著者
清水 一彦
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.1-21, 2017

<p>江戸時代の識字率は学術的には高低が判断出来ないにもかかわらず,ドーアとパッシンの就学率推計値が発表された1960年代後半以降,それまでの低いという認識に代わって「江戸時代の識字率は高かった」という言説が主に一般出版で常識化した.一方,学術出版は一般出版での言説を等閑視することで消極的にではあるが「高い」という言説の常識化に加担した.この言説構成過程の機序を,出版学の立場から社会構成主義の分析ツールを利用し考察した.</p>
著者
清水 一彦
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.1-21, 2017 (Released:2020-10-30)
参考文献数
58

江戸時代の識字率は学術的には高低が判断出来ないにもかかわらず,ドーアとパッシンの就学率推計値が発表された1960年代後半以降,それまでの低いという認識に代わって「江戸時代の識字率は高かった」という言説が主に一般出版で常識化した.一方,学術出版は一般出版での言説を等閑視することで消極的にではあるが「高い」という言説の常識化に加担した.この言説構成過程の機序を,出版学の立場から社会構成主義の分析ツールを利用し考察した.
著者
清水 一彦
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.117-138, 2015-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
29

『読書世論調査』によれば,2005年ごろまでは若者は読書離れしていなかった.しかし,知識人,出版業界人,ジャーナリズムのアクター3者のバイアスが相互作用してつくられた「若者の読書離れ」という認識は,オーディエンスが“ここちよい”ものとして受容することで1980年代までには“常識”となった.本稿では当時の社会的な背景をふまえたうえで,なぜ「若者の読書離れ」という常識が構成されそして受容されたのかを論じる.
著者
清水 一彦
出版者
江戸川大学
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
no.25, pp.195-206, 2015-03

1956 年の流行語となった「もはや「戦後」ではない」は,同年版『経済白書』に記されている。戦後からの回復を通じての経済成長が終わったあとにくる難題にたいしての警句であったが,そういつまでも戦後でもあるまいといった「空気」を背景に,情報の送り手と受け手の相互作用で戦後を抜け出し高度成長へ向かう凱歌として解釈されることになった。その後もこの凱歌としての社会的記憶は,送り手にとっても受け手にとってもより"ここちよい"物語として再構成されつづけ,現在では,神武景気を経て『経済白書』は「もはや戦後ではない」と高らかに高度経済成長期突入を宣言した,とまで変容している。本稿は,このフレーズの社会的記憶が変容する過程を分析した。
著者
清水 一彦
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.30, 2020-03-15

1989 年を頂点とするバブルの経済的側面については,ジャーナリズムおよびアカデミズム的な視点から膨大な論述があり分析もされてきた。ただし,情報誌やライフスタイル誌などの誌面にあらわれるようなバブルの文化的側面については,それらがどのように社会的記憶として構成されてきたのか,管見の限りあまり論議されているようにはおもわれない。本稿では,バブル経済が破綻した後にもバブル文化は続き,時系列が混乱した状態で社会的記憶が構成されていることを論じる。ただし,論考の方向性は示せたもののまだ詰めは甘く,理論に基づく分析もこれからの,さらに論文には不必要な個人的な雑記も含まれる覚書(ノート)である。
著者
清水 一彦
出版者
日本教育行政学会
雑誌
日本教育行政学会年報 (ISSN:09198393)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.25-37, 1994

This paper aims to clarify the present situation and problems of university reform and to predict the transfiguration of universities in Japan. The Standards for the Establishment of Universities in Japan was broadened and simplified in July 1991. At the same time, a system of self-monitoring and self-evaluation was introduced. In response to the revision, each university is currently carrying out its own curriculum improvement and preparation of a self-evaluation system. In this paper the author discusses the most characteristic aspects of this university reform. These are as follows: 1. Improvement of the content and methods of education 2. Flexibility of the credit system 3. Reorganization of colleges of general education 4. Introduction of self-monitoring and self-evaluation 5. Priority policy regarding graduate schools Considering the actual situations of these reforms in Japanese universities, the author points out the diversification of universities as a future direction and the essential need to change faculty recognition as well as to promote so-called FD (Faculty Development) activities in conducting university reform successfully.
著者
溝上 智惠子 清水 一彦 歳森 敦 池内 淳 石井 啓豊 逸村 裕 植松 貞夫 宇陀 則彦 永田 治樹 長谷川 秀彦 石井 夏生利 呑海 沙織 孫 誌衒 松林 麻実子 原 淳之 井上 拓 佐藤 翔
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、大学教育の実質化を進展させるための学習支援サービスの1つとして、大学生の主体的学習を促進させる実空間「ラーニング・コモンズ」 (Learning Commons)に着目し、その現状と課題を明らかにした。1990 年代に、北米地域から導入・整備が始まったラーニング・コモンズは、現在各国の高等教育改革や大学図書館の状況を反映して、多様な形態で展開しつつあること、学習成果の視点からの評価はいずれの国でもまだ不十分な段階にあることが明らかになった。
著者
清水 一彦
出版者
日本教育行政学会
雑誌
日本教育行政学会年報 (ISSN:09198393)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.25-37, 1994-10-01 (Released:2018-01-09)
被引用文献数
1

This paper aims to clarify the present situation and problems of university reform and to predict the transfiguration of universities in Japan. The Standards for the Establishment of Universities in Japan was broadened and simplified in July 1991. At the same time, a system of self-monitoring and self-evaluation was introduced. In response to the revision, each university is currently carrying out its own curriculum improvement and preparation of a self-evaluation system. In this paper the author discusses the most characteristic aspects of this university reform. These are as follows: 1. Improvement of the content and methods of education 2. Flexibility of the credit system 3. Reorganization of colleges of general education 4. Introduction of self-monitoring and self-evaluation 5. Priority policy regarding graduate schools Considering the actual situations of these reforms in Japanese universities, the author points out the diversification of universities as a future direction and the essential need to change faculty recognition as well as to promote so-called FD (Faculty Development) activities in conducting university reform successfully.
著者
清水 一彦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、(1)アメリカの大学におけるオナーズ・プログラム(honors program)の導入過程及び歴史的発達過程を明らかにするとともに、(2)わが国の大学への導入・実践の可能性及びその諸条件を提言することを目的とした。本研究によって得られた知見は、次のようにまとめられる。1.選択制や単位制度を世界最初に開発したアメリカの大学では、量的システムの弱点を補強するためにオナーズコースを導入し、優秀な学生のための教授内容・方法の改善を図った。2.このオナーズコースは、当初から大学によって多種多様な形態で実践されていたが、その実践形態は大きく次の二つに分類できるものであった。一つは、2〜3の通常のコース(科目)が免除される「不完全タイプ」であり、二つは、大部分のコースが免除されオナーズ試験が課せられる「完全タイプ」である。3.今日多くの大学で実践されているオナーズ・プログラムは、初期の形態とはやや異なり、通常のコースとは別に固有のコースを設けたり、プロジェクト方式のコースを設けたりする大学もみられる。また、ハイスクールと大学のアーティキュレーション(接続)の改善に寄与し、1年次プログラムや下級年次プログラムといった移行の円滑を図るプログラムと結びつける場合もある。4.オナーズ・プログラムの実践は、大学間というより領域や専門分野において著しい差異があり、それぞれの特性に応じた多様な形態が可能である。わが国の場合、飛び入学という特別措置的なシステムの中に類似したものがみられる、入試制度の多様化への対応ではなく、教育プログラムやカリキュラムの編成あるいは教授法の改善の中で導入される必要がある。
著者
清水 一彦
出版者
日本教育行政学会
雑誌
日本教育行政学会年報 (ISSN:09198393)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.239-254, 1990-10-05 (Released:2018-01-09)

This paper aims to clarify the structural characteristics and problems of the credit system in Japanese universities by analyzing its transitional process. First of all, the author tried to settle the definition of the credit system and to set up the following 5 areas for studies : "one credit", "total credits", "distribution of credits", "optional registration", and "evaluation". Then, focusing on these five points, the author analyzed the transitional process of the credit system, especially during the period from the enactment of "the Standard of the University Establishment" in 1956 up to the present time. As a result, the study has yielded two findings as follows: 1. As for the standard of the credit system, there appeared to be two big tendencies. One is bringing to completeness the meaning of the credit system during the time from the enactment of the present standard to the period of university strife in the late 60's. The other is the trend of the flexibility of the system after that time until now. As to the former, the regulations enforced at the beginning were not properly applied due to traditional teaching methods, the lack of readiness of libraries and other facilities. Therefore, there was an attempt to include the significance of the credit system in the standard and to initiate the method of credit calculation and the addition of the number of credits. As to the latter, the problem of general education came to the surface amid the university strife and, in relation to this, each university was largely entrusted with autonomous judgment. Further, more flexible steps were taken to promote independent self-reform in each university and its faculties. However, in the process there were increasing conditional clauses and a more complicated standard was created. 2. According to the framework set for this analysis, the special characteristics of the credit system and its concrete problems are found as follows: "one credit": This expression was somewhat changed. However, the fundamental principle was maintained. The credit calculation method of teaching methods with more conditional clauses remained. "total credits": No particular problems existed. However, the upper limitation of increased credits was set up. "distribution of credits": With the introduction of fundamental education subjects, problems surfaced about the credits of general education subjects, while there was a tendency to put emphasis on professional education subjects. "optional registration": Flexible steps were taken, which was the biggest change. There was also a plan for subdividing the number of credits for each subject, and it had little regard for the opportunity of students in choosing subjects and their annual registration. "evaluation": Although many problems were pointed out, there was no change in the regulations and it still had little view of the educational effects. Finally, considering the actual situations and variety of the universities nowadays, the author would like to point out that the direction of the standard revision is not yet satisfactory. It is time that there should be an establishment of a new credit system which is particularly applicable to Japanese universities.
著者
清水 一彦
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.117-138, 2015

<p>『読書世論調査』によれば,2005年ごろまでは若者は読書離れしていなかった.しかし,知識人,出版業界人,ジャーナリズムのアクター3者のバイアスが相互作用してつくられた「若者の読書離れ」という認識は,オーディエンスが"ここちよい"ものとして受容することで1980年代までには"常識"となった.本稿では当時の社会的な背景をふまえたうえで,なぜ「若者の読書離れ」という常識が構成されそして受容されたのかを論じる.</p>
著者
清水 一彦
出版者
江戸川大学
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
no.26, pp.159-172, 2016-03

出版とは情報を編集して公開する行為である。出版行為の結果としての出版物には,書籍,雑誌,ムック,コミックス,新聞,そして印刷メディアからの拡張である電子書籍,電子雑誌などがある。江戸川大学マス・コミュニケーション学科出版研究ゼミナールでは,新聞記事制作も出版行為の一部として千葉日報社主催のチバ・ユニバーシティ・プレス(CUP)に参加している。本稿ではCUP の教育効果を個別的に論考する。具体的な教育的効果としては,①体感的にジャーナリズム的な思考を獲得できること,②新聞に書くことでうまれる責任と社会的影響を実感できること,③メンタル面でのストレスが連帯感と技術習得をうながすこと,そして④取材量の確保ができることの4 点があげられる。
著者
清水 一彦
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.25, 2015-03-15

1956 年の流行語となった「もはや「戦後」ではない」は,同年版『経済白書』に記されている。戦後からの回復を通じての経済成長が終わったあとにくる難題にたいしての警句であったが,そういつまでも戦後でもあるまいといった「空気」を背景に,情報の送り手と受け手の相互作用で戦後を抜け出し高度成長へ向かう凱歌として解釈されることになった。その後もこの凱歌としての社会的記憶は,送り手にとっても受け手にとってもより“ここちよい”物語として再構成されつづけ,現在では,神武景気を経て『経済白書』は「もはや戦後ではない」と高らかに高度経済成長期突入を宣言した,とまで変容している。本稿は,このフレーズの社会的記憶が変容する過程を分析した。
著者
張 袁松 清水 一彦 塩見 邦博 梶浦 善太 中垣 雅雄
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1_39-1_46, 2008 (Released:2008-10-06)
参考文献数
18

日本産ジョロウグモ(Nephila clavata)の牽引糸遺伝子のcDNAをクローニングし,その塩基配列を初めて報告した。塩基配列から推定される日本産ジョロウグモ牽引糸タンパク質のアミノ酸配列をカイコのフィブロインH鎖や他のクモ牽引糸のものと比較した。牽引糸の繰り返し配列においてAn,(GA)nやGGX配列など共通の特徴を確認できた。クモ牽引糸タンパク質の繰り返し配列のコドン使用頻度をカイコのH鎖フィブロインと比較すると,同様の傾向があった。しかしながら,親水性と疎水性の分布は両者で大きな違いが見られた。引張り強度試験では,日本産ジョロウグモ牽引糸がカイコ繭糸よりも明らかに強いことが分かった。これらのことから,クモ糸を吐くカイコを作出してカイコH鎖フィブロインをクモ牽引糸タンパク質と置き換えること,あるいは両者の混合糸を作らせることにより,糸の強さや性状の異なる新しいシルクの創出が期待される。