- 著者
-
渡邊 純子
- 出版者
- 一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
- 雑誌
- 繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.3, pp.113-118, 1982
日常生活における静電気による帯電を, 衣服材料3種と, 床材4種を組み合せて, 実験的に再現し検討した.実験室の環境条件は, 温度24±1.5℃, 湿度28.2±2.5%で, 被検者に椅子からの立上がり作業を行わせ, 次のような結果を得た.<BR>1.椅子からの立上がりによる帯電は, 椅子のビニルレザーと衣服材料との剥離によるものであり, 両者の摩擦帯電列の遠近が著しく作用し, その結果, ビニルレザーから遠い毛が最も帯電位が高く, それより近いポリエステルやアクリルが予期していたよりも低く現われた.<BR>2.制電性加工のカーペットは, 帯電圧が低い場合は制電効果が少ないが, 他の床材, すなわちナイロンカーペット, アクリルカーペット, クッションフロアーの帯電が, 電撃ショックの閾値である2kVないし3kVを越えるような条件では効果が現われ, 他の床材では最高14kVまで帯電するのに対して, 常に2kVから3kVに抑えられた.記録を見ると, 何らかのストッパーが働くかのように, それ以上帯電が増加しなかった.<BR>3.電撃ショックの閾値を越える帯電の減衰時間を観察したが, 10分以上経過しても閾値まで下がらないものがかなりあった.<BR>4.帯電性の個人差もかなり大きかったが, その原因としては, 皮膚の帯電列上の個人差と, 皮膚水分の人による差や, 日による差が考えられる.