著者
渡辺 登喜子 河岡 義裕
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.155-162, 2016-12-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

地球上には膨大な数のウイルスが存在しており,多くのウイルスが宿主において病気を起こすことなく共存している.これまで宿主にとって「害」であると見なされてきたウイルスの感染が,宿主のゲノム進化や生体機能に有利に働くことを示唆する最近の研究結果は,ウイルス学の既成概念を大きく覆そうとしている.これまでのウイルス学では,病原微生物であるウイルスを対象とした研究に偏重しており,自然界でのウイルスの存在意義を解明する自然科学的な研究はあまり行われてこなかった.新学術領域「ネオウイルス学」では,ウイルスを地球生態系の構成要素の一つとして捉え,生態系におけるウイルスのレゾンデーテル(存在意義)を探ることを目指す.
著者
渡辺 登喜子 金田 式世 岩田 千鶴子 [ 他 ]
出版者
大垣女子短期大学
雑誌
大垣女子短期大学研究紀要. 調査・研究編 (ISSN:09197745)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.43-55, 1993-03-11

本学歯科衛生科学生159名について,1991年4月,食物摂取状況調査,血液検査及びアンケート調査を行い,次の様な結果を得た。1)調査対象者の身長・体重は同年代女性の全国平均とほぼ同じであった。肥満者は10%でやせは15.7%であった。アンケート調査の結果,他短大生と同様に肥満ではないにもかかわらず肥満と認識する学生が多く,やせ願望が高率であった。2)1日の摂取食品数は18.8±5.25であった。他短大生の報告とほぼ同じであるが,目標値の30食品目に対して63%の充足率であった。3)栄養素等の摂取状況は,ビタミンC,ビタミンA,脂質,ビタミンB_1については充足率は100%をこえ,たん白質,ビタミンB_2はほぼ100%であった。充足率の低いものはカルシウム74.1%,鉄76.2%,ナイアシン86.9%,エネルギー86.9%であった。脂質のエネルギー比が30.4%と高く,穀類エネルギー比が37.2%と低い値であった。4)食品群別摂取状況は充足率100%を越えているものは穀類と藻類であった。充足率が低く摂取上問題と考えられる食品群は,豆類45%,乳類56%,野菜類63%であった。この結果はアンケート調査の結果とも一致した。5)朝食を食べない者,時々食べない者が全体の33.3%で,昼食を食べない者,時々食べない者が14.5%で,夕食を食べない者,時々食べない者が9.4%であった。6)血液検査の結果,貧血の指標ともなるヘモグロビン12g/dl以下の者は10.5%であった。又高脂血症の指標ともなる総コレステロール240mg/dl以上の者3.3%,中性脂肪160mg/dl以上者5.3%,HDL-コレステロール47mg/dl以下の者2%であった。この値は平成1年国民栄養調査の結果^1)(30〜39歳女)より低い値であった。
著者
渡辺 登喜子 渡辺 真治 河岡 義裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.10, pp.2705-2713, 2013-10-10 (Released:2014-10-10)
参考文献数
11

H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルス(以後,“H5N1ウイルス”と呼ぶ)が,世界各地に拡大している.それに伴い,ヒトにおける感染例も増えてきており,これまでに600人ほどの感染が確認され,60%近い致死率が報告されている.確認されている感染例が限られていることから,ヒトには比較的感染しづらく,感染したとしてもヒトからヒトへの伝播が起こりにくいと考えられている.しかし,ウイルス遺伝子の交雑やウイルス蛋白質のアミノ酸変異により,ひとたびH5N1ウイルスが,これまでよりヒトへ感染しやすくなり,さらにヒトからヒトへと効率よく伝播する能力を獲得すれば,致死率の高いH5N1ウイルスが世界的大流行(パンデミック)を起こす危険性がある.本稿では,最近の研究から得られた知見を元に,H5N1ウイルスがパンデミックを起こす可能性について議論したい.
著者
河岡 義裕 朝長 啓造 澤 洋文 松浦 善治 川口 寧 渡辺 登喜子 鈴木 信弘 高橋 英樹 長崎 慶三 川野 秀一
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-06-30

(1)計画・公募研究の推進:計画・公募研究を、研究活動支援システム、領域班会議などを通じて積極的にサポートし、計画研究とともにネオウイルス学創成に目がけた研究を推進している。高度情報処理支援として、計画研究班および公募研究班に対し、スーパーコンピュータシステム・シロカネの利用による高速処理体制を構築するとともに、シロカネ上でデータ解析プログラムの連携・共有を行った。(2)領域班会議の開催:平成30年度は、4月13~15日に高知県において第4回領域班会議、また 11月11~13日に兵庫県淡路島において、第5回領域班会議を行い、 各計画・公募研究班による未発表データを含めた進捗報告を行った。会議では、活発な議論が展開され、共同研究や技術提供が活性化されるとともに、領域内の研究者間の有機的な連携が強化された。また今年度は、 テレビ会議システムを用いて、月に一度の定例会を行い、各計画・公募研究班の研究進捗の報告などを行なうことによって、領域全体の研究の推進を図った。(3)広報活動:本領域の研究活動を国民に広く発信するため、ホームページ/フェイスブックページ/ツイッターにおいて、平成30年度は26/29/169件の記事を掲載した。フォロワー数は平成29年度と比較して、フェイスブックページは160から206名、ツイッターは152から239名に増加した。また平成30年度は、領域の研究内容の概説を掲載したニュースレターを2回発行した。さらに活発なアウトリーチ活動を行なった。
著者
河岡 義裕 渡辺 登喜子 岩附 研子 山田 晋弥 植木 紘史
出版者
東京大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2018-10-09

地球レベルでの環境変化や野生動物との生活圏域の近接化により、新興感染症となりうる人獣共通感染症が、ヒト社会に侵入する可能性は増大している。最近の研究から、アフリカ、南米、アジア等の国々が、人獣共通感染症が発生しやすいホットスポットであると予測されているが、その実態は未だ不明である。そこで本研究では、アフリカのシエラレオネ、南米のボリビア、東南アジアのインドネシアにおいて、人獣共通感染症を引き起こすウイルスの流行状況を把握するために、海外共同研究者と連携して、ヒトや野生動物における血清学的調査、および野生動物が保有するウイルスの分離・同定を行う。平成30年度は、10月に南米のボリビアを訪問し、共同研究者であるガブリエル・レネ・モレノ自治大学のJuan Antonio Cristian Pereira Rico博士および川森文彦博士と共に、野生動物サンプリングのための予備調査を行った。また2月には、アフリカ・シエラレオネを訪問し、シエラレオネ大学のAlhaji N’jai博士の協力のもと、Moyamba地区においてコウモリを捕獲し、臓器サンプリングを行った。現在、採取したサンプルの詳細な解析を行なっている。さらにシエラレオネでは、ヒトにおけるウイルス感染症の流行状況を調べるための血清学的調査を実施する準備として、各医療機関や保健省などを訪問し、協力研究者との研究打ち合わせを行った。またいくつかのウイルス抗原に対するIgG、IgM抗体を検出するELISAの系を確立した。