著者
郷原 佳以
出版者
関東学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

20世紀フランスを代表する文芸批評家モーリス・ブランショの文学論や虚構作品における言語とイメージの関係性について考察し、単著『文学のミニマル・イメージ』にまとめるとともに、そこから出発して、(1) 19世紀の詩人ステファヌ・マラルメの詩論や絵画論、(2) 1950-60年代の現代芸術に見られブランショも実践した断章形式、(3)現代詩人ミシェル・ドゥギーの詩論や隠喩論、(4)芸術作品をめぐるアポリネールやバルザックの短篇小説などの分析を行った。
著者
高井 啓介
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度は、研究内容を以下の3点に集中して実施した。(1)「降霊術」と「腹話術」および「魔女」が描かれた図像の分析およびその分析の論文化の作業。(2)現代的エンターテインメントとしての「腹話術」の歴史に関連する資料の収集およびその分析と論文化の作業。(3)旧約聖書テキストおよびその解釈についての文献学的研究の成果をまとめる形での最終的な論文執筆作業および学会発表での成果の発表の準備。以下が本年度の成果である。(1)については、古代末期以降西洋近代以前に至るまでの図像をほぼ網羅的に収集し、その分析を進め、テキストと図像との関係性の特徴を明らかにした。(2)については、「降霊術」と降霊術師のダイモーンに関する言説が脱神話化されることにより、現代的なエンターテインメントとしての「腹話術」および腹話術師が成立していく道筋を確認することができた。(3)については、「降霊術師」の登場する旧約聖書テキストおよびその解釈をダイモーンという観点からまとめなおす作業を行った結果、論文執筆および学会発表に向けてのおおよその見通しを得ることができた。
著者
神野 由紀 辻 泉 山崎 明子 溝尻 真也 中川 麻子 飯田 豊 塩谷 昌之 塩見 翔 松井 広志 佐藤 彰宣 今田 絵里香
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

大量生産の既製品が安易に購入できるようになった20世紀半ば、自己表現としての手作りが大衆化していく。本研究では雑誌調査などから、女性の手芸に対して男性は工作と呼ばれる手作り趣味が興隆した背景を明らかにした。男女の手作りは近代的なジェンダーの枠組みの中で、それぞれの領域を発展させていった。両者の関係は女性解放運動の影響、あるいは男性の家庭生活への接近などにより揺れ動きつつも、それを完全に越境することが困難な時代が続いた。しかし今日、こうしたジェンダーの枠組みを超えるような新たな手作りの文化も生まれてきていることも明らかになった。
著者
中村 桃子 佐藤 響子 マリイ クレア 熊谷 滋子
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

第一に、スパムメール、親密な関係を扱った小説、日常会話を分析し、「女ことば」や「男ことば」が、異性愛規範に沿ったセクシュアル・アイデンティティ構築に利用されていることを明らかにした。第二に、マスコミの多様なセクシュアル・アイデンティティ遂行とことばの実践を考察し、その歴史的な変動を明らかにした。第三に『ことばとセクシュアリティ』(邦訳)を出版した。第四に、多くの国際学会でこれらの研究成果を発表した。
著者
尾之上 さくら 毛利 一平 吉川 徹
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

港湾労働者96名を対象に健康調査を実施した結果、交代勤務、早朝・夜間勤務などの労働条件が身体的健康に影響する可能性が示唆された。精神的健康への影響については、職業性ストレス簡易調査から全体の27%の人にストレス反応がみられ、作業員では仕事による身体的負担が高いことが明らかとなった。面接調査では、港湾全体に労働安全に対する意識が定着し、安全に関する企業努力が物損事故、人身事故の減少に繋がっていた。一方、メンタルヘルス対策については、これからの課題であることがわかった。
著者
北原 武嗣 杉浦 邦征 山口 隆司 田中 賢太郎
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

海溝型巨大地震のような長周期・長継続時間地震波を受ける鋼製橋梁の耐震性能の把握が重要である。そこで,都市高速に多用されている鋼製橋脚を対象とし,ハイブリッド実験,静的繰返し載荷実験およびFE非線形解析により,最大耐力履歴後の数十回に及ぶ繰返し変位による耐力低下を検討した。その結果,最大荷重履歴後,初等はり理論で弾性範囲と考えられる数十回に及ぶ変位載荷により,耐力は10%程度低下する可能性のあることが分かった。また繰返し振幅範囲が大きいほど,繰り返し数が多いほど耐力低下の割合が大きいことがわかった。
著者
齋藤 仁
出版者
関東学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究では、2001~2011年に降雨に起因して発生した4,744件の斜面崩壊を対象とし、斜面崩壊の規模-頻度と雨量との関係、および台風の影響を解析した。その結果、累積雨量~250 mm、最大時間雨量~35 mm/h、平均雨量強度~4 mm/h を超えると、規模の大きな斜面崩壊の頻度が高くなり、台風の寄与率は最大で約40%であった。また、現在の気候下において斜面崩壊の頻度とそれによる総侵食量を最大にする降雨イベントが存在し、それらの再現期間は約40年以下であることが示唆された(Saito et al., 2014, Geology)。
著者
細谷 実 海妻 径子 千田 有紀 高橋 幸 Lee Rosa
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

韓国では社会的地位を得た女性と草の根フェミニズムとの連携がうまくいかず、女性登用が保守主義・新自由主義への対抗となっていない。新自由主義の進展は、性役割やミソジニーを強化する一方、女性就業者を増加させ、就業機会をめぐる軍事主義と女性との新たな結びつき(ROTCなど)を生み出していた。軍事主義的保守団体の女性運動家へのインタビューにおいては、民族主義以上に反共主義が強調されていて、興味深い。他方英国では、プア・ホワイトとも結びつくと言われる排外主義勢力と、エスタブリッシュ層を基盤とする新保守主義勢力とは、必ずしも一致していないが、労働党勢力と多元主義的価値観支持層との結びつきは強固である。
著者
中村 友紀
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究課題は、近代初期イングランド復讐劇による民衆心性への影響を明らかにすることを目指すものである。成果としては以下2点がある。1.数多く制作されジャンルを形成した復讐劇作品群が共有していた常套的様式の表象としての作用とは、ルネサンス的という文化的ムーブメントに位置付けて検証すると、個人主義的な自己のアイデアを表現するものと考えられる。復讐劇は、個人の概念を人々に明示する点で、近代的概念の媒体といえる。2.イングランド社会に見られた、演劇以外の他の芸術や娯楽、媒体における表象と復讐劇の関連性を見出し、それらの表象が、特に美学的・倫理的側面で、人々の近代的心性の形成に影響力を持ったと結論づけた。
著者
折田 明子 湯淺 墾道
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、昨年度実施した文献調査を継続したことに加え、現行の法制度および2018年5月より発効するGDPR、また個々のサービスのポリシーについて調査を行った。その結果、まず死者の権利に関する原則は、英米法系と大陸法系とで異なっていることがわかった。前者では死者の権利については一般に否定的であるが、大陸法系においては死後も一定の範囲で権利性を認める傾向にあった。また、GDPRでは、各加盟国が独自に死者の個人情報の取扱について規制することを妨げないこととなっていた。米国ではアカウントやデータを「デジタル資産」として一体的に法的に保護しようとする動きが比較的早くからあり、パブリシティの権利等の枠組みを活用して当該本人の死亡後も法的に保護しようとする動きもある。どのような制度設計が現実に即し、かつ多様な死生観を包含するものとなるのか、今後検討を進める、次に、個々のサービスを調査したところ、利用者の死亡時のアカウントの扱いを規定しているサービスの多くは、利用者死亡時に故人本人あるいは親族の身分証明を必要とする規定を定めている。そのため、仮名での利用や法律上の氏名・性別を非開示とする利用においては当人の確認ができなくなる。結婚その他のライフイベントで改姓し、法律上の名前と日常生活の名前が違う場合、例えばFacebookでは両者の併記を求めているが、実際の利用者は一方の名前のみを記載している。本人確認につながる個人情報や、見せたくない面を見せないといったプライバシーを保護した上での利用と当人確認を両立させる設計の必要性が見えてきた。
著者
林 博史 小野沢 あかね 吉見 義明 兼子 歩
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本軍「慰安婦」制度と米軍の性売買政策・性暴力の比較研究をおこなうことを目的として本研究をおこなった。米国や英国などの公文書館や図書館などにおいて、関連史料を多数収集することができた。また各国の研究者との研究交流をおこない、研究協力のネットワークも作ることができた。こうした研究活動を通じて、日本軍のケースと米軍のケースについてその相違についてかなり把握できるようになってきた。同時に、日本軍「慰安婦」制度を世界史のなかで位置づけるためには日米比較だけでは不十分であり、欧州や韓国を含めて国際比較が必要であることも強く認識するようになった。