- 著者
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熊谷 滋子
- 出版者
- 現代日本語研究会
- 雑誌
- ことば (ISSN:03894878)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, pp.11-28, 2017
<p>方言ブーム、方言尊重とうたわれている今日、日本語社会は依然として標準語を基本とし、方言を周縁に位置づける社会であることを、東北と関西を舞台としたテレビドラマから検証する。ドラマでは、東北は東京と対極に位置する田舎であり、自然あふれる童話の世界として描かれる。東北方言は若い女性、知的な男性には合わないイメージが反映され、より強く周縁化されている。一方、関西は東京を意識しない、国際的な都市のイメージを押し出し、「お笑い」や「けんか」が活発に展開される場として描かれる。関西方言は基本的に登場人物全員が使用できるため、それほど周縁化されていないように思われる。が、あらたまった場面や外国語の翻訳では標準語が用いられるため、ソフトに周縁化されている。田中(2016)が実施した方言イメージの調査結果、「東北=素朴、温かい」「大阪=おもしろい、怖い」にぴったりなドラマとなっている。メディアは、このようなイメージを再生産している。</p>