著者
船越 理沙 田崎 勝也 潮村 公弘
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.180-188, 2013

The present study investigated the cultural equivalence of Self-Monitoring Scales (Snyder, 1974) through an examination of differential item functioning (DIF) using structural equation modeling. The data were collected in Japan (n=211) and the US (n=171). Factorial analyses were conducted on three factors of Self-Monitoring Scales: Extraversion, Other-Directedness, and Acting. DIF analyses were then conducted between the Japan and US data on five items in Extraversion, four items in Other-Directedness, and four items in Acting. The results showed that partial factorial invariance was confirmed in both the Extraversion and Acting factors, and strong factorial invariance was detected in the Other-Directedness factor; therefore, each factor of the Self-Monitoring Scales showed reasonable evidence for their cultural equivalence. Based on the results of the DIF analyses and factor mean comparisons between the Japan and US data, the cross-cultural validity of these scales was discussed.
著者
潮村 公弘 シオムラ キミヒロ Shiomura Kimihiro
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.15, pp.31-38, 2015-03

潜在連合テスト(IAT)は、潜在認知研究の領域において近年で広く活用される測定法であるが、紙筆版 IAT につ いてはその実施方法に関する標準的で体系立った資料存在していない。本論文は、この点に注目し、紙筆版 IAT の実施方法についてのスタンダードとなりうる資料を提供し、紙筆版 IAT の進展に資することを目的として執筆された。そのさい、、単なる実施マニュアルにとどまらず、潜在指標測定の意義、潜在連合テストの背景、基礎的な分析方法、結果を解釈していく上で の考察ポイントや留意点についても包括的論じること目指した。個人あるいはグループで実習形式で学ぶことがきるように、「心理基礎実験」等の授業マニュアルとして直接に利用できる形式を採用した。そのさい、課題遂行用の各種資料をインターネットからダウンロードできるようにした。さらに参考となる情報源の紹介や今後の発展性についても論じた。There are no standard manuals utilizing the paper IAT (Implicit Association Test), though the Implicit Association Test (IAT) is a widely used technique for implicit cognition. The aim of this manuscript is to provide standard pricedures and guidelines for the paper pencil IAT. For this purpose, this practical manual includes descriptions concerning the meanings for measuring implicit indexes, the background for the IAT, the funddamental methods of data analysis, critical points for dicussion, and other things to keep in consideration. Additionally, this manuscript is provided in the form of materials for a university class, such as on basic research methods in psychology. The related materials for this practice (in class or in other style) are available on the website for downloading. This manuscript also includes information for reference and further contributions.
著者
潮村 公弘
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-13, 1995-07-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究の目的は, カテゴリー化を引き起こす刺激手掛かりが, 対人記憶と印象評定に及ぼす効果について検証することであった。Taylorら (1978) によって開発されたパラダイムに基づいて2つの実験が行なわれた。実験1では, 被験者にグループ・ディスカッションを提示するさいに, テープレコーダーとスライドを用いて, 被験者に話し手の声と顔写真が示された状況で行なわれた。そこでは, 話し手の性別と, 発言内容の性度とが 独立に操作されていた。実験2では, 話し手の声や顔写真の情報を被験者には与えず, 話し手の性別に関して性別ラベルのみを提示することで, 性別手掛かりが低減させられた。結果は, 対人記憶での効果は2つの実験を通じて変化しなかったことに対して, 印象評定での効果は2つの実験で明瞭に異なり, 実験2では話し手に 対する印象評定は, 発言内容の性度によって規定されていた。結果は, 2つの課題の独立性, 話し手の性別によって引き起こされるaccentuation (強調化) 効果の普遍性, 自動的処理とコントロール処理といった事項と関連づけて考察された。
著者
潮村 公弘 佐藤 誠
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.141-152, 1994

本研究の目的は, 恋愛状況下の異性二者間における相互的な認知の成立機制を探究することであった。測定手法は, 好意的同性二者間でのパーソナリティ認知における相互認知を検討した今川・岩渕 (1981) の手法に依拠した。<BR>被験者は以下の6つの認知過程ごとに, 自己概念を操作的, 客観的に捉えるために開発された47項目から成るSelf-Differential Scale (大学生用) (長島・藤原・原野・斎藤・堀 (1967)) に対して評定を行なった。1) 現実自己像, 2) 他者像, 3) 相手の自己像についての推測, 4) 相手の他者像についての推測, 5) 理想自己像, 6) 理想異性像の6つの認知過程 (認知像) である。なお, 6) の過程は本研究において, 異性間の問題を対象にした場合の独自性を捕捉することを目的に, 新たに取り入れた過程であった。<BR>本研究でのデータには, 相互的な認知を取り扱うための適切な方法としてペア・データが用いられた。それゆえ自己評定の前述の6過程, 他者評定の6過程 (すなわち1) 他者の現実自己像, 2) 他者の他者像, 3) 他者の, 相手の自己像についての推測, 4) 他者の, 相手の他者像についての推測, 5) 他者の理想自己像, 6) 他者の理想の異性像) の12過程の各々2つを組み合わせた認知過程対の類似性が検討された。<BR>まず認知過程対の類似度の検討より, 理想自己像 (5, 5) と理想異性像 (6, 6) の類似, 現実自己像1 (1) と相手の他者像についての推測4 (4) の類似, および他者像2 (2) と相手の自己像についての推測3 (3) の類似, 以上の3つの認知過程対の類似が, 相互的認知の成立に重要な役割を果たしていることがわかった。<BR>さらに上記の分析では検討できなかった, 理想自己像と理想異性像の両者が相互的認知に対して, いかなる規定関係にあるのかについて偏相関係数を用いて検討した。まず, 各々で統制した場合の偏相関係数を算出した。その結果, 理想自己像は自己に関する認知に影響を与える一方, 他者に対する認知には効果を有していないこと。それに対し, 理想異性像は他者に対する認知に影響を与える一方, 自己に対する認知には効果を有していないことが見い出された。さらに, 理想自己像同士の類似の影響を検討するために, 両者の理想自己像を同時に統制した場合の偏相関係数を算出した。その結果, 両者の斉合的な認知の成立, および他者についての認知と自分の理想異性像の類似は, 理想自己像同士の類似とは独立に存在していることが示された。
著者
上田 光世 潮村 公弘
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.183-185, 2012

The present study investigated the relationship between forgiveness and the cultural values of the Japanese. Multiple regression analysis indicated that dispositional unforgiveness of self/situation was negatively related to independent self-construal and positively related to interdependent self-construal. The results show that the value of forgiveness of self/situation is low in the Japanese worldview. In the relationships between the religious faith scale and the sub-dimensions of dispositional forgiveness, forgiveness of others was positively related only to the item "religion has harmful effects". Discussion of the results reveals how cultural and religious beliefs about forgiveness are different in Japan compared to Western countries.
著者
潮村 公弘
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度の成果を踏まえた上で、新たに、少数派側条件に割り当てられる人物にはサクラ(実験協力者)を用いる。サクラは、ディスカッション場面において予め定められた行動(2条件:性役割分業を肯定する発言、性役割分業を否定する発言)をとる、という実験操作を加えた実験研究を遂行した。性別混成状況下での自己意識・自己ステレオタイプ化については、複数の競合仮説が存在し、依然として解決をみていないテーマである。本研究では、ディスカッションが公的な状況としてなされる条件と私的な状況としてなされる条件も設定された。従属変数としては、意識的で顕在的な測度(評定尺度)と、非意識的で潜在的な測度の両者を用いた。非意識的な測度としては、IAT (Implicit Association Test)技法群に属する新しい測度であるGNAT (GO/No-go Association Task)を採用した。この手法は、複数の概念に対する潜在的な選好を各々の概念ごとに独立に測定できる新しい手法である。主たる知見としては、自己に対する顕在的なステレオタイプ化測度については、ディスカッションが公的な状況としてなされる条件においては、男性実験参加者も女性実験参加者も自己の女性性を反ステレオタイプ的に自己評定していたことが見出され、創られた性差として捉えうるような回答パターンが男女いずれにおいて示されていた。その一方、潜在的な測度の結果は高度に複雑なパターンを示した。このことは、ディスカッション場面という伝統的な区分での男性的特性が発揮されやすい傾向にある場面において、性別分業を肯定する/あるいは否定するという明確な主張を向けられることが、少なくとも大学生実験参加者にとっては複雑性の高い課題であったことが関係していよう。