著者
松井 康 今井 智子 永井 智 小林 直行 渡邊 昌宏 近藤 宏 宮川 俊平
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.389-393, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
28
被引用文献数
1

〔目的〕運動前のタウリン摂取が,運動によって生じる筋疲労に与える影響を明らかにすることとした.〔対象〕大学男子サッカー選手10名とした.〔方法〕無作為化二重盲検クロスオーバー試験にて,タウリン水,プラセボ水の2種類を摂取し,75%VO2maxでのエルゴメータによる運動と,最大努力での等速性膝伸展運動を100回行った.測定項目は,血液成分,膝伸展運動中のピークトルク,および大腿直筋の平均周波数(MPF)とした.〔結果〕タウリン水摂取群は血中MB濃度の上昇と,MPFの低下が抑制される傾向を示した.〔結語〕タウリン水摂取が運動によって生じる筋損傷を抑制する可能性があることが示唆される.
著者
大坪 拓朗 金子 亮太 渡邊 昌宏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1310, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】近年,投球障害に体幹の機能が重要であることは多く報告されている。しかし,投球動作時の体幹回旋運動の筋活動については報告されておらず,体幹筋活動が肩関節に及ぼす影響については不明な点が多い。本研究の目的は,投球動作時の体幹筋と肩甲骨周囲筋の筋活動の関連性を明らかにすることである。【方法】対象は,中学及び高校時代に野球部に所属しており,肩関節に疼痛既往の無い男子大学生10名(年齢20.4±1.36歳,投球側右腕)とした。筋活動は表面筋電図にて,右僧帽筋上部,右僧帽筋中部,右僧帽筋下部,右前鋸筋,右棘下筋,右外腹斜筋,左内腹斜筋/腹横筋の筋活動を計測した。投球は,右脚より18.44m先に設置されたネットを目標とした。ボールは硬球を使用し球種は直球として20秒間隔でノーワインドアップ投法にて全力投球を7回計測した。測定処理は,各電極から得られた電気信号をサンプリング周波数1000Hzでデジタル変換し,パーソナルコンピュータへ記録した。筋活動量を正規化するため各筋の最大随意収縮(MVC)の測定を行い,root mean square(RMS)を算出し最大筋活動量とした。各投球動作において,光刺激の時点を0msと定め,早期コッキング期(early cocking;EC),後期コッキング期(late cocking;LC),加速期(acceleration;ACC),フォロースルー期(follow through;FT)のRMSを算出し,%MVCを用いて筋活動量の比較を行った。解析には1回目と7回目を除いた5回分の投球動作平均値を用い,各フェイズでの筋活動,および各筋のフェイズ間での比較をおこなうため多重比較検定をおこなった。有意水準は5%とした。【結果】各フェイズでの筋活動比較において,LCでは腹直筋に比べ,外腹斜筋,内腹斜筋/腹横筋が,ACCでは腹直筋に比べ,外腹斜筋,前鋸筋が有意に高かった。FTでは腹直筋に比べ棘下筋が有意に高かった。各筋のフェイズ間での比較では,外腹斜筋はECよりもLCの方が有意に高く,僧帽筋中部はECよりもACC,僧帽筋下部ではACよりもLCの方が有意に高かった。さらに棘下筋ではECに比べACC,FTで有意に高かった。【考察】コッキング期での体幹回旋角度の減少が,肩関節外転時に必要な肩甲骨運動の制限及び運動エネルギー伝達の低下を及ぼし,肩関節への負荷が増大すると報告されている。本研究での対象者は,野球経験者であるが肩関節の疼痛既往がない。本研究の結果から,LCでの外腹斜筋,内腹斜筋/腹横筋の筋活動により体幹回旋運動と体幹の安定が得られ,その後ACCにて僧帽筋,前鋸筋の筋活動により肩甲骨の運動を促すことで,肩関節への負荷が軽減されると推察された。今回の研究では,肩関節に加わる力学的ストレスに関して不明な点が多い。今後は,被験筋を増やし,動作解析装置を用いて肩関節に加わるストレスを詳細にしていく必要がある。
著者
望月 沙紀 渡邊 昌宏
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-231_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】臨床において、下肢の神経徴候のない急性・慢性の腰痛症患者に対して大腿筋膜張筋とハムストリングスにストレッチを実施することで、疼痛の軽減だけではなく、姿勢や歩容の改善が即時的に得られると言われている。また、ストレッチにより筋を含めた組織柔軟性の維持・向上、筋運動疲労回復の促進、疼痛緩和、精神的リラクセーションが期待されると言われている。しかし、腰痛症患者の筋の柔軟性が腰痛に関わるかどうか明確になっていない。そこで、本研究の目的は筋の柔軟性と腰痛の関係を明らかにすることとした。【方法】対象者は、腰痛あり13名と腰痛なし11名の合計24名(20±2歳)の成人女性とした。医師の診断や主観的判断で神経症状、内科的疾患を示す場合は除外した。アンケートにて腰痛あり群となし群に分けた。その後、柔軟性テストにて伏臥位上体そらし(顎床間距離)、トーマステスト(床膝間距離)、体幹捻転(膝床間距離)、SLR(股関節屈曲角度)、エリーテスト(臀踵間距離)、立位体前屈(指床間距離)の順に測定を行った。次に柔軟性テストの順で対応する筋にスタティック・ストレッチを実施し、その直後に再度測定を行った。ストレッチは、各筋に対して30秒間保持、休憩10秒を挟み片側に対し計2回行い、反対も同様に実施した。解析には、実施後測定値から実施前測定値の差を計算し、柔軟性による変化を算出した。統計学的検討は、腰痛のあり群・なし群と各柔軟性テストの差に対応のないT検定を用い、有意水準は5%とした。【結果】床膝間距離は腰痛のあり群がなし群に比べ、右はストレッチ介入後の測定差に有意差が認められ(2.56±1.72cm、P=0.066)、左には有意な傾向が認められた(2.70±1.98cm、P=0.022)。その他の筋の柔軟性に関しては腰痛のあり群となし群には有意差は認められなかった。【結論(考察も含む)】大腰筋は筋力低下により伸張されると骨盤後傾、腰椎後弯が生じ、短縮が生じると骨盤前傾、腰椎前弯姿勢が生じると報告されており、腰椎の過前弯・過後弯によって腰痛が生じることが明らかとされている。今回、腰痛がある場合には腸腰筋は伸張されやすかったことから、腸腰筋の短縮が認められていたと推察された。また、筋連結の観点から腰痛は腸腰筋と直接関連すると報告されている。これらのことから神経症状がない腰痛者は腸腰筋の柔軟性が低下しており、ストレッチ介入によって伸張されやすいと考えられた。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には、本研究の目的・意義および本研究で得られた情報は個人が特定できないように処理し、データと結果は研究目的以外に用いることが無いことを書面にて説明し、同意を得た。また、本本研究への協力は個人の自由とし、実験の途中でも不利益を受けることなくいつでも撤回できることを説明し実施した。
著者
細谷 匠 渡邊 昌宏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】跳躍力は陸上競技やバレーボール,バスケットボールなど多くの競技種目で必要とされる。近年,スポーツでは体幹筋トレーニングが数多く取り入れられているが,競技で必要とされる跳躍力にどのような影響を及ばしているかは明確になっていない。そこで本研究では,体幹筋トレーニングが跳躍力にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることとした。【方法】対象は健常男子大学生21名(年齢19.5±1.1歳,身長169.9±5.4cm,体重65.3±6.5kg)とした。介入方法として体幹筋トレーニング(TMT),跳躍に影響を与えるといわれている下腿三頭筋へのDynamic stretching(DS),腹部圧迫(COMP)の3種類を実施した。TMTとしてFront Bridge,Back Bridge,side Bridgeをそれぞれ1分30秒ずつ保持させた。DSでは最大努力で膝を曲げず真上に連続ジャンプを10回おこなわせた。COMPでは臍部直下から腸骨稜にかけて弾性包帯を使用しできるだけ強く巻いた。それぞれの介入は3日以上の間隔を空けランダムにすべて実施した。跳躍力の評価は垂直跳びとし介入前と介入後それぞれ2回の計測をおこなった。計測には上肢の影響を取り除く為,腰に手を当てた状態でおこない,ジャンプMD(竹井機器工業株式會社)を用いて計測した。介入前と介入後に計測された値はそれぞれ平均値を用いた。統計処理にはSPSS statistics Ver19を用い,各種目における介入前と介入後を対応のあるT検定で比較した。有意水準は5%とした。【結果】TMTでは,介入前(47.0±5.5cm)に比べ,介入後(48.4±6.1cm)に有意に高くなった(P=0.003)。COMPでは,介入前(47.3±5.2cm)に比べ介入後(48.0±5.7cm)において高くなる傾向が認められた(P=0.071)。DSでは介入前後で有意差は認められなかった。【結論】体幹部の安定性には体幹深部筋の活動が重要であると報告されている。また,体幹を安定させる能力が高い者ほど,下肢の生み出す力を無駄なく上方へ伝達できるといわれている。今回の結果から,体幹筋トレーニングによって深部筋の活動が増加し体幹部の安定性が得られたことで,跳躍力が増したと推察された。また,腹部圧迫によっても腹腔内圧が高まり体幹の安定性が得られることで,跳躍力に影響を及ぼす可能性があることが考えられた。これらのことから単に腹圧を高めるだけではなく,自発的に筋収縮を促し筋活動を高めることが,より体幹の安定性に影響を与えることが示唆された。体幹トレーニングによる上下肢の筋活動の影響も関与している可能性もあることから,今後は体幹筋トレーニングによる上肢・下肢への筋活動と跳躍力に及ぼす影響について明確にしていきたい。
著者
荒井 望 渡邊 昌宏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0820, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】松葉杖は下肢機能障害者に対して汎用される補助具である。また,下肢への荷重量を自由に選択できるため幅広い疾患に適応となるとされている。しかし,松葉杖やロフストランド杖歩行は,上肢への負担が増加するため心血管系に及ぼすストレスが大きいとされている。そこで本研究は,松葉杖歩行の速度の違いで身体に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常成人14名(年齢20.4±0.5歳)とした。対象者の歩行速度を測定するため,50mの歩行路その前後3mずつに助歩行路を設置した。対象者はその歩行路を通常速度で歩き,その歩行時間から歩行速度を導きだした。歩行速度から,先行研究で報告されているトレッドミル上速度の変換式,y(km/h)=0.65x(km/h)+0.04(x:設置した歩行路での歩行速度,y:トレッドミル上歩行速度)に代入し,トレッドミル上での速度を決定した(通常歩行)。松葉杖は両松葉杖を使用し左足免荷で行った。松葉杖歩行では,通常歩行の50%の速度と松葉杖歩行が不慣れな通常歩行の25%の速度の2通りで行った(松葉杖25%,松葉杖50%)。3条件(通常歩行,松葉杖25%,松葉杖50%)は,3日間に分けランダムに行った。測定機器は呼気ガス分析装置(アニマ株式会社AT-1100)を用いた。各条件それぞれトレッドミル上で3分間安静座位後,4分間の歩行を実施し,体重当たりの酸素摂取量(VO2/W),METs,酸素摂取量(VO2)と,安静時と終了時の脈拍数を測定した。統計処理には,SPSS Statistics19を使用し,通常歩行と松葉杖25%と松葉杖50%のVO2/W,METs,VO2,脈拍数に関して,それぞれ1要因分散分析と多重比較を行った。有意水準は5%とした。【結果】VO2/W(ml/min/kg)とMETsと脈拍数(回/min)は,通常歩行(8.99±2.5,2.7±0.4,86±10.0)<松葉杖25%(12.14±2.0,3.5±0.6,103±19.9)<松葉杖50%(14.69±3.3,4.2±0.9,113±25.7)とすべて有意な増加が認められた(P<0.05)。一方,VO2は有意差を認めなかった。【結論】歩行補助具を用いた場合,通常歩行より酸素摂取量が高くなると報告されている。本研究では,通常歩行に比べ松葉杖歩行では低速度からVO2/W,METs,脈拍数が増加する傾向が明らかとなった。また菅原らは,心拍数が増加すれば酸素摂取量や消費カロリーも増加すると報告している。つまり,呼気ガス分析装置を用いらなくとも心拍数だけで身体負荷をある程度推察することが可能といえる。本研究から,松葉杖歩行では歩行速度に関わらず身体への負荷が増加することが明らかとなったため,臨床において脈拍数やMETsの変化を常に把握する必要があると考えられる。
著者
渡邊 昌宏
巻号頁・発行日
2012

筑波大学博士 (スポーツ医学) 学位論文・平成24年3月23日授与 (甲第6263号)