著者
若林 秀隆
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.81-86, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
16

誤嚥性肺炎患者には,発症前からサルコペニアや低栄養を認めることが多い.また,誤嚥性肺炎の発症でサルコペニアや低栄養がさらに悪化して,摂食嚥下機能や呼吸機能が低下しやすい.そのため,誤嚥性肺炎とサルコペニアの悪循環を断つことが,誤嚥性肺炎予防に重要である.それには,リハビリテーション栄養の視点による医原性サルコペニアの予防や,攻めのリハビリテーション栄養管理によるサルコペニアの改善が求められる.全身のサルコペニア予防が,摂食嚥下障害や誤嚥性肺炎の予防につながる.また,誤嚥性肺炎入院時の「とりあえず安静」「とりあえず禁食」「とりあえず水電解質輸液」の指示が,医原性サルコペニアやサルコペニアの摂食嚥下障害の原因であり,誤嚥性肺炎の再発につながる.サルコペニアとリハビリテーション栄養を視野に入れたチーム医療を臨床現場で実施して,医原性サルコペニアと誤嚥性肺炎を予防してほしい.
著者
小山 珠美 若林 秀隆 前田 圭介 篠原 健太 平山 康一 社本 博 百崎 良
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.14-25, 2020-04-30 (Released:2020-08-31)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【目的】当院では,チーム医療による早期経口摂取開始に取り組んできた.誤嚥性肺炎患者に対する入院後早期の経口摂取開始が,在院日数と退院時経口摂取に及ぼす影響を検討した.【対象と方法】2014 年4 月から2018 年3 月までに誤嚥性肺炎で当院に入院した65 歳以上の380 名を対象とした.死亡者を除外した.年齢,性別,要介護度,入院前生活場所,入院時肺炎重症度分類(ADROP),入院後経口摂取開始までの日数,入院後2 日以内の経口摂取開始,リハビリテーションの有無,経口摂取開始後発熱,在院日数,退院時摂食嚥下レベル(FOIS),退院時経口摂取の有無,自宅退院の有無を診断群分類包括評価(DPC)データから後方視的に調査した.また,チーム医療無群とチーム医療有群に分類し,両群を比較したうえで,早期経口摂取による在院日数,退院時経口摂取への影響を検討した.統計解析は単変量解析としてカイ2 乗検定,t 検定,Mann-Whitney のU 検定,多変量解析として重回帰分析,ロジスティック回帰分析を行い,有意水準は5% 未満とした.【結果】対象者の年齢(平均値±標準偏差)は85.9±7.0 歳,経口摂取開始日(中央値)は3 日,在院日数(中央値)は21 日,退院時経口摂取は294 名(77%)であった.チーム医療有無群で比較すると,単変量解析では,入院時A-DROP, リハビリテーション介入,退院時FOIS, 退院時経口摂取,在院日数に有意差がみられた.多変量解析では,在院日数に有意に関連した因子は,要介護度(β =-0.215),入院前生活場所(β= 0.146),チーム医療(β=-0.151),入院後2日以内経口摂取開始(β=-0.134),リハビリテーション介入(β = 0.145),経口摂取開始後発熱(β = 0.202),退院時FOIS(β =-0.280),退院先(β = -0.184)であった.退院時経口摂取に有意に関連した因子は,年齢(オッズ比= 1.039),チーム医療(オッズ比= 3.196),入院後2 日以内の経口摂取開始(オッズ比= 4.095)であった.【考察】急性期医療でのチーム医療による早期経口摂取開始は,在院日数を短縮し,退院時経口摂取率を高める可能性が示唆された.
著者
若林 秀隆
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.124-128, 2022-08-15 (Released:2022-09-15)
参考文献数
5

サルコペニアの摂食嚥下障害データベースのデータを使用して, GLIM (Global Leadership Initiative on Malnutrition) 基準の低栄養とAWGS (Asian Working Group for Sarcopenia) 2019のサルコペニアの関連を検討した. 全身のサルコペニアを評価していた460人のデータを使用して, GLIM基準の低栄養とサルコペニアのクロス解析を実施した. 低栄養を300人 (65%), サルコペニアを404人 (88%) に認めた. GLIM基準低栄養の場合におけるサルコペニアの感度71.5%, 特異度80.3%, 陽性的中率96.3%, 陰性的中率28.1%であった. GLIM現症該当の場合におけるサルコペニアの感度100%, 特異度62.5%, 陽性的中率95.1%, 陰性的中率100%であった. GLIM病因該当の場合におけるサルコペニアの感度71.5%, 特異度46.4%, 陽性的中率90.6%, 陰性的中率18.4%であった, GLIM基準低栄養でサルコペニアを正確に診断することは難しいが, 診断の参考にはなる. GLIM現症に非該当で低栄養ではないと診断できれば, サルコペニアでないことを正確に診断できる. GLIM病因単独では, サルコペニアの診断にあまり貢献しない. 低栄養とサルコペニアに関連は認めるものの別の概念であるため, 低栄養はGLIM基準, サルコペニアはAWGS2019でそれぞれ診断することが望ましいと考える.
著者
若林 秀隆
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.40-46, 2022-01-18 (Released:2022-04-13)
参考文献数
36
被引用文献数
1

運動耐容能は,低栄養,貧血,肥満,サルコペニア,サルコペニア肥満でも低下する.サルコペニアで運動耐容能が低下する一因として,呼吸筋サルコペニアとサルコペニア性呼吸障害が考えられる.運動耐容能の改善には,リハビリテーション治療が重要である.しかし,食事摂取量が不十分な場合には,積極的な持久性トレーニングなどのリハビリテーション治療を行うと,運動耐容能はむしろ低下する.そのため,栄養状態に問題のある患者の運動耐容能を最大限改善させるためには,リハビリテーション治療単独では不十分で,栄養療法の併用が必要である.運動耐容能低下の原因に見合ったリハビリテーション栄養を実践してほしい.
著者
苅部 康子 若林 秀隆
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.1526-1530, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
20

【目的】ロイシン高配合必須アミノ酸(LEAA)混合物摂取が、介護老人保健施設入所の要介護高齢者の日常生活活動(ADL)改善に有効か検討する。【方法】65歳以上の要介護高齢者(n=30、84.9±5.6歳、男性n=8、女性n=22)を対象とした。研究デザインは前後比較試験。ロイシン高配合必須アミノ酸(必須アミノ酸3g、ロイシン1.2g、30kcal)を通常の食事に加え12週間摂取した。一次アウトカムをFunctional Independence Measure(以下、FIMと略)利得、二次アウトカムをMini Nutritional Assessment Short-Form(以下、MNA®-SFと略)変化量とした。解析方法は、t検定、Mann-Whitney U検定と12週間の変化量とした。【結果】FIM利得とFIMスコアの前後の変化は、FIM利得(4.2±5.8、P<0.01)、FIM運動項目(3.5±4.8、P<0.01)で、有意差を認めた。MNA®-SFの変化量(2.2±2.6、P<0.01)に有意差を認めた。Vitality Index(P<0.01)および左手の握力(P<0.01)に有意差を認めた。【結論】ロイシン高配合必須アミノ酸(LEAA)混合物は、要介護高齢者のADL改善と栄養改善に影響を与える可能性がある。
著者
若林 秀隆
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.627-632, 2021-06-18 (Released:2021-08-16)
参考文献数
12

サルコペニア肥満とは,サルコペニアと肥満を合併した病態である.サルコペニア肥満に関する論文は多数あるが,現時点で統一した定義,診断基準,カットオフ値は存在しない.欧州と日本で現在,検討中である.回復期リハビリテーション病棟では,サルコペニアと体脂肪率で診断したサルコペニア肥満が,ADL自立度や自宅退院率と関連するため,その評価と対応が重要である.運動療法ではレジスタンストレーニングと持久性トレーニングが重要である.栄養療法では栄養のゴールを設定して,1日エネルギー必要量=1日エネルギー消費量-1日エネルギー蓄積量とした攻めの栄養療法が重要であり,ケアプロセスを活用すべきである.
著者
黄 啓徳 百崎 良 宮崎 慎二郎 若林 秀隆 社本 博
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.303-315, 2019-09-01 (Released:2019-09-20)
参考文献数
35
被引用文献数
4 7

急性疾患に対するリハビリテーションと栄養療法の併用効果検証を目的としたシステマティックレビューを行った.MEDLINE,CENTRAL,EMBASEと医中誌データベース検索の986件と他ソース16件の論文からリハビリテーション治療中の急性疾患症例に対する栄養介入効果を検証した2件のランダム化比較試験を抽出した.コクランrisk of bias評価とランダム効果モデルを用いた解析,GRADEアプローチでエビデンスの質評価を行った.Jonesらの研究ではQOL改善効果がなかった(標準化平均差[SMD] 0.55, 95%信頼区間[CI] -0.05 - 1.15; P = 0.12)が,Hegerovaらの研究では筋肉量(SMD 0.65; 95%CI, 0.36 - 0.93; P < 0.00001)とADL(SMD 0.28, 95%CI 0.00 - 0.56; P = 0.05)に改善効果を認めた.急性疾患に対するリハビリテーション栄養療法は筋肉量増加とADL改善に効果的な可能性がある.しかしアウトカム全般にわたる全体的エビデンスの質は低く,さらに研究が必要である.
著者
若林 秀隆 栢下 淳
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.871-876, 2014 (Released:2014-06-23)
参考文献数
9

【目的】摂食嚥下障害スクリーニング質問紙票であるEAT-10の日本語版を作成し、信頼性・妥当性を検証する。【対象及び方法】EAT-10英語版の順翻訳、逆翻訳、英語原版と逆翻訳の整合性の検討を行い、EAT-10日本語版を作成した。次に摂食嚥下障害もしくは摂食嚥下障害疑いの要介護高齢者393人を対象にEAT-10日本語版を実施した。信頼性を内的整合性であるクロンバッハのα係数で、妥当性を臨床的重症度分類とスペアマンの順位相関係数でそれぞれ検討した。【結果】EAT-10日本語版を実施できたのは237人(60%)であった。クロンバッハのα係数は0.946であった。EAT-10を実施できない場合、摂食嚥下障害と誤嚥を有意に多く認めた。EAT-10と臨床的重症度分類に有意な負の相関(r=-0.530、p<0.001)を認めた。EAT-10で3点以上の場合、誤嚥の感度0.758、特異度0.749であった。【結論】EAT-10日本語版の信頼性・妥当性が検証された。EAT-10日本語版は、摂食嚥下障害スクリーニングに有用な質問紙票である。
著者
白石 愛 吉村 芳弘 鄭 丞媛 辻 友里 嶋津 さゆり 若林 秀隆
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.711-717, 2016 (Released:2016-04-26)
参考文献数
35
被引用文献数
1

【目的】高齢入院患者の口腔機能障害の実態ならびに、口腔機能障害とサルコペニア、低栄養との関連性を明らかにする。【方法】2013年6月より10月までに連続入院した65歳以上の患者108名(男性55名、女性53名、平均年齢80.5±6.8才)を対象とした横断研究。改定口腔アセスメントガイド(ROAG)を用いて口腔機能状態を評価し、サルコペニアや栄養状態との関連性を解析した。【結果】軽度の口腔機能障害を59人(54.6%)、中?重度の口腔機能障害を34人(31.5%)に認めた。ROAGスコアに関連する因子として、年齢、サルコペニアの有無、MNA-SFスコア、経口摂取の有無、FIM運動項目などが抽出された。【結論】多くの高齢入院患者に口腔機能障害を認め、口腔機能障害とサルコペニア、低栄養との関連が示唆された。ROAGは入院時口腔機能スクリーニングとして有用性があると考えられた。
著者
若林 秀隆
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.185-191, 2013 (Released:2014-03-03)
参考文献数
33
被引用文献数
1

身体的活動性の術後早期自立を高めるリハビリテーションには,術後の早期離床・運動とプレハビリテーションがある.術後に安静臥床を継続すれば,身体的活動性の自立が遅れるのは当然と思えるが,術後の早期離床・運動に関するエビデンスは乏しい.しかし,周術期ケアの中に早期離床・運動を含むことは強く推奨されている.待機的結腸手術や待機的直腸・骨盤手術では,手術当日に2 時間の離床,手術翌日から6 時間の離床をすすめる.ICU 患者では,早期離床・運動に関するエビデンスがあり,早期から関節可動域訓練,座位・立位訓練,呼吸リハビリテーションなどを行う.  プレハビリテーションとは,術前に身体機能を強化することで術後の合併症予防,身体的活動性の早期自立,早期退院を目指す介入である.ADL,身体機能,栄養状態に問題がある高齢者には,運動療法,栄養療法,不安軽減を含めた包括的なプレハビリテーションが有用な可能性がある.
著者
若林 秀隆
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.1045-1050, 2013 (Released:2013-10-25)
参考文献数
25
被引用文献数
4

高齢者では軽度の侵襲や短期間の安静臥床でも廃用症候群を認めやすい。高齢者の廃用症候群の約9割が低栄養であり、廃用症候群は安静臥床と低栄養の両者による病態といえる。廃用症候群では二次性サルコペニアを認めることが多く、サルコペニアの原因の適切な評価と対応が重要である。高齢者の廃用症候群では低栄養、低アルブミン血症、悪液質を認める場合に機能予後が悪い。そのため、早期離床や機能訓練だけを行うのではなく、リハビリテーション栄養管理を行うことが重要である。侵襲の異化期の場合、関節可動域訓練や呼吸訓練だけでなく、座位、立位、歩行訓練を実施する。侵襲の同化期では筋力増強訓練や持久力増強訓練を行う。飢餓の場合、筋力増強訓練や持久力増強訓練は禁忌であるが、安静臥床も除脂肪体重がより減少するため不適切である。悪液質の場合、抗炎症作用のあるエイコサペンタエン酸や運動療法が有用な可能性がある。
著者
衛藤 恵美 今岡 信介 森 淳一 若林 秀隆
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN (ISSN:24344966)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.10-16, 2022 (Released:2022-08-25)
参考文献数
43

要旨:【目的】回復期リハビリテーション(以下,リハと略)病棟に入院した80歳以上の脳卒中患者の転帰に口腔機能がどのように影響するか明らかにする.【対象と方法】80歳以上の脳卒中患者241例を退院先が在宅か施設かで群分けし,基本属性,医学的属性,入院時および退院時の機能的自立度,口腔機能を後ろ向きに検討した.また転帰先への影響因子とカットオフ値を検討した.【結果】在宅群は,入院時ROAG得点は,有意に低値であり,入院時FIM運動項目,認知項目,退院時FIM総得点,FIM運動項目,認知項目は,有意に高値であった.多重ロジスティック回帰分析の結果,入院時ROAG総得点(オッズ比1.19)とFIM運動項目(オッズ比0.96)が在宅退院に影響を及ぼす関連要因として抽出された.またカットオフ値は,入院時ROAG総得点(≦13点)とFIM運動項目(≧30.1点)であった.【結論】入院時の口腔機能から,在宅退院が困難と予測される高齢脳卒中患者の抽出と目標設定に寄与する可能性がある.
著者
若林 秀隆
出版者
一般社団法人 日本フットケア学会
雑誌
日本フットケア学会雑誌 (ISSN:21877505)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.171-176, 2018-12-25 (Released:2018-12-25)
参考文献数
7

【要旨】フットケアを要する足病患者では,低栄養やサルコペニアを認めることが少なくない.そのため,足病患者にはリハビリテーション(以下,リハ)栄養の考え方が重要である.リハ栄養とは,国際生活機能分類による全人的評価と栄養障害・サルコペニア・栄養摂取の過不足の有無と原因の評価,診断,ゴール設定を行ったうえで,障害者やフレイル高齢者の栄養状態・サルコペニア・栄養素摂取・フレイルを改善し,機能・活動・参加,QOL を最大限高める「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」である.質の高いリハ栄養の実践には,リハ栄養ケアプロセスが有用である.特に従来からの栄養ケアマネジメントに存在しない,リハ栄養診断とリハ栄養ゴール設定のステップが重要である.リハ栄養介入では,レジスタンストレーニングと BCAA(分岐鎖アミノ酸)を近いタイミングで摂取することが望ましい.一方,リハ薬剤とは,フレイル高齢者や障害者の機能・活動・参加,QOL を最大限高める「リハからみた薬剤」や「薬剤からみたリハ」である.すべての足病患者に低栄養,サルコペニア,ポリファーマシーの存在を疑って,必要な場合にはリハ栄養とリハ薬剤を実践してほしい.
著者
橋田 直 若林 秀隆
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.97-101, 2019 (Released:2019-07-20)
参考文献数
25

近年の高齢社会の中で、がん患者においても高齢者の割合が増えてきている。そのため栄養障害やサルコペニアを呈する患者も多く、がんリハビリテーションと栄養療法はより重要なものとなってきている。がんリハビリテーションは機能回復を目指すだけでなく、予防的、回復的、維持的、緩和的の4つの段階に分けられる。周術期や根治を目指した化学療法・放射線療法から進行がん、末期がん患者や、嚥下障害を呈するがん患者においてもリハビリテーション介入やまた栄養療法も同時に必要な場合がある。がん治療と機能回復だけでなく、ADL、quality of life(以下、QOLと略)の向上を目指した介入が望まれる。
著者
若林 秀隆
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.270-281, 2011-04-18 (Released:2011-05-09)
参考文献数
46
被引用文献数
11 4

Malnutrition often occurs in patients with disabilities. The prevalence of malnutrition in geriatric rehabilitation was higher than in hospital (50.5% vs 38.7%) according to MNA classification. Nutrition care management of patients with disabilities is often inappropriate. As nutritional status is associated with rehabilitation outcome, a combination of both rehabilitation and nutrition care management may be associated with a better outcome. This concept is defined as rehabilitation nutrition. Rehabilitation nutrition aims to assess patients according to the International Classification of Functioning, Disability and Health including nutrition status and to practice a rehabilitation nutrition care plan under adequate prognosis prediction. It is not enough for patients with disabilities to coordinate only their rehabilitation or clinical nutrition. Rehabilitation nutrition care management is important to improve their activities of daily living and quality of life. Sarcopenia is a syndrome characterized by progressive and generalized loss of skeletal muscle mass and strength. Primary sarcopenia is considered to be age-related when no other cause is evident, other than ageing itself. Secondary sarcopenia should be considered when one or more other causes are evident, such as activity-related sarcopenia, disease-related sarcopenia, or nutrition-related sarcopenia. Activity-related sarcopenia can result from bed rest, deconditioning, or zero-gravity conditions. Disease-related sarcopenia is associated with invasion (acute inflammatory diseases), cachexia (cancer, advanced organ failure, collagen diseases, etc.), and neuromuscular disease. Nutrition-related sarcopenia results from inadequate dietary intake of energy and/or protein. Treatment, including rehabilitation and nutrition care management, differs according to the causes of sarcopenia. No nutrition care, no rehabilitation. Nutrition is a vital sign for rehabilitation.
著者
若林 秀隆
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.256-259, 2020 (Released:2021-01-15)
参考文献数
5

狭義の腸管リハビリテーション (以下リハ) は,≒腸管機能改善と使用されることが多い. 一方, 広義の腸管リハは, 腸管不全障害のある方の生活機能やQOLを最大限高めることである. 広義の腸管リハには, リハ栄養の考え方が有用である. リハ栄養とは, 国際生活機能分類による全人的評価と栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の有無と原因の評価, 診断, ゴール設定を行ったうえで, 生活機能やQOLを最大限高める「リハか, みた栄養管理」や「栄養からみたリハ」である. 低栄養は, GLIM基準で診断する. サルコペニアは, Asian Working Group for Sarcopenia2019基準で診断する. 腸管不全患者では, 加齢, 低活動, 低栄養, 疾患とサルコペニアの原因をすべて認めることがある. 腸管不全患者では, 複数の原因による栄養素の摂取不足を認めることがある. リハとは, 機能訓練や機能改善だけでなく, 生活機能やQOLをできる限り高め, その人らしくいきいきとした生活ができるために行うすべての活動である. 狭義と広義, 両者の腸管リハがさらに発展することを期待したい.
著者
若林 秀隆
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.43-49, 2016 (Released:2016-04-05)
参考文献数
22
被引用文献数
1

リハビリテーション栄養とは,栄養状態も含めて国際生活機能分類で評価を行ったうえで,障害者や高齢者の機能,活動,参加を最大限発揮できるような栄養管理を行うことである.サルコペニアは,加齢のみが原因の原発性サルコペニアと,活動,栄養,疾患が原因の二次性サルコペニアに分類される.サルコペニアの治療はその原因によって異なり,リハビリテーション栄養の考え方が有用である.特に活動と栄養による医原性サルコペニアの予防が重要である. 老嚥とは健常高齢者における嚥下機能低下であり,嚥下のフレイルといえる.老嚥の原因の1 つが嚥下関連筋のサルコペニアである.サルコペニアの摂食嚥下障害とは,全身および嚥下に関連する筋肉の筋肉量減少と筋力低下による摂食嚥下障害である.特に誤嚥性肺炎後に認めやすい.サルコペニアの摂食嚥下障害への対応は全身のサルコペニアと同様で,特に早期リハビリテーションと早期経口摂取が大切である.
著者
若林 秀隆
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.837-842, 2014 (Released:2014-06-23)
参考文献数
33

サルコペニアの定義は、狭義では加齢による筋肉量減少、広義ではすべての原因による筋肉量減少、筋力低下、身体機能低下となる。成人低栄養の原因である飢餓、侵襲、悪液質は、すべて二次性サルコペニアの原因でもある。つまり、高齢者で低栄養を認める場合、二次性サルコペニアのことが多い。高齢者では低栄養とQOLに関連を認め、栄養改善で身体的QOLと精神的QOLを改善できる。サルコペニアとQOLの関連も示唆されるが、サルコペニアの改善によるQOL改善のエビデンスは乏しい。 サルコペニアに対する栄養補給は、高齢者の筋肉量と筋力を改善させる。ただし臨床現場では、広義のサルコペニアの原因である加齢、活動、栄養、疾患の有無をそれぞれ評価したうえで対処する。サルコペニアの原因によって、レジスタンストレーニングの可否や栄養療法の内容が異なるからである。サルコペニア対策では、リハビリテーション栄養の考え方が有用である。