著者
松岡 裕見子 小西 光子 後藤 寛樹 要門 美規
出版者
富山大学
雑誌
富山大学留学生センター紀要 (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.31-41, 2002-03

富山大学留学生センター日本語研修コースでは, コース期間中,毎朝,その日の口ならしとして1限目の授業の始めの5分~10分を発音練習にあてている。コースが開設された当初は,既製の教材を使用していたが, もっと楽しく元気に授業を開始できる,ウォーミングアップとなるような教材を開発しようということになった。教材は毎日の口ならしであると同時に, 日本語の発音の基礎を学び, 日本語らしいリズムを習得させることを目標としており, これまでに2回の改訂を経て,現在使用しているものに至っている。本稿はその教材開発について報告するものである。
著者
深川 美帆 濱田 美和 深澤 のぞみ
出版者
富山大学留学生センター
雑誌
富山大学留学生センター紀要 (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
no.6, pp.29-40, 2007-10

本稿では, 日本社会におけるIT化の実情や留学生のITリテラシーの現状を明らかにして,留学生教育で行うべき支援,教育内容を検討する。様々な調査結果に裏付けられるように, 日本のIT環境は世界最先端レベルに達しており,ITは今や私たちの生活に広く深く浸透しつつある。このような社会で生活する留学生にとって, 日本語環境のIT機器を使いこなすには、日本語力に加えて日本語IT用語、日本語入力、そして日本における著作権やセキュリティに対する考え方などが問題となっている。こうした点を3、まえて,留学生に対するITリテラシーの授業や,教科書及び用語集の作成が行われている。また,インターネット上には留学生にとって学習や情報収集の助けとなるサイトがあり,今後も発展していくことが予想される。留学生に対するITリテラシー養成や支援は,日本語教育の中で積極的に扱うべきであると考える。
著者
濱田 美和
出版者
富山大学
雑誌
富山大学留学生センター紀要 (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.13-28, 2005-03

本研究は, 日本の流行歌を題材とした日本語学習者向けの教材を開発することを目的に行うものである。日本語学習者に適した教材を開発するためには,まず流行歌の歌詞に使われる語彙及び表現・文型の特徴を十分に把握しておかなければならない。そこで,本稿では, このうちの語彙に焦点を当て,ある流行歌が初級,中級,上級,超級のいずれの語彙レベルに当たるかの判定を行うとともに,流行歌に使われる語彙の特徴を分析し, 日本語学習者の立場から見た困難点を明らかにする。その手順として, 日本人によく親しまれている100曲の流行歌の歌詞に使われる語彙について, 日本語学習者にとっての難易度,品詞,語構成,意味範疇などの観点から分類し,データベース化し,その結果をもとに分析を行った。
著者
濱田 美和 高畠 智美
出版者
富山大学留学生センター
雑誌
富山大学留学生センター紀要 (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
no.12, pp.1-8, 2013-09

本研究の最終目標は,日本語学習者同士で効果的に練習を行えるような漢字教材を開発することである。受講者の習得状況の開きが大きいため,複式で授業を行っている漢字クラスにおいて,学習者同士で練習を進めていくグループ練習の時間を設けている。本稿では,このグループ練習用のワークシート,カード教材に焦点を当て,実際の活動の中で,学習者が適切に使用できているかどうかを,グループ練習時の学習者同士のやり取りの音声データ等をもとに観察した。そして,教師の援助なしで学習者だけで円滑にグループ練習を進めるためには,より指示文を簡潔に提示すること,練習内容を平易にすること,学習者による例文等の作成は扱わないこと,例文の提示方法や解答の与え方を工夫すること,一度に使用するカードの種類や枚数を制限すること,ゲーム的要素の取り入れに注意を要すること,これらの改善が必要であることが分かった。
著者
副島 健治
出版者
富山大学留学生センター
雑誌
富山大学留学生センター紀要 (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
no.12, pp.9-16, 2013-09

独立行政法人北方領土問題対策協会は,1998 年より「北方領土」に日本語講師を派遣し日本語コースを開いてきた。これまでのべ3000 人以上の現地のロシア人住民が日本語を学んだ。2011 年からこの事業のための教科書開発の検討会が設けられ教科書の開発に取り組んでいる。「北方領土」という特殊な地で実施される日本語教育のための日本語教材であり,教材開発は諸所において色々な配慮のもとに具現化されていった。その特徴は,「ビザなし交流」の場面を意識したダイアローグを「小会話」として積み重ねる,キリル文字による日本語表記,日本語には適宜ロシア語訳を付ける,必要な説明や解説はすべてロシア語で行う,などである。この日本語コースは「ビザなし交流」の一環として,北方領土問題の解決に寄与するために行われている事業であり、何よりも教師と学習者がお互いの立場を理解し敬愛し合い,人と人とのしっかりした信頼関係が構築されていることが重要である。
著者
濱田 美和 高畠 智美 市島 佑起子
出版者
富山大学留学生センター
雑誌
富山大学留学生センター紀要 (ISSN:13472739)
巻号頁・発行日
no.5, pp.17-25, 2006-10

日本語教育において,漢字教育は重要である。漢字は語彙の習得とも関連するものであり,また, 日本で生活する留学生の多くは,至る所で漢字を目にするため,習得の必要性を強く感じている。一般に,集中日本語コースでは漢字の体系的な指導がなされているが,コ‐ス内で十分な時間が確保できない場合,文型や語彙の習得に重点を置いて指導がなされるため,漢字は学生が自ら学ぶしかない状況にある。これには,教室における短時間指導に適した漢字教材の不足も関連していると思われる。筆者らは,専門の学習等で多忙な留学生のために,新たに短時間学習型の初級漢字教科書『留学生のための毎日のKAN」I』を開発した。本教材の特徴として,教室における短時間での導入に適している点,また,学生が自学自習しやすい工夫を行った点が挙げられる。本教材による漢字指導を始めた結果,非漢字圏の学生だけでなく,漢字圏の学生からも一定の評価を得ることができた。