著者
牛田 貴子 藤巻 尚美 流石 ゆり子
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学看護学部紀要 (ISSN:18806783)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-12, 2007-03-01
被引用文献数
1

本研究の目的は、終の棲家として指定介護老人福祉施設で暮らす後期高齢者が、日常的に表現する「お迎えを待つ」とは何かを探ることである。75才以上の高齢者で研究の同意が得られた13名に、面接を実施した。逐語録から死を示す言葉を中心にしたまとまり部分45カ所を選び出し、意味上の要約と関連により質的に分析した。これにより、「お迎えを待つという日常の心境」「お迎えを待つ心境に至る基盤」「家族に期待する」「自分を大切にする」「人を気遣う」「自尊心の喪失」「生活史の一部に位置づけなおす」7つの中グループを抽出し、施設で最期を迎える意思決定をした後期高齢者の「お迎えを待つ」というストーリーラインを描いた。現状をどのように意味づけて生活していくのかという点が、お迎えの待ち方に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
藤巻 尚美 流石 ゆり子 牛田 貴子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.80-86, 2007-11-01
被引用文献数
1

介護老人福祉施設を"終の住処"としている後期高齢者の現在の生活に対する思いを明らかにすることを目的とし,意思疎通が可能で入所後半年以上経過している14名にインタビューを行った.得られたデータをKJ法で分析し,以下の結果を得た.(1)家族に対し【故郷で家族と一緒に暮らしたい】が【家族のお荷物にはなりたくない】という,自己の欲求と家族への気遣いの相反する思いを抱いており,この思いのギャップを埋めるように【私は私,家族は家族】という思いを抱いていた.(2)施設生活に対し【施設生活ならではの安心感がある】が【受け身でしかない施設の生活は意に沿わない】と,相反する思いを抱いていた.(3)現在の生活に対し【すべてをのみこんで生活している】が【やっぱり寂しい】という思いを抱きながら生活していた.高齢者はすべてを納得しているように見えても,本心を抑えて寂しさとともに生活しており,この思いを念頭に置いたその人らしい現実の意味づけへの関わりの重要性が示唆された.
著者
流石 ゆり子 牛田 貴子 亀山 直子 鶴田 ゆかり
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.70-78, 2006-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究は,高齢者の終末期のケア-の取り組みの現状と課題を明らかにするため,Y県下の介護保険施設90か所に勤務する看護職者全数717名を対象にアンケート調査を行い,395名(老健149名,特養91名,療養型155名,有効回答率55.1%)の回答を得た.主な結果は以下のとおりである.看取りの体験事例数,および受け入れ可能な治療・処置は,療養型が最も多かった.また,看護職は,「傾眠状態が続く」「嚥下・経口摂取困難」および「不安定なバイタルサイン」などにより"終末期が近い"ことを察しており,特に医療職の設置比率の低い特養の看護職の実感している程度が高かった.さらに特養の看護職は,「他職種との連携調整」を強く意識していた.終末期ケアにおいては,「苦痛の緩和」が最も意識されており,今後強化し取り組みたい項目として「死別後の家族ケア」「家族の負担軽減」があげられた.これらは,ともに療養型が最も強く意識していた.看護職は,医療機関でのキャリアを有し高齢者ケアに熱意をもっていた.一方,現施設での経験年数は浅く,准看護師が半数以上を占め,看護職の絶対数が少ないことなどは終末期のケア取り組みに少なからず影響を及ぼしていると考えられる.
著者
牛田 貴子 流石 ゆり子 亀山 直子 鶴田 ゆかり 秋山 小枝子 藤原 三千代 植松 春美 須田 久美 西山 かおる 飯島 文子
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学看護学部紀要 (ISSN:18806783)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.9-15, 2006
被引用文献数
3

県内の介護療養型医療施設、介護老人保健施設、介護老人福祉施設で生括する高齢者の終末期における意思決定について、看護職の視点からその現状を明らかにする目的で、これら施設に勤務する看護職への郵送質問紙調査を実施した。その結果、以下が明らかになった。(1)回答者は全国の介護保険施設に勤務する看護職の属性と同様の傾向であった。(2)高齢者本人への終末期に関する希望確認を実施しているのは16.5%で、施設種類別に大差がなかった。(3)終末期の生活の場所の決定権は、高齢者本人が10.8%であった。(4)8割弱の看護職が意識的に話し合いに参加していたが、介護療養型医療施設では積極的に同席しない傾向にあった。これらから、高齢者の終末期における意思決定と権利擁護の判断や判断を支える科学的、倫理的な根拠に関して、介護保険施設の特殊性を考慮した継続教育が必要となることが示唆された。