著者
小谷 康弘 桜井 宏紀 照屋 匡 伊藤 嘉昭 武田 享
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.51-57, 1991-12-25

ウリミバエのガンマー線照射による不妊化の機構を組織学的に検討した。電子顕微鏡による精巣の観察では,照射虫の精原細胞,精母細胞は崩壊し,自由精子のみが存在していた。照射虫と交尾した雌の産下部の胚子発生過程の光学顕微鏡による観察では,卵割異常,胚盤葉形成阻害など発生初期の段階での異常がみられ,それ以降の胚子発生過程は認められなかった。ガンマー線照射により雄の生殖細胞は大部分が崩壊するものの,残った精子は受精には関与した。しかし,受精に関与した精子は胚子発生過程を停止させる異常精子であり,このことがほぼ100%の不妊化率を引き起こすものと推定された。光学顕微鏡による中腸の観察では,照射虫の中腸上皮細胞の萎縮や崩壊がみられた。このことから,ガンマー線照射により中腸組織に阻害を生じ,消化機能が阻害されることが,成虫の寿命低下の一因になっていると思われる。
著者
照屋 匡 Teruya Tadashi 沖縄県ミバエ対策事業所
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.62-67, 1997-08

台湾におけるバナナセセリとその寄生蜂を調べるために1993年9月15日から21日まで台湾で調査した.調査は,バナナ栽培地域であり台湾バナナ研究所のある屏東縣を主として,高雄縣や台北市でも行った.バナナセセリは台湾北端の台北市や南端の恒春市でも多数見つかり,台湾島全域での分布が示唆された.バナナの被害葉面積率を基にして算出した被害度は,いわゆるプランテーションでは0.1%以下ときわめて低かった.比較的被害の大きいとみられる圃場を選んで調査したにもかかわらず,最も被害度の高かった圃場で約7%でしかなく,台湾のバナナセセリ個体群密度の低さを示した.今回の調査では本種の寄生蜂を採集するには至らなかった.台湾における本種関連の文献の内容を要約し,現地における関係者との意見交換で得られた知見も追加した.A survey of the banana skipper, Erionata torus Evans, and its hymenopterous parasitoids was made in Taiwan during the period, Sept. 15-21, 1993 to explore the possibility of introducing the hymenopterous parasitoids of the skipper into Okinawa. The survey was conducted in three places in Taiwan-Pingtung County and Kaohsiung County,which are famous for banana production, and Taipei. The skipper was found in Hengchun and Taipei which are located near the southern and the northern extremities of Taiwan, respectively, suggesting that the exotic pest has already spread throughout Taiwan Island. Infestation rates of the skipper on bananas were roughly calculated on the basis of percentage of infested leaf area in the surveyed plantations and fields. The infestation rates in plantations were less than 0.1%. The average rate was ca. 4% and maximum rate in a field was ca. 7%. The results indicate that the skipper has a low pest status in Taiwan. Hymenopterous parasitoids of the skipper were not found in the present survey though some parasitoids of this butterfly are known in Taiwan. Literature on the skipper in Taiwan is also reviewed, and new information on the species from other sources is presented.
著者
桜井 宏紀 田畑 幸司 照屋 匡 小濱 継雄
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.31-38, 1996-11-28

ガンマ線照射によるウリミバエ(Dacus cucurbitae Coquillett)雌の不妊化機構を解明するため,卵形成と中腸に及ぼすガンマ線照射の影響を超微形態学的に検討した。正常虫では羽化後直ちに第1卵胞が交互栄養室型卵管の生殖巣より分化した。栄養細胞と濾胞上皮細胞は卵母細胞の成長に関連した形態学的変化を示し,羽化後8日以降に成熟卵が形成された。一方,照射虫の卵巣小管では卵原細胞は核濃縮や核融解を起こした。ライソブームは前栄養細胞の崩壊,凝縮,融解に関与し,生殖巣は空隙化した。観察結果から,70Gyの線量のガンマ線照射によりウリミバエの卵形成が完全に抑制され,雌の不妊化を引き起こすことが示された。正常虫の中腸の上皮の円筒細胞は分厚く,細胞の上縁部より腸の内腔に向かって微絨毛が密生していた。腸内には棹状の細菌が少数存在したが,それらは囲食膜によって吸着され溶解した。一方,照射虫の中腸上皮の円筒細胞は日令の経過に伴い薄層化し,中腸後端部の腸内には棒状の細菌が退化した囲食膜にそって多数存在した。観察結果から,ガンマ線照射によって中腸上皮細胞と囲食膜に障害を生じ,栄養欠乏を起こして最終的に成虫の寿命が低下することが推察された。