著者
片野田 耕太 伊藤 秀美 伊藤 ゆり 片山 佳代子 西野 善一 筒井 杏奈 十川 佳代 田中 宏和 大野 ゆう子 中谷 友樹
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.163-170, 2023-03-15 (Released:2023-03-23)
参考文献数
40

諸外国では,がん登録を始めとする公的統計データの地理情報を用いた研究ががん対策および公衆衛生施策に活用されている。日本でも2016年に全国がん登録が開始され,がんの罹患情報のデータ活用が制度的に可能となった。悉皆調査である全国がん登録は,市区町村,町丁字など小地域単位での活用によりその有用性が高まる。一方,小地域単位のデータ活用では個人情報保護とのバランスをとる必要がある。小地域単位の全国がん登録データの利用可否は,国,各都道府県の審議会等で個別に判断されており,利用に制限がかけられることも多い。本稿では,がん登録データの地理情報の研究利用とデータ提供体制について,米国,カナダ,および英国の事例を紹介し,個人情報保護の下でデータが有効に活用されるための方策を検討する。諸外国では,データ提供機関ががん登録データおよび他のデータとのリンケージデータを利用目的に沿って提供する体制が整備され,医療アクセスとアウトカムとの関連が小地域レベルで検討されている。日本では同様の利活用が十分に実施されておらず,利用申請のハードルが高い。全国がん登録の目的である調査研究の推進とがん対策の一層の充実のために,他のデータとのリンケージ,オンサイト利用など,全国がん登録を有効かつ安全に活用できる体制を構築していく必要がある。
著者
王 美華 片山 佳代子 町田 和彦 黒沢 美智子 稲葉 裕
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.166-175, 2008-06
被引用文献数
1

目的:中国都市部高齢者のメタボリックシンドローム(MS)の実態と日常生活歩数との関連を明らかにすることを目的とした.対象:2004年3月の研究開始時点に中国天津市南開区にあるコミュニティ病院に登録された65歳以上の地域住民高齢者9,167人のうち,200名が健診と質問票調査に参加した.2005年2月に同じ健診を実施した.質問票調査と2回の健診を受け,かつ1年間の平均歩数を測定できた90名を解析対象とした.方法:質問票調査と健診を受けた対象者全員(200名)に万歩計を配布し,1週のうち任意の3日間,起床から就寝までの1日の歩数を1年間継続して記入するよう依頼した.この総歩数を記録日数で割った1年間の1日平均歩数を今回の日常生活歩数とした.MSの診断基準は中国のCDS(Chinese Diabetes Society 2004)に従い,構成因子5因子中3因子以上該当する者をMSとした.2004年と2005年の健診で2回ともMSと診断されなかった高齢者40名を非MS群とし,2回あるいは1回MSと診断された50名をMS群とした.解析には統計ソフトSPSS11.0Jを使用した.結果:対象90名は,男性49名,女性41名,平均年齢(±SD)70.2(±4.6歳,年間の1日平均歩数(以下歩数)(±SD)は5509(±3480であった.MS群(歩数4811±2580)と非MS群(歩数6380±4226)の歩数には有意な差が認められた(p=0.043).MS構成因子に全く該当しないグループの歩数は該当数1〜4のグループより有意に多かった(p=0.004).また,肥満群(BMI≧25.0)の歩数は正常群(BMI<25.0)より有意に少なく(p=0.004),拡張期血圧(DBP)≧90mmHg群の歩数はDBP<90mmHg群より有意に少なかった(p=0.045).歩数のカットポイントを各々5000歩,6000歩,7000歩,8000歩として2カテゴリ化し,MS構成因子との関連を見たところ,6000歩以上では肥満と,8000歩では肥満および拡張期高血圧が有意な関連が認められた.性,年齢を調整した多重ロジスティック解析の結果,歩数5000以上で肥満のリスク,歩数8000以上で肥満と拡張期高血圧のリスクが有意に低かった.結論:中国高齢者で日常身体活動量の客観的指標である日常生活歩数はMSと関連があることが示された.特に1日平均歩数5000以上で肥満,8000歩以上で肥満と拡張期高血圧のリスクが低いことが示された.