著者
温 文
出版者
日本視覚学会
雑誌
VISION (ISSN:09171142)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.62-67, 2023-04-20 (Released:2023-04-25)
参考文献数
20

技術の発展により,バーチャルリアリティやアシストロボットなどの装置を用いて人間の身体能力が向上し,拡張する研究が注目されている.特に身体が不自由な人や,運動障害を持つ人のためのアシストやリハビリテーション手法の開発が進んでいる.本講演では,バーチャルリアリティやアシストロボットを利用するユーザの運動主体感に焦点を当て,身体拡張が運動主体感に与える影響を調べた研究を紹介する.身体拡張を行うと,自分の行動と異なる感覚入力を受けるため,運動主体感が低下してしまうことが多いが,身体運動のパフォーマンスに対してポジティブな介入を行った場合には,運動主体感を向上させ,身体表象の更新を促進できることが示されている.さらに,運動主体感に着目したリハビリ装置の提案や,人間の認知特徴を踏まえたシステム設計に関する研究も紹介する.
著者
温 文 濵田 裕幸 鈴石 陽介 Acer Chang
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
pp.42.7, (Released:2023-12-12)
参考文献数
95

Sense of agency refers to the subjective feeling of controlling one’s own actions, and through them, the external events. Sense of agency is integral to self-consciousness, and been the subject of numerous studies aimed at uncovering its underlying mechanism. However, the significance of the sense of agency in human behavior remains poorly understood. Is it simply a by-product of action, or does it play a causal role in our behaviors? This review first briefly summarizes the leading theories of the mechanism underlying the sense of agency and then discusses the ways in which it influences human perception and behavior. The sense of agency is not only a subjective feeling experienced during decision-making and action–execution, but also plays a critical role in shaping our perceptions of the outcomes of our actions, directing our attention, and informing our actions. Furthermore, understanding the role of the sense of agency in cognitive systems is essential for the development of techniques that predict human behavior and subject experience and for designing optimal action plans for systems.
著者
温 文 石川 徹 佐藤 隆夫
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, no.25, pp.79-82, 2010-06-29

本研究は、大規模空間から空間知識を獲得する際の言語・視覚・空間ワーキングメモリが果たす役割を検討し、方向感覚の個人差が空間知識獲得のプロセスに与える影響を調べた。実験参加者にはビデオでルートを学習してもらい、学習の際に言語、視覚、或いは空間的な妨害を与え、各妨害条件で空間知識の学習成績がいかに低下するかを調べた。方向感覚のよい人は、ランドマークとルートの知識を、言語および空間ワーキングメモリを用いて符号化し、それらの知識をサーベイ知識に統合する際に、言語・視覚・空間ワーキングメモリのすべてを利用していることがわかった。一方、方向感覚のよくない人は、ランドマーク知識を言語的に符号化し、またルート知識を学習する際に特に視覚ワーキングメモリに頼る傾向が見られた。その結果、方向感覚のよくない人は、限られた学習ではサーベイ知識を効率的に獲得できないと考えられる。