著者
吉峯 宗大 瀬山 厚司 菅 淳 村上 雅憲 林 雅規 井上 隆 松並 展輝 守田 知明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.468-474, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
13

マムシ咬傷の治療に関するガイドラインは存在せず,臨床現場においては治療方針に迷うことが少なくないと推測される。そこで,当院で2007年から2016年までの10年間に経験した67例を用いて治療内容や予後について検討した。男女比は35:32,年齢は16歳から86歳(平均68歳)で,60歳以上が79%を占めていた。受傷時期は7月から9月に56例(84%)が集中し,受傷場所は田畑が28例,自宅が26例と多く,受傷部位は全て四肢であった。49例にマムシの目撃があり,目撃のない症例では臨床症状から診断した。受傷直後から著明な血小板減少を呈し重症化した「血小板減少型」の1例を除いた66例について検討した。全例に入院加療が行なわれ,平均入院日数は6.8日であった。腫脹範囲が大きい症例ほど入院日数が有意に長かった。3例が腎機能障害を合併し,そのうち1例が死亡した。腫脹がピ―クに達するのは平均21.8時間後,CPK値が最大となるのは平均2.6日目であり,初診時に軽症であっても数日間の経過観察は必要であると考えられた。マムシ抗毒素は28例に投与されたが,投与の有無では入院日数に差を認めなかった。しかし,より重症の症例にマムシ抗毒素が投与されていること,腎機能障害を合併した3例の中,死亡した1例を含む2例にはマムシ抗毒素が投与されていなかったことから,重症例にはマムシ抗毒素の投与が必要であると考えている。また当院で経験した非常に稀な「血小板減少型」の1例についても報告する。
著者
平田 健 加藤 智栄 八木 隆治 林 雅太郎 河野 和明 瀬山 厚司 久我 貴之
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.805-809, 2005-04-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
12

目的)手術切開創の創傷処置に閉鎖環境,消毒不要などの概念が導入され創傷処置が変わりつつある.当科ではフィルムドレッシングを導入し,従来のガーゼ処置と比較検討した.方法)胸腹部待機手術症例を対象とし,フィルム群 (F群)とガーゼ群 (G群)へ最小化法により振り分け,前向き研究を行った. F群では縫合直後にフィルムドレッシング材を貼付し抜糸まで交換せず経過観察した.創感染,コストなどについて検討した.結果) F群49症例,G群51症例.手術部位,手術時間,切開創の長さ,抜糸までの日数には差はなかった.切開創感染はF群で3例 (6.1%), G群で2例 (3.9%) で差はなかった (p=0.92). コストはF群 (255円)で, G群 (605円)に比し有意に低かった (p<0.001). 結論)フィルムドレッシングは切開創の管理,観察が容易で,創感染を増加せず,低コストであり,従来のカーゼ処置より有効であった.
著者
瀬山 厚司 濱野 公一
出版者
山口大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2001

1.目的 骨格筋への骨髄細胞投与により誘発された新生血管により、骨格筋の生理的機能が改善されるか否かを知ることを目的とした。2.方法 ラット下肢虚血モデルを用いて、骨髄細胞注入による骨格筋血管新生を誘導した。群分けは、Sham群、Ischema群(虚血肢を作成したのみ)、PBS群(骨髄細胞の浮遊液であるPBSのみを注入)、BMI群(骨髄細胞を注入)の4群(各群n=5)とした。骨髄細胞は赤血球を除去した後、1×10^7/10μlを腓腹筋に6ヵ所経皮的に注入した。血管新生の程度は血管造影、alkaline phosphatase染色による毛細血管数、大腿静脈のarteriovenous oxygen difference(AVDO^2)にて比較した。また新生血管の生理的有用性を評価するために、20m/min,10%勾配のトレッドミル上でラットを走行させ、その走行時間を各群で比較した。3.結果 下肢血管造影では、BMI群において他の3群と比較して良好な側副血行路の発達を認めた。大腿内転筋及び腓腹筋における単位筋当たりの血管数は、BMI群において他の3群と比較して有意に高値であった(P<0.01)。モデル作成2週後のAVDO^2は、Ischema群においてSham群、BMI群と比較して有意に高値であった(P<0.01)。ラットのトレッドミル走行時間は、Sham群ではモデル作成1,2,4週後のいずれにおいても、全てのラットが5時間完走した。モデル作成2,4週後において、BMI群はIschema群、PBS群と比較して有意に長時間走行した(P<0.01)。4結論 骨髄細胞の注入により虚血肢に誘導された新生血管は、低下した運動能の回復に寄与すると考えられた。