著者
熊谷 滋子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.3-20, 2021

<p>東北方言が田舎イメージで表象され続けていることを2021年に放送されたNHKドラマから検証する。NHK連続テレビ小説は、舞台となる地域の方言を主人公が使う傾向がある。しかし、東北を舞台にすると、主人公や主要な役には共通語か「薄い」方言程度でにごし、地元の年配男女、林業・漁業従事者に東北方言を使わせる。後者に「田舎イメージ」をもたせるためである。また、使用する東北方言は濁音化とその他のわずかな特徴に単純化され、ステレオタイプ化されている。さらに、大阪を舞台にするドラマではほぼ全員が大阪方言を使用するため、大阪方言非母語話者の俳優は努力してマスターしようとするのに対し、東北方言の場合は主人公や主要な役はあまり方言を使用しなくてもよいといったことから、方言への意気込みにも方言の格差がある。多様性を唱える2000年代でもこの状況である。</p>
著者
熊谷 滋子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.3-20, 2021-12-31 (Released:2021-12-31)
参考文献数
13

東北方言が田舎イメージで表象され続けていることを2021年に放送されたNHKドラマから検証する。NHK連続テレビ小説は、舞台となる地域の方言を主人公が使う傾向がある。しかし、東北を舞台にすると、主人公や主要な役には共通語か「薄い」方言程度でにごし、地元の年配男女、林業・漁業従事者に東北方言を使わせる。後者に「田舎イメージ」をもたせるためである。また、使用する東北方言は濁音化とその他のわずかな特徴に単純化され、ステレオタイプ化されている。さらに、大阪を舞台にするドラマではほぼ全員が大阪方言を使用するため、大阪方言非母語話者の俳優は努力してマスターしようとするのに対し、東北方言の場合は主人公や主要な役はあまり方言を使用しなくてもよいといったことから、方言への意気込みにも方言の格差がある。多様性を唱える2000年代でもこの状況である。
著者
熊谷 滋子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.11-28, 2017-12-31 (Released:2018-01-12)
参考文献数
24

方言ブーム、方言尊重とうたわれている今日、日本語社会は依然として標準語を基本とし、方言を周縁に位置づける社会であることを、東北と関西を舞台としたテレビドラマから検証する。ドラマでは、東北は東京と対極に位置する田舎であり、自然あふれる童話の世界として描かれる。東北方言は若い女性、知的な男性には合わないイメージが反映され、より強く周縁化されている。一方、関西は東京を意識しない、国際的な都市のイメージを押し出し、「お笑い」や「けんか」が活発に展開される場として描かれる。関西方言は基本的に登場人物全員が使用できるため、それほど周縁化されていないように思われる。が、あらたまった場面や外国語の翻訳では標準語が用いられるため、ソフトに周縁化されている。田中(2016)が実施した方言イメージの調査結果、「東北=素朴、温かい」「大阪=おもしろい、怖い」にぴったりなドラマとなっている。メディアは、このようなイメージを再生産している。
著者
中村 桃子 佐藤 響子 マリイ クレア 熊谷 滋子
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

第一に、スパムメール、親密な関係を扱った小説、日常会話を分析し、「女ことば」や「男ことば」が、異性愛規範に沿ったセクシュアル・アイデンティティ構築に利用されていることを明らかにした。第二に、マスコミの多様なセクシュアル・アイデンティティ遂行とことばの実践を考察し、その歴史的な変動を明らかにした。第三に『ことばとセクシュアリティ』(邦訳)を出版した。第四に、多くの国際学会でこれらの研究成果を発表した。
著者
熊谷 滋子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.21-38, 2020

<p>メディアが「地方」やその方言をめぐるイメージをいかにステレオタイプ化して再生産しているのかを、東日本大震災後のテレビの娯楽番組から検証した。番組では、都会代表の司会者と東北代表のゲストたちが、東北をめぐる事柄について語り合いながら、期待にそった東北像を作り上げていく。具体的には、「忍耐強い」「努力家」「働き者」「寡黙」といった東北人気質、東北方言への思い、上京時の田舎者体験などである。東京一極集中が拡大深化する現代の日本において、特に在京30年をこえる50代以上のゲストたちが、戦後の高度経済成長期、上京したての若い頃に味わった田舎者としての体験を面白おかしく語り合うことが、結果的に東京を中心にすえ、東北を周縁においやり、相変わらずの「東北像」を再生産するものとなっている。</p>
著者
熊谷 滋子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.21-38, 2020-12-31 (Released:2020-12-31)
参考文献数
14

メディアが「地方」やその方言をめぐるイメージをいかにステレオタイプ化して再生産しているのかを、東日本大震災後のテレビの娯楽番組から検証した。番組では、都会代表の司会者と東北代表のゲストたちが、東北をめぐる事柄について語り合いながら、期待にそった東北像を作り上げていく。具体的には、「忍耐強い」「努力家」「働き者」「寡黙」といった東北人気質、東北方言への思い、上京時の田舎者体験などである。東京一極集中が拡大深化する現代の日本において、特に在京30年をこえる50代以上のゲストたちが、戦後の高度経済成長期、上京したての若い頃に味わった田舎者としての体験を面白おかしく語り合うことが、結果的に東京を中心にすえ、東北を周縁においやり、相変わらずの「東北像」を再生産するものとなっている。
著者
熊谷 滋子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.11-28, 2017

<p>方言ブーム、方言尊重とうたわれている今日、日本語社会は依然として標準語を基本とし、方言を周縁に位置づける社会であることを、東北と関西を舞台としたテレビドラマから検証する。ドラマでは、東北は東京と対極に位置する田舎であり、自然あふれる童話の世界として描かれる。東北方言は若い女性、知的な男性には合わないイメージが反映され、より強く周縁化されている。一方、関西は東京を意識しない、国際的な都市のイメージを押し出し、「お笑い」や「けんか」が活発に展開される場として描かれる。関西方言は基本的に登場人物全員が使用できるため、それほど周縁化されていないように思われる。が、あらたまった場面や外国語の翻訳では標準語が用いられるため、ソフトに周縁化されている。田中(2016)が実施した方言イメージの調査結果、「東北=素朴、温かい」「大阪=おもしろい、怖い」にぴったりなドラマとなっている。メディアは、このようなイメージを再生産している。</p>