著者
清水 一彦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、課程制大学院における伝統的な研究者養成型大学院のカリキュラムについて、日米の比較視点からこれまでの歴史と運用の実態を調査・研究し、わが国における運用改善の条件を提言することを目的とした。結論として、わが国の課程制大学院の発展のためには、次のような改革が求められる。(1)課程制大学院の実質化は、何よりもまず大学院教育の目標の明確化から始めなければならない。研究者養成と専門職養成の差異をはっきりさせ、授与される学位も明確に区別されるべきである。アメリカの大学におけるグラデュエート・スクールとプロフェッショナル・スクールとの明確な区別は、コースワークや論文、学位等において明白なものとなっている。(2)課程制大学院の実質化のためには、現在のような研究科や専攻、コースといった組織的な枠組みを廃止して、修士号や博士号の学位コースによる教育プログラムとして再構築される必要がある。わが国の場合、組織優先で教員所属組織に重点が置かれ、学生の教育や履修、コース選択といった課程あるいはプログラムの観点が軽視され過ぎている。(3)課程制大学院ではコースワークが重視され、カリキュラムの体系化・構造化が図られなければならない。修士課程2年、博士課程5年の標準年限や修了に必要な単位数については新たな見直しが必要である。修士課程でも博士課程でも30単位という規定は、課程制大学院の実質化を妨げるものとなっている。(4)学生の選択的学習による系統的履修の機会とともに集中的学習による学習効果の向上を図る必要がある。具体的には、GPAや履修アドバイス・システムの導入、サマーセッションを含めた学期制の検討などである。
著者
示村 悦二郎 青木 宗也 矢野 眞和 中西 又三 舘 昭 清水 一彦 今野 雅裕
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

平成3年6月に改正された大学設置基準は、各大学がそれぞれの教育理念・目的に基づいて個性豊かな教育を自由に展開していくことを可能にするとともに、その教育研究活動を自らの手で点検・評価することを求めている。本研究は、大学設置基準の改正以降の各大学のカリキュラム改革や自己点検・評価の状況など大学改革の実施状況を把握し、これについて調査研究するものである。平成5年度は、既存の関連調査等の資料やデータの収集・分析をもとに、改正された大学設置基準及び大学審議会答申等の趣旨がどの程度実現されているか、各大学・学部の理念・目的が十分反映された改革が行われているか、という視点に立って、改革の具体的な内容や方法も引き出せるような設問と選択肢の作成を行った。平成6年度は、前年度から準備を進めてきた、わが国の全大学・学部を対称としたアンケート調査を実施した。回収率は約95%という高率であった。解答には自由記述が多く、定量的な調査ではくみ取れぬような改革状況をかなり正確に把握できるものであったので、可能な限り原票に忠実に調査結果の集計作業を進めた。平成7年度は、前年度実施したアンケート調査の集計結果をもとに分析・検討作業を進めた。その際、(1)学生の受け入れに関する改革、(2)教育課程の改革、(3)教育方法の改善、(4)教員組織の改革、(5)研究条件の改革、(6)生涯学習、(7)学生生活への配慮、(8)自己点検・評価といった項目ごとに分析・検討を行った。その結果、改革は各方面にわたっているが、とりわけ一般教養的教育をはじめとする教育課程の改革が進んでいること、また、自己点検・評価については、その組織体性が整い、実施に積極的な姿勢を見せてはいるものの、その結果の公表についてはどちらかといえば消極的であること、などが明らかになった。