著者
小倉 智史 海老原 志穂 杉山 雅樹 宮坂 清 星 泉 熊谷 瑞恵
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究課題は、インド・パキスタンに広がるヒマラヤ山脈西部に居住する、チベット系言語を母語とするムスリムの言語・社会・宗教状況を総合的かつ包括的に解明することを目的とする。具体的には、言語学・イスラーム学・人類学分野の研究者による文献調査、および現地でのフィールド調査を共同で行い、ともすればチベット人と言えば仏教、というようなステレオタイプな理解を乗り越えて、新たなチベット学の地平を切り開く。
著者
熊谷 瑞恵
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-24, 2004-06-30 (Released:2017-09-28)

本研究は、中国新疆ウイグル族のナンの利用を中心とした食事文化を明らかにすることにより、ムギ食品が食卓上で持つ「主食」「副食」に代わる独自の位置付けを描き出すことを目的とする。ユーラシア大陸はムギとコメという主要な穀物の違いによって二分することができる。ヨーロッパのパンを主とするムギ食文化には、パンを「主食」という概念で呼ばず、料理を「主食」と「副食」という概念に区分しない特徴がいわれてきた。本研究は、パンに注目してなされてきたそれまでのムギ食文化に対する見解に、中央アジア、新疆ウイグル族にとってのナンという新しい事例と見解を加える。そのために本稿はまず「主食」「副食」に代わるかれらの料理区分を明らかにし、それが「食事」と「茶」であること、その中で「ナン」を食すことがかれらにとっての「食事をとる」という概念と対応していないこと、そして、1日に7、8回あるかれらの食事回数のうちでかれらの語彙における「食事」に対応する食事がほとんどないことを家庭における直接観察から描き出す。そして、ウイグル族にとってのナンの位置付けが「食事」よりも「茶」の中核をなすものであることを示し、ナンと料理との関係が構築する食事体系が「主食」「副食」のある文化とは異なるものであることを描き出す。そしてその食事体系は、家庭の食卓を囲む人々との間において常に「場の共有を目的として」食べるという機能を果たすものとなっていることを論じる。
著者
熊谷 瑞恵
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-24, 2004-06-30

本研究は、中国新疆ウイグル族のナンの利用を中心とした食事文化を明らかにすることにより、ムギ食品が食卓上で持つ「主食」「副食」に代わる独自の位置付けを描き出すことを目的とする。ユーラシア大陸はムギとコメという主要な穀物の違いによって二分することができる。ヨーロッパのパンを主とするムギ食文化には、パンを「主食」という概念で呼ばず、料理を「主食」と「副食」という概念に区分しない特徴がいわれてきた。本研究は、パンに注目してなされてきたそれまでのムギ食文化に対する見解に、中央アジア、新疆ウイグル族にとってのナンという新しい事例と見解を加える。そのために本稿はまず「主食」「副食」に代わるかれらの料理区分を明らかにし、それが「食事」と「茶」であること、その中で「ナン」を食すことがかれらにとっての「食事をとる」という概念と対応していないこと、そして、1日に7、8回あるかれらの食事回数のうちでかれらの語彙における「食事」に対応する食事がほとんどないことを家庭における直接観察から描き出す。そして、ウイグル族にとってのナンの位置付けが「食事」よりも「茶」の中核をなすものであることを示し、ナンと料理との関係が構築する食事体系が「主食」「副食」のある文化とは異なるものであることを描き出す。そしてその食事体系は、家庭の食卓を囲む人々との間において常に「場の共有を目的として」食べるという機能を果たすものとなっていることを論じる。