と安全性に関する記述レビューを行った。【結果】: ガイドラインでは、どのCAMも実践に強く推奨されるには至っていなかったが、小規模な研究や質的研究では、痛みや倦怠感などの症状の改善や、不安の軽減やコミュニケーションの促進などの心理社会的効果が報告されていた。また、安全性について、アロマセラピー/マッサージと音楽/音楽療法は、ガイドラインに実施時の注意点が示されており、音楽/音楽療法、アートセラピー、呼吸法/リラクセーション法は、患者の好みへの配慮や実施者に訓練が必要であることが指摘されていた。【結論】: 今回選出した5 種類のCAMは、有用な看護介入となる可能性が高く、簡便な方法を考案し、注意点を守り、患者の反応を見ながら実施することで、安全も保証できると考えられた。Purpose: This paper describes a literature review conducted effect and safety of selective Complementary and Alternative Medicine (CAM) for easy to use at the oncology nursing practice. Methods: ICHUSHI (Japanese database), MEDLINE, and CINAHL were searched from January 1, 2005 to April 7, 2010 using selected CAM terms which were aromatherapy/massage, music/music therapy, art therapy, breathing/relaxation and tapping touch. And guideline of CAM, Cochrane Database Systematic Review, and systematic review from Oncology Nursing Society were used to consider their effect and safety, too. Results: The selective CAM was not recommended into practice strongly in guidelines. However, it was showed to effect of reducing patient's symptoms such as pain or fatigue and psychosocial effect such as reducing anxiety or promoting communication in small sample studies or qualitative studies. Guidelines included of caution for use aromatherapy/massage and music therapy. And it indicated that music/music therapy, art therapy, and breathing/relaxation need to be select by patient's preference or using by trained therapists. Conclusion: These selective CAM can be useful and keep patient's safety at the oncology nursing practice, if we follows safety methods and skilled in practice settings.
著者
源河 朝治 神里 みどり
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.87-96, 2022 (Released:2022-07-28)
参考文献数
37

【目的】放射線療法後の頭頸部がんサバイバーにおける晩期有害事象と社会的困難との関連を明らかにする.【方法】照射後1年以上が経過した頭頸部がんサバイバーの症状を既存の疾患特異的QOL尺度の一部で評価した.分析は記述統計を行い,社会的困難と晩期有害事象および基本的属性との関連を検討した.【結果】対象者は73人(回収率70.8%)であった.晩期有害事象は口腔乾燥の有症率および重症度が最も高かった(79.5%).また,社会的困難は会食時の困難の有症率が最も高く(87.7%),会話困難の重症度が最も高かった.照射後5年以上経過した群は症状の重症度が高く,社会的困難と晩期有害事象には有意な正の相関がみられた.社会的困難は嚥下障害と唾液異常,手術歴と関連していた.【結論】頭頸部がんサバイバーは長期にわたり複数の晩期有害事象と社会的困難を有していた.今後は外来にて包括的なアセスメントとケアを行う必要がある.
著者
清水 かおり 神里 みどり
雑誌
沖縄県立看護大学紀要 = Journal of Okinawa Prefectural College of Nursing (ISSN:13455133)
巻号頁・発行日
no.12, pp.55-64, 2011-03

【背景】離島で勤務する看護職は地理的特徴から継続教育の機会が得られにくく、知識・情報入手手段も限られている。これらは、人材確保の難しさや、早期離職の一因になっていることが予測される。そのため、へき地・離島で働く看護職が学習や相談を受けられるようなサポートをはじめとする支援体制をつくる必要がある。【目的】本研究の目的は、ICTを活用して離島で勤務する看護職者間のコミュニケーションの輪(ネットワーク)を作ること、離島診療所看護師が抱える問題を抽出しサポート体制について検討することである。【方法】研究参加の同意が得られた沖縄県内の離島診療所看護師を対象とし、半構成的面接法による個人インタビュー、ビデオカンファレンスの会議内容、ICTでのチャットからデータを得た。ICT環境として音声はskypeの会議通話、画像は沖縄県立看護大学の遠隔講義システム(FCS)を用いた。【結果】3名の離島診療所看護師が本研究に参加した。5回のビデオカンファレンスと2回の公開講座を発信した。ビデオカンファレンスの主な内容は自己紹介と各島の現況、看護実践上の振り返り、慢性疾患予備軍への働きかけ、保健師との取り組み報告、島の伝統行事と診療所看護師の関わり、死亡者・感染症患者の搬送方法、危機管理体制等であった。ビデオカンファレンス実施後は「他の島との情報交換が出来る」、「自分の島だけではないのだという安堵感」、「ビデオカンファレンスの便利さを感じる」、「繋がっている感じがする」、「孤立感が軽減した」、「モチベーションが上がる」、「愚痴ることができストレスが解消される」等の意見が聞かれた。また、ICT環境設定後、診療所看護師間でのSkypeによるチャット、電話での交流、島の行き来が行われるようになった。【考察】今回、市販のWebカメラ、FCSとSkypeという簡便なツールを用いて双方向のネットワークを確立することができ、参加者は他の離島看護師とのコミュニケーションの機会を得た。初めは大学側が中心となった交流であったが、自らVC以外での交流を持つようになった。それらを通して、離島の看護師間の交流が生まれ、相互作用が働いたと考える。|BACKGROUND: The nurses in the remote island are difficult to obtain continuing education and new information of nursing knowledge and limited communication with outside islands. These are cause of early resignation for nurses. Therefore, the making of the support system such as providing continuing education or consultation is necessary and indispensable. PURPOSE: To make the network system using Information Communication Technology (ICT) to support for remote area nurses. METHODS: The nurses, who want to join the support system with ICT, in remote island's clinic were recruited with snowball methods from the health care providers. We provide several videoconference with ICT to have meeting and chat for these nurses. Data were obtained by Semi-structured interviews, conversation of videoconference activities and chat from ICT. RESULTS: Three clinical nurses from different islands participated videoconference and individual interviews. Before we had videoconferences, they had problems; " a lack of relationships with other health care providers", "no Information", "isolation", "unable to attend professional meetings", "stress on interpersonal relationship with a medical doctors". We had 5 videoconferences and provided two open lectures for these nurses. The main contents of videoconferences were case conferences, review of nursing practices, island people's health problems and nursing intervention on traditional event. After the videoconferences, nurses have been reporting their positive interaction such as " feeling connecting with outside health care providers", " exchanging nursing knowledge" "using of ICT", "feel less isolated", "increasing of their own motivation", "refreshing themselves". After the videoconferences, these nurses have been making connections themselves by the telephone, skype chat, and meeting directly. CONCLUSIONS: Providing videoconferences and open lectures were a very supportive way to connect with remote island nurses.
著者
前川 厚子 安藤 詳子 神里 みどり 楠神 和男 新藤 勝久 田澤 賢次 門田 直美
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

「ストーマ保有者の生きる意欲とスキンケア行動にストーマ看護サービスが及ぼす影響」について当該3年間にわたり研究した。ストーマケアとそのリハビリテーションは医師からがんや炎症性腸疾患などの病名を告げられ、手術の説明を受けた時が始発であり、回復期、退院後の生活維持期、終末期までのライフスパンを含む。ストーマ保有者への聞き取り、患者会への参加観察と質問紙調査を通して課題を掘り下げ、以下を明らかにした。【成果の概要】1)ストーマ保有者の加齢に伴う課題:65歳以上の比率が60%を超え、生活課題は介護問題から緩和ケアまで拡大していた。虚弱・要介護状態にある高齢ストーマ保有者へのQOL保持、看看連携、訪問看護師と介護職の機能分担、ならびに終末期ケアの在宅基盤整備が重要であった。2)炎症性腸疾患によるストーマ保有者の課題:平成15年全国患者会調査で2,175名中285名(13.1%)、平均年齢39.8±12.9歳で性比1.6:1であった。手術創、ストーマ周囲と肛門周囲皮膚ケアのニーズは81%であった。人生の「生きがいなし」と答えたものが30%を占め、継続ケア提供時にはメンタルサポートが不可欠と考えられた。3)ストーマ保有者のライフサイクルと課題:多様な価値観と人生経験や生活背景について配慮をしながら個別的なケアを提供する必要がある。4)QOL課題:ストーマ造設に関連した治療の成績は向上し、5年無再発生存率は高くなってきたが、主観的な健康状態とストーマの局所状況はQOLと密接な関連を持つので、ケア困難時のマネジメントについては事例の集積と人的資源の整備が必要である。