著者
濱田 美和
出版者
富山大学国際交流センター
雑誌
富山大学国際交流センター紀要 = Journal of Center for International Education and Research, University of Toyama (ISSN:21891192)
巻号頁・発行日
no.4, pp.13-20, 2017-12

日本の大学の授業では,講義に対する意見,感想,質問等を書くコメントシートがよく用いられるが,一定の日本語力を有する留学生でもコメントシートを書くときに様々な日本語の誤りが見られる。留学生がコメントシートを書く際に日本語の語彙・文法上どのような困難点があるかを把握するため,中上級レベルの日本語力を有する留学生が書いたコメントシート262件から抽出した,語彙・文法にかかわる誤用832例をもとに分析を行った。その結果,語句の選択にかかわる誤用が最も多く,そのほかには話し言葉の使用,助詞,テンス・アスペクト,複文,文法形式,活用,語句の使用,やりもらいにかかわる誤用が多く見られた。複数の留学生に共通して見られる誤用も多くあった。これらに焦点を当てて今後さらにデータ数を増やして詳しく分析を行い,その結果をもとに留学生が効率的に日本語でのコメントシートの書き方を学べるような指導方法および教材の開発に取り組みたい。
著者
濱田 美和
出版者
富山大学国際機構
雑誌
富山大学国際機構紀要 = Journal of the Organization for International Education and Exchange, University of Toyama (ISSN:2434642X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.19-33, 2018-12

中・上級レベルの日本語学習者を対象とした漢字クラスにおいて,使用教材および指導内容見直しのための基礎資料として,読みの難易度により漢字語を整理したリスト作成を試みた。まず,授業後に実施した漢字語の読みテストの結果をもとに,282語の漢字語について正答率を求め,正答率をもとに難易度順に配列した。次に,各語の誤答を整理し,学習者3人以上に見られた読み誤りを高頻度の誤りとして抽出した。282 語の正答率別分布は,正答率60%未満の語が2割,60%以上80%未満が3割,80%以上の語が5割で,全体的に正答率の高い語が多かった。また,正答率の低い語を中心に抽出された高頻度の誤りには,当該漢字の有する他の読みを書いた誤りが特に多い,長音・短音,清音・濁音といった類似の他の音を書いた誤りが多い,和語動詞と和語形容詞については無解答,あるいは他の和語動詞や和語形容詞の読みを書いた誤りが多いといった特徴が見られた。
著者
濱田 美和
出版者
富山大学国際交流センター
雑誌
富山大学国際交流センター紀要 = Journal of Center for International Education and Research, University of Toyama" (ISSN:21891192)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.59-59, 2014-12

「日本語学習支援サイトRAICHO」(以下,「RAICHOサイト」, http://raicho.ier.u-toyama.ac.jp)は,富山大学に在籍する留学生の日本語学習を総合的に支援するための一つの手段として,国際交流センターが運営しているサイトである。本サイトのねらいは,富山大学で学ぶ留学生の学習を支援するという点にあり,ターゲットを富山大学の留学生に限定することで,サイトに掲載する情報を絞り込み,利用者が必要な情報に容易にアクセスできるようにするという点に重点をおいている(ただし,サイト自体は学内外を問わず利用できる)。本稿では,RAICHOサイトの2013年度の整備状況について報告し,今後の展望を述べる。
著者
深川 美帆 濱田 美和 深澤 のぞみ
出版者
富山大学留学生センター
雑誌
富山大学留学生センター紀要 (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
no.6, pp.29-40, 2007-10

本稿では, 日本社会におけるIT化の実情や留学生のITリテラシーの現状を明らかにして,留学生教育で行うべき支援,教育内容を検討する。様々な調査結果に裏付けられるように, 日本のIT環境は世界最先端レベルに達しており,ITは今や私たちの生活に広く深く浸透しつつある。このような社会で生活する留学生にとって, 日本語環境のIT機器を使いこなすには、日本語力に加えて日本語IT用語、日本語入力、そして日本における著作権やセキュリティに対する考え方などが問題となっている。こうした点を3、まえて,留学生に対するITリテラシーの授業や,教科書及び用語集の作成が行われている。また,インターネット上には留学生にとって学習や情報収集の助けとなるサイトがあり,今後も発展していくことが予想される。留学生に対するITリテラシー養成や支援は,日本語教育の中で積極的に扱うべきであると考える。
著者
濱田 美和
出版者
富山大学
雑誌
富山大学留学生センター紀要 (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.13-28, 2005-03

本研究は, 日本の流行歌を題材とした日本語学習者向けの教材を開発することを目的に行うものである。日本語学習者に適した教材を開発するためには,まず流行歌の歌詞に使われる語彙及び表現・文型の特徴を十分に把握しておかなければならない。そこで,本稿では, このうちの語彙に焦点を当て,ある流行歌が初級,中級,上級,超級のいずれの語彙レベルに当たるかの判定を行うとともに,流行歌に使われる語彙の特徴を分析し, 日本語学習者の立場から見た困難点を明らかにする。その手順として, 日本人によく親しまれている100曲の流行歌の歌詞に使われる語彙について, 日本語学習者にとっての難易度,品詞,語構成,意味範疇などの観点から分類し,データベース化し,その結果をもとに分析を行った。
著者
濱田 美和 高畠 智美
出版者
富山大学留学生センター
雑誌
富山大学留学生センター紀要 (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-8, 2013-09

本研究の最終目標は,日本語学習者同士で効果的に練習を行えるような漢字教材を開発することである。受講者の習得状況の開きが大きいため,複式で授業を行っている漢字クラスにおいて,学習者同士で練習を進めていくグループ練習の時間を設けている。本稿では,このグループ練習用のワークシート,カード教材に焦点を当て,実際の活動の中で,学習者が適切に使用できているかどうかを,グループ練習時の学習者同士のやり取りの音声データ等をもとに観察した。そして,教師の援助なしで学習者だけで円滑にグループ練習を進めるためには,より指示文を簡潔に提示すること,練習内容を平易にすること,学習者による例文等の作成は扱わないこと,例文の提示方法や解答の与え方を工夫すること,一度に使用するカードの種類や枚数を制限すること,ゲーム的要素の取り入れに注意を要すること,これらの改善が必要であることが分かった。
著者
濱田 美和 高畠 智美 市島 佑起子
出版者
富山大学留学生センター
雑誌
富山大学留学生センター紀要 (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
no.5, pp.17-25, 2006-10

日本語教育において,漢字教育は重要である。漢字は語彙の習得とも関連するものであり,また, 日本で生活する留学生の多くは,至る所で漢字を目にするため,習得の必要性を強く感じている。一般に,集中日本語コースでは漢字の体系的な指導がなされているが,コ‐ス内で十分な時間が確保できない場合,文型や語彙の習得に重点を置いて指導がなされるため,漢字は学生が自ら学ぶしかない状況にある。これには,教室における短時間指導に適した漢字教材の不足も関連していると思われる。筆者らは,専門の学習等で多忙な留学生のために,新たに短時間学習型の初級漢字教科書『留学生のための毎日のKAN」I』を開発した。本教材の特徴として,教室における短時間での導入に適している点,また,学生が自学自習しやすい工夫を行った点が挙げられる。本教材による漢字指導を始めた結果,非漢字圏の学生だけでなく,漢字圏の学生からも一定の評価を得ることができた。
著者
濱田 美和 深澤 のぞみ
出版者
富山大学留学生センター
雑誌
富山大学留学生センター紀要 = Journal of International Student Center, Toyama University (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-9, 2011-11

IT技術が広く普及したことにより,IT用語はPC操作以外の日常的な場面でも頻繁に使われるようになった。また同時に,日本語力を有する外国人IT技術者のニーズが世界的に高まるなど,様々な目的で,日本語のIT用語の習得が,仕事や学習,また生活に不可欠なものとなってきている。そこで本稿では,普段の生活で接することの多い新聞や雑誌などの印刷物やテレビ放送を資料として用い,頻出するIT用語を抽出して,日常生活に深く浸透してきたIT用語の特徴を明らかにした。具体的には,語の出現度数や語種,ともに用いられる動詞や複合語としての用いられ方を分析した。それをもとに,一般の日本語教育の中で早くから扱う必要があることを提案し,日本語教育の中での取り上げ方についても考察した。
著者
濱田 美和
出版者
富山大学国際機構
雑誌
富山大学国際機構紀要 = Journal of the Organization for International Education and Exchange, University of Toyama (ISSN:2434642X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.20-30, 2021-02

本稿は,中・上級「漢字」および上級「文法」の授業において実施したMoodleを用いたオンライン定期試験についての報告である。文法,語彙,漢字といった知識を問う試験は,教科書や辞書で調べるとすぐに答えを探すことができることから,遠隔での試験実施の場合,試験の公平性を保つにはさまざまな工夫が必要となる。そこで,Moodleの解答時間の制限機能やランダム問題表示を活用したり,文字データを用いずに画像で表示したり,出題内容を辞書等で調べるだけでは答えにくいものに変更したりするなどの対応を取って実施したところ,従来の教室での用紙配布による定期試験と受験者の得点分布について明らかな差は見られなかった。受験者からは試験時間が短かったという声やインターネットの接続状況があまりよくなかったという声も聞かれたが,全体的には支障なく実施できた。